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PSO2二次創作小説「時の輪」(22)

この小説は、ファンタシースターオンライン2(PSO2)のストーリーを元にした二次創作小説です。
オリジナル要素も含まれますのでご注意ください。
ゲーム内「マターボード」を進められている方(おおよそ8枚目クリア)でなければ、ネタバレ状態になりうることをご承知下さい。

PSO2二次創作小説「時の輪」

「プロローグ」

(1) (2) (3) (4) (5) (6) (7) (8) (9) (10)

(11) (12) (13) (14) (15) (16) (17) (18) (19) (20)

(21)


注意:初めての方はまず上記の小説の前にこちら↓
PSO2二次創作小説「Black Dream」~黒い夢~
をお読みになる事をお勧めします。




↓PSO2二次創作小説「時の輪」(22)



『わぁっ!わあああああああっ!!!だ、誰か!』

ダーカーを蹴散らし、粉砕し続けている彼らの端末に、悲鳴という通信が届いた。
声の質からして、まだ十代半ばの少年の声。

「まだ、逃げ遅れた人が居るんでしょうか…?」
「でもこれ、アークスの専用回線よ?」
「救助に来たアークスが孤立しているのかも知れん、急ごう」

目の前のヤドカリのようなダーカーの群れを一刀両断し、リュードは頷いた。
その後も烏合の如く襲い掛かってくる黒い集団。
三人は尽く退けつつ、発信元の区画へと走る。
十字路の角を曲がって、閉鎖されている隔壁の前にいたもの。

「…グワナーダ!」

エリが目を見開いた。
一際大きな、蟻地獄のようなダーカーがアスファルトを破壊して鎮座していた。
それが凝視しているのは、ビルの前にいる少年アークスと彼が守ろうとしていた子供が二人。
子供の親の姿は無かった。はぐれたのか、それとも。
大きく付き出た顎をガチガチと鳴らし、じりじりと彼らに近づいている。
アークスの少年は震えながら、子供達をしっかりと抱きしめていた。

「…いけない!!!」

メルフォンシーナが咄嗟に「ザン」を放った。
全てを切り裂くかまいたちのようなその攻撃は、グワナーダの敵意を彼女に向けるのに充分な威力を持っていた。
ぐるり、と顔をもたげるようにこちらを向き、轟音と共に地中に潜る。

「…気をつけて!どこから出てくるか…!」

エリの叫びと共に、メルフォンシーナの身体の自由が奪われた。
数本の地中から付き出した昆虫のように刺の突き立つ黒い触手が、羽交い締めにするように捉えたのだ。
もがいて振りほどこうとする程、闇のフォトンが彼女のフォトンを奪う。

「あっ…ぐ…!」

直後、触手が根元から切り捨てられた。
リュードが、その場の触手を一閃したのだ。
弾き飛ばされるようにメルフォンシーナは地面に転がる。
咄嗟に顔を上げると、リュードが自分に背を向けたままタルナーダを構えている。

「も、申し訳ありません」
「油断するんじゃない、まだ奴は土の中だ」

足下から聞こえてくる、不気味な音。
メルフォンシーナは慌てて立ち上がり、もう一度ウォンドを構える。
直後。
リュードの足下のアスファルトが一瞬、盛り上がった。

「!!!」
『キシャァアアアアアアアアアアアアアア!!!!』

飛び退いたリュードを追うように、再びグワナーダが奇声を上げて姿を表した。

「そうだ、そうやって俺を見ておけよ?」

その顔は、狂気と紙一重の好戦的な笑み。
自分の足を止めようとするグワナーダの触手を、その大きな鉄塊のような大剣で舞うように斬りつける。
大きな顎を振り回すその巨大なダーカーは、既にリュードだけをターゲットにしているようだった。
今のうちに。
エリは悲鳴の主の元へと走る。

「大丈夫!?」
「た、た、助かりました、あ、あの」

出で立ちはフォースのようだが。
子供達と一緒になって恐怖に震える少年の声は、まるでアークスとは思えない。
エリは目尻を上げ、毅然と言葉を作った。

「しっかりしなさい、あなたがこの子達をちゃんと別のシップまで送り届けなきゃいけないのよ?」
「ぼ、僕が?」
「他に誰が居るの、この子達だけをテレパイプに放り込んで後は知らんぷり?」
「で、でも、あなた達を置いて行くわけには…」

問答無用とばかりに、エリは手持ちの「緊急用テレパイプ」を設置した。

「この子たちには今、あなたが必要なの。私達は大丈夫だから」
「…わかりました」

ようやく落ち着いたのか、自分に縋って見上げてくる子供達を今一度見て。
少年は大きく頷いた。

「ありがとうございます。本当に助かりました。あの、お名前を」

おずおずと、エリへ視線を戻す。
エリは笑みを浮かべて、頷いた。

「私はエリアルド。今あそこで戦ってるのはリュードとメルフォンシーナちゃんよ」
「エリアルド…さん?あれ?」

テレパイプへ向かいながら、少年は首を傾げた。
その様子に、エリも釣られるようにつぶやいた。

「え?私の事、知ってるの?」
「ウルクの先輩の?」

あ、とエリは小さく声を上げた。
ひょっとして、ウルクの言っていた「友達」とは。

「…テオドール君?」
「あ、はい。そうです。ウルクから聞いてました。そうですか、貴女がエリアルドさん…」

エリに、尊敬の眼差しを向ける。
それが彼女には非常にむず痒かった。
テレパイプを操作しながら、テオドールは深々と頭を下げる。

「ウルクに言っておきますね。いずれ、お礼にうかがいます」

その言葉を残し、彼らは安全なシップへと避難して行った。
思いがけない出会いに、エリは思わず苦笑する。




あちらこちらに突き出る「触手」を、メルフォンシーナのザンが薙ぎ払った直後。
劈くような奇声を上げて、グワナーダがひっくり返った。
赤い腹を見せて痙攣するその巨大なダーカーに、リュードは深く腰を落として溜めの姿勢を作った。
鉄塊の筈のタルナーダが、彼のフォトンに呼応して淡く輝く。

「これで終わりだ…!!!!!」

地を蹴った瞬間。
リュードはまるで突風のようにグワナーダへと肩から体当たりを敢行。
直後に、その勢いを殺すこと無く横薙ぎの一閃で腹を切り裂く。

『ギイィイイイイィィィ……』

助けを乞うようにぶるぶるとその節足を空に伸ばすが。
その巨体は闇のフォトンと共にバラバラと崩れ、消失していった。

「…ふう」
「お疲れ様です」

タルナーダを収めたリュードは、歩み寄ってくるメルフォンシーナへと向き直ってふと笑う。

「フォロー助かった、ありがとう」
「え…いえ…あの…当然の事をしたまで…です」

その礼の言葉が、何故か彼女を驚かせた。
しどろもどろになって、俯く。
きっと、ゲッテムハルトには礼を言われる事など無いのだろう。
容易に想像出来るその光景に、リュードは思わず眉を顰める。
遅れて、エリが駆け寄ってきた。

「こっちも大丈夫、無事に救助完了よ」
「よし、先に進も…」

その瞬間、猛烈な轟音と地響き、そして激しい揺れが彼らを襲った。

「な…?!」
『あの!あの!D-3区画付近に居るアークスさん!居ませんか!』

同時に、雑音と共に彼らの端末へオペレーターからの通信が飛び込んでくる。
普段とは違う声に一瞬躊躇しながらも、リュードは回線を開いた。

「…こちら、アークスID10005277:リュード・アレル、およびその同行者2名。現在D-4区画だ」
『あ、えーと!リュードさん、ですね!はい!えーと!』
「交戦中に妙な音と揺れを感じた、何が起きてる?」
『はい、あのあの、あのですね、その先のD-3区画に、何か変な反応があるんですよ!』

指示を出す立場の者らしからぬ抽象的な言葉。
新人だろうか?
オペレータすら人が足りないと見える。
リュードは眉間にしわを寄せて答えた。

「…何か変な、じゃわからん」
『だってですね!本当に変なんですよ!こんな大きな反応見た事……あわ、わわわっ!!!』

通信の向こうで甲高い声で慌てふためく女性に、リュードは思わず怒鳴りつける。

「落ち着け、それでもオペレータか!!!」
『す、すみません!!!』

それでも、落ち着かない気配。
そんな場合では無いだろうに。
ふと、通信の向こう側で何かガタガタと音がする。

『…リュードの言うとおりだ、落ち着けメリッタ』
『すみません…』
『ごたついて申し訳ない、私が変わろう』

その声は、いつものヒルダのものだった。
少し安心したように、リュードが頷く。

「それで?大きな反応とは?」
『恐らく、ダーク・ラグネが転移してきている』

ざわ、とエリの首筋が逆立った。
ラグネ。
忌まわしき「記憶」。
リュードはそれに気付いてはいたが、あえて冷静に答えた。

「それなら、変では無いだろう?」
『そうだ、普通のラグネならばな』
「普通…ではないと?」
『恐らくは、ダーカーの中に稀に存在する強化型、希少種と呼ばれる存在だ』

稀に、その闇の体が赤く変色しているダーカーには幾度か遭遇して来た。
だが「ラグネ」にその「希少種」が存在している?
リュードが考えようとした直後、通信の向こう側でメリッタが悲鳴を上げた。

『ああっ!!あああっ!!!大変ですヒルダさん!!!』
『…だから落ち着けと…』
『誰かが、一人でそのラグネの希少種とかいうのと戦い始めちゃってます!!!』
『なんだと?!』

その言葉に隔壁を見やると、壁の向こう側から斬撃の音がする。
確かに、誰かがラグネと戦っているようだ。
三人は頷きあった。

「隔壁を開けてくれ、加勢する」
『…気をつけろ、通常のラグネより遥かに凶暴だ』
「了解した」

隔壁が地響きを立てて開いていく。
覚悟を決め、全員が武器を構え。

「…!!!」

しかし。
その眼前の光景に呆然となった。

重い音が辺りに響き渡り、そして静まり返った。
ラグネの背中に突き立てた巨大な大剣を収め、「白い者」がふわりと飛び降りてくる。
凶大な、血の色のようなその身体が音もなく崩れ始めた。

「なかなか、手応えのある相手だったな」

そして、唖然と己を見ている三人にようやく気付く。
何事もなかったかのように、彼らの方へと歩み寄って来た。

「おや、加勢か。助かった。こやつを倒してもこの先どう切り抜けようかと考えあぐねていた所だったのでな」

往年の傷が刻まれた白いボディ。
その背にある巨大な大剣。
落ち着いた佇まいと、その声。
リュードは知らず、呟いていた。

「…白い躯体…背の『ヨノハテ』…六芒均衡の一…レギアス?」
「いかにも。私を知っているなら話は早いな」
「アークスならば、貴方を知らぬ者は居ない…」

四十年前、十年前の大戦を尽く生き延びた生ける伝説。
しかし、今まで出会った事は無かった。
一度は会いたいと、思っていた相手でもあった。
何より、たった今見せつけられたその「力」に。
尊敬と畏怖の入り混じった眼差しで、リュードは目の前のキャストを見る。

「ナベリウスに行っていると聞いていたのですが…?」

リュードより先に、メルフォンシーナが問いかける。
苦笑して、レギアスは歩み寄って来た。

「良く知っているな、だが私もアークスだよ。本拠の危機とあれば馳せ参じるのは当然であろう?」
「それは…そうですが」
「とはいえ、君たちのような優秀なアークスのお陰で戦況は好転。すっかり出遅れてしまったが…まだまだ、助けを求める者が居る」

そう、まだ戦闘は終わっていない。
レギアスがラグネを倒したとはいえ、まだダーカーの出現が収まっている訳ではない。
リュード達の顔が引き締まったのを確認して、レギアスが頷いた。

「良い顔だ。では手分けして、市民の救助と避難誘導をしよう。一人、私と一緒に来てはくれまいか」
「何故です?」

エリが首を傾げると、レギアスは再び苦笑して言葉を続けた。

「私の古い友人の刀匠が頑固でな…自分の工房から離れないと駄々をこねて手を焼いているのだよ」

刀匠?
まさか、ジグの事だろうか?
リュードとエリの目的の一つに、ジグに会って「例の武器」を受け取る事があった。
ならば、自分たちが行くほうが早い。
リュードがそう言おうとして、目の前に一歩出た者がいる。

「それでしたら、私が。丁度、二人ずつになりますし」

メルフォンシーナが、二人を遮るようにレギアスに歩み寄った。
そして振り返り、リュードを見る。

「リュード様、エリアルド様はお二人で救出活動をお続け下さい」

今までの控えめなメルフォンシーナの態度とはまるで違う。
レギアスは気圧されるように、笑った。

「…昨今の女性は決断が早いな」
「急ぎましょう、手分けをすればそれだけ救う命が増えます。お早く」
「やれやれ、女性に先導されるとは…私もいよいよ年を実感するね。…では、失礼するよ」

追い立てられるように、レギアスとメルフォンシーナは別の方角へと駆けて行く。

「……」

焦っているようにも見えたのは気のせいだろうか?
リュードは、走り去るメルフォンシーナの背に妙な胸騒ぎを感じた。

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