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PSO2二次創作小説「時の輪」(21)

この小説は、ファンタシースターオンライン2(PSO2)のストーリーを元にした二次創作小説です。
オリジナル要素も含まれますのでご注意ください。
ゲーム内「マターボード」を進められている方(おおよそ8枚目クリア)でなければ、ネタバレ状態になりうることをご承知下さい。

PSO2二次創作小説「時の輪」

「プロローグ」

(1) (2) (3) (4) (5) (6) (7) (8) (9) (10)

(11) (12) (13) (14) (15) (16) (17) (18) (19) (20)

注意:初めての方はまず上記の小説の前にこちら↓
PSO2二次創作小説「Black Dream」~黒い夢~
をお読みになる事をお勧めします。




↓PSO2二次創作小説「時の輪」(21)



数日後、リュードのもとに一通のメールが届いた。
それが届いたのが、休暇を予定していた日の前夜。
一日の任務を終えた後、ロビーに二人して戻った時に届いたのもあってか。
彼は思わず眉を顰めた。

「…参ったね」
「何故?明日の休暇使って行けばいいんじゃない?」
「折角休日を合わせたっていうのに、お前はいいのかそれで?」

さらりと言うエリに、リュードは苦笑した。
その言葉に逆に彼女が目を丸くし、笑った。

「元々予定なんて組んでなかったじゃない」
「たまにはのんびりしたかったんだよ…とはいえ、放っておく訳にはいかんしなぁ」
「付いて行っていい?私も気になってたもの、早く見たいし」
「構わんが、本当にそれでいいのか?」

届いたメールにはただ一文。

『例の武器が仕上がった、わしは少し手が離せんので取りに来てくれまいか』

とだけ記されていた。
それを受けての、先ほどの会話。
久々の休暇を、二人して取る事が出来たというのに。
邪魔をされたという顔がはっきり浮かんでいるリュードに、エリは笑った。

「フーリエちゃんも明日リリーパに行くって行ってたし、休みを取っても気になってそれどころじゃないってのが本音ね」
「まあ、そうなんだけどな」
「決まり。フーリエちゃんの報告をただ待つより、出かける方がいいもの」
「…OK、そうしよう」

日が変わり。
滅多に袖を通さない私服を身に着けて。
彼らは、シップ間を往復するシャトルへ乗り込んだ。
シップに直接転送されるゲートも無い事はないのだが、料金が法外に高い上に政府要人に対して優先して使われるものである為、一般のアークスには到底使えるものではない。
とはいえ、ゲート移動に慣れている者からすれば不便極まりない移動方法ではある。
普段乗ることのない機体にエリは物珍しそうに窓の外を眺める。

「どのくらいで着くのかな」
「船団の中での俺達の船―ナウシズの配置は前方、テミスは後方寄り…大体三十分ってところか」
「あんまり遠くなくて良かったわね」

前の座席の背面に付けられたモニターを操作して、航路と現在地を記す宇宙図を呼び出すリュード。
数多く表示されているアークスシップの内、二つを繋ぐ線が見て取れた。
平日なのもあるのか、シャトルの席は空席が目立っている。
が、その分貨物が多いのだろう、座席の数に対してのシャトルの大きさは輸送船レベルのもの。
まあ、そうでなければ昨日の今日で簡単に席が取れるはずもない。

「あ、見えてきた。あれよね?」

一つのアークスシップへ、シャトルが近づいていく。
船体には大きく「128」という数字が描かれていた。

スペースポートの片隅へ滑り込んでから、乗降ゲートが開かれるまで数分程待たされた後。
ゲートを潜って、二人は「テミス」へと降り立つ。

「…シップの『色』というか空気というか。やっぱり違うな」
「『マイスターストリート』っていうのがあるんですって」
「ふーん…?」

いつの間にか、エリは手元の端末に「テミス」の「観光案内」をダウンロードしていたらしい。
数多く点在するアークスシップにはそれぞれ「特色」がある。
かつて人類が惑星に生活していた頃の「国」という分類の名残だと言う者もいる。
中にはリュードのような「黒髪で黄色い肌の種族」だけが住むシップもあるという話だ。
テミスはそんな中でも「武器職人」が多く集まる船として有名だという。
大量生産の武器工場が各シップに設置されている中、質の良い武器を流通させている。
ジグの工房はその「職人街」と言われている通りの一角にある。
住所を確認してから、スペースポートから市街地へ向かうエアバスの発着場へ向かおうとして。

「…珍しい所で珍しい人に会えたものですね」

若い男の声に呼び止められた。
周りの雑踏に紛れて他の者達は気にも止めていない中での声に、彼らはふと振り返る。

「…誰だ?」

訝しげに、そう問うリュード。

「ああ、初めましての方に失礼でしたね」
「……?」

不意に、端末に「アークスカード」が届いた。

「アークス…?」

顔を見合わせ、リュードがホログラムモニターを開いてそれを確認すると。

「カ…!!!」

エリは慌てて自分の口を抑えた。
少し長めの金髪と、エリに負けないほど長いその耳。
ニューマンの男は口元に笑みを浮かべているようだが、サイバーグラスのせいで眼の奥の「本心」は見えない。
だが、アークスカードに記されたその名前は。

「…確かに、貴方ほどの有名人が大手を振って歩かれたら町は大混乱だ」
「そういう貴方も、貴方自身が思うよりずっと『有名』になってきているのですがね」
「俺が?」
「ええ。事も無げに難解な任務を次々にこなす『リュード・アレル』という『新人』アークス。それが貴方でしょう?」
「……」
「実力と行動力が全てのこの世界。出来る人間はどうしたって名が広まっていきます」

どうも、ひっかかる言い方をする。
自分ではそんなつもりは無いのだが、己が思う以上に自分の名が知れ渡ってしまっているという事か。
あまり、良い状況ではない。
思わず眉をひそめるリュードに、目の前の男はもう一度笑みを浮かべる。

「ああ、貴方の行動を詮索するつもりはありませんよ。見かけたのでつい声を掛けてしまっただけです」
「光栄だな、それは」

皮肉めいた言い回しをしてみる。
エリはリュードの言葉に、目の前の人物を「信じていない」本心を感じた。
きっとそれは、少なからず男にも伝わっている筈。
その様子に、男は肩をすくめる。

「そう警戒しないで下さい。むしろ貴方がたに『忠告』したいのです」
「流石に、貴方ほどの人なら『俺の事』を知っている、そういう事か」
「立場上、知らざるをえないのですよ。申し訳ありませんが」

口元の笑みが不意に消えた。

「気をつけて下さい。『出る杭は打たれる』ものです。貴方が褒め称えられるその裏で、貴方を貶めようとする輩が居るのをお忘れなきように」
「…貴方がそうでないと、何故言える?」
「それだけ貴方に期待しているんですよ。頑張っていただきたくてね」
「……」

そうして、再び当り障りのない笑みを浮かべる。
リュードは今一度、サイバーグラスの奥の目を刺すように見つめた。
問いただしたい。
この人物から聞き出したい事が山のようにある。
口を開こうとしたその瞬間。

けたたましく、警報が鳴り響いた。

「?!」
「…これは…ダーカー接近警報じゃないの?!!!」

オラクル全体に発令される、第一級の警報。
都市全体が「赤い警告灯」に包まれる。
その場に居た者達全ての動きが止まった。

『オラクル全域に緊急警報発令。アークス船団後方部宙域に、多数のダーカーの反応が接近しつつあります。市民は速やかに避難の準備を。アークス各員は出撃準備に入って下さい』

けたたましく繰り返される緊急アナウンスに、リュードは思わず舌打ちした。
よりによってこんな時に。

「これは、非番だと呆けていられないですね」

そう言って、男はくるりと背を向けてスペースポートへ戻り始めた。
リュードはふとその背を見て、エリに視線を送った。
彼女は黙って、頷く。
それに頷き返してからもう一度、男へと向き直るリュードが居た。

「頼みがある」
「私達の装備を、ここへ送っていただく事は出来ませんか?貴方なら出来るはずです」

エリの言葉に、男の歩みが止まった。
振り返り、こちらの意図を探るように見据えて来る。

「…いいのですか?貴方がたも休みのはずでしょう?」
「この状況を素知らぬ振りが出来る程、強心臓でもないんでね」

振り返ったその顔から、サイバーグラスを外した男。
その「立場」上、様々なものを「見続けてきた」者の目。
その視線に偽りは無い。
リュードはそう感じた。

「頼む。俺達の装備一式をここへ」

そう言って、頭を下げるリュードに。
男はふと、降参したように笑みを零した。

「…分かりました。貴方がたの倉庫へ直接アクセス出来るように、こちらで手配しましょう」
「お願いします」
「こちらへ」

スペースポート内、一般市民はおろか普通のアークスでは入れない「VIP区画」。
その一角に、彼らは通された。
それぞれの端末から引き出された「装備」を身に着けて部屋から出てきたその姿に。

「まるで燃えるようなフォトンをお持ちだ」
「俺には戦うことしか出来ないのでね」
「私達は市街地へ向かわせていただきます。貴方はどうするのですか?…カスラさん」

六芒均衡の三であるカスラ。
アークスの戦闘服は、生粋のフォースの証。
カスラは装備を確かめながら、屈託のない笑みを浮かべてエリを見る。

「私には私のやるべき事がありますので」
「…そうか」

言った直後、ズドンと地響きが伝わった。
ダーカーの直接攻撃だろうか。
振り仰ぎ、カスラは頷いた。

「またいずれお会いしましょう、リュードさん、エリアルドさん」
「はい」
「ああ」

言うや否や足早に、カスラは姿を消した。
避難民がスペースポートに集まり始めた中、リュードとエリはお互いを見。
もう一度、市街地へと視線を投げる。

「行きましょう」
「了解した」




『緊急指令が発布されました!アークスシップ第128番艦「テミス」内市街区画にダーカーの侵入を確認、アークス各員は逐次出撃、ダーカーの掃討、市民の救出、脱出の援護をお願いします!』

ヘッドセットに流れ込むオペレータからの報告は次第に切迫したものになりつつあった。

「…偶然じゃないな」
「そうね」

市街地を駆け抜け、ダーカーを倒しながら。
彼らは目的地へと向かう。

そもそもなぜ「今」なのか。
なぜ「このシップ」なのか。
答えはひとつ。

あの「武器」が、直されたから。

仮面を初め、ダーカー達が探していたのが「あの武器」ならば。
問答無用でそれを奪いに来てもおかしくはない。
あくまでも、憶測でしかないのが歯がゆかった。

「…でも、あれが直されたってどうやって知ったのかしら」
「分からん…だが、あの武器を狙って来たなら尚更時間がない」
「急ぎましょう」

直後だった。
少し離れた場所に停車していた大型の車が爆発したのは。

「きゃ……!!!」

咄嗟に身を伏せ、二人は何とか爆風から身を守った。
付近のビルの一階部分のガラスが爆風で粉々になっている。
それが収まった直後、その周りに群がっていたダーカーの破片が落ちて来た。
だが、起き上がって爆発現場へ注意深く歩み寄った時に、エリはそれに気付く。

「…人が倒れてる!」
「何!?」

アスファルトに倒れ伏す人影。
エリは考えるより先に駈け出した。
武器を収めるのもそぞろに、駆け寄って抱き起こしたエリの顔が驚きに満たされる。

「あなたは…!」

少女。
いつも、あの凶悪な男の後ろに控えていたフォニュエール。
メルフォンシーナは、エリの声にようやく目を開いた。

「あ…?」
「良かった、気がついたのね」

エリが安堵の声を上げると。
片膝を付いて、メルフォンシーナの容態を見るリュード。
幸い、外傷は見当たらない。

「あなた達は…リュード様…エリアルド様…?」
「大丈夫か?」
「…大丈夫です」

ゆっくりと体を起こし、エリから離れるようにして立ち上がる。
だが、足下はおぼつかない。

「無理しちゃ駄目よ、爆発に巻き込まれたんだから」
「爆発…?」
「ダーカーに集られてた車が派手に吹っ飛んでな、多分それに巻き込まれたんだろう。無理はするな」

ようやく、はっきりしてきたのだろう。
数回頭を振って、メルフォンシーナは頷いた。

「いいえ、大丈夫です。私もアークスですから、この緊急時にかすり傷程度で撤退などしていられません」

気丈に答える少女に、ふとリュードは辺りを見回した。

「奴はどうした?ゲッテムハルトは?いつも一緒に居ただろう?」
「……いません。私一人での行動です。おかしいですか?」
「いや…」

珍しい事もあるものだ。

「でも…あの…」
「?」
「リュード様達がよろしければ…ご同行させて頂けませんか?」

常に、ゲッテムハルトに付き従い、あの行動に振り回されているように見えた彼女。
しかし、その表情は。

「ずっととは言いません、途中まで、途中まででいいので…」

エリはその時、この少女とあの凶暴な男の関係を垣間見た気がした。
きっと、常にゲッテムハルトという「盾」が居る事に慣れていたせいもあるのだろう。
今それがいない事で、不安を隠しきれていないのだ。
知ってか知らずか、リュードは小さく溜息を付いた後、頷いた。

「いいだろう。ただし、自分の身は自分で守れ。いいな?」
「はい。よろしくお願いします…」

深々と頭を下げてから面を上げるメルフォンシーナに、あからさまな安堵の表情が浮かんだ。
エリは複雑な笑みを浮かべて、少女を見る。

三人はダーカーを倒しつつ、ビルに取り残されていた市民を助けるための専用テレパイプを設置するという作業を繰り返し、市街地を進んだ。
補助テクニックを得意とするテクターをメインに据えているメルフォンシーナは、事あるごとに補佐に徹した。
その御蔭で、大きな怪我をする事もなく彼らは進む事が出来ている。

しかし。
区画を隔てた隔壁を見つけ、その向こう側をモニターで確認した時に彼らは息を呑んだ。

「こいつは…酷い」
「凄い数だわ」
「およそ見たことがない数が集まっているようですね」
「でも、ここの他に道はない。まだ取り残されてる人も居るはずだ」

市街地の道路を埋め尽くさんばかりの大小ダーカーの数が映し出されていた。
隔壁の傍らで装備を整えながら、ふとメルフォンシーナが呟いた。

「どこからこれ程の数が集まってくるのでしょうか…?」
「正直なところ、分からないわね…」
「倒しても倒しても湧き上がるダーカーに対して、オラクルの、アークスの人的被害は今回も甚大になる筈…」
「復元も大変だろうな。だから新人すら容赦なく駆り出される事になる」
「…私は、時々分からなくなります」

メルフォンシーナはふと手を止め、俯いた。

「ダーカーを追い詰めているのか、追い詰められているのか…」

そんな不安は、誰もが抱いている事。
戦う術を持つアークスがそうなのだから、一般の市民なら尚更。
リュードは今一度、タルナーダを構えた。

「どちらにせよ、根を断たねば負けてしまう。そうだろう?」
「…そう、ですね…私もそう思います」
「私達が戦わなきゃ他の誰も救えない。そうよね?」
「ええ」
「…行くぞ。覚悟はいいか?」

二人の頷きを待ってから。
リュードは隔壁を開くスイッチを迷わず押した。

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