PSO2二次創作小説「時の輪」(23)

この小説は、ファンタシースターオンライン2(PSO2)のストーリーを元にした二次創作小説です。
オリジナル要素も含まれますのでご注意ください。
ゲーム内「マターボード」を進められている方(おおよそ9枚目クリア)でなければ、ネタバレ状態になりうることをご承知下さい。

PSO2二次創作小説「時の輪」

「プロローグ」

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(11) (12) (13) (14) (15) (16) (17) (18) (19) (20)

(21) (22)


注意:初めての方はまず上記の小説の前にこちら↓
PSO2二次創作小説「Black Dream」~黒い夢~
をお読みになる事をお勧めします。




↓PSO2二次創作小説「時の輪」(23)



程なくして、テミスへ侵入したダーカーが一掃されたとの報が伝えられた。
二人は取って返すように自分たちのアークスシップ『ナウシズ』へと帰還する。
戦闘が終わった直後にリュードの元に届いた一通のメールが、彼らの足を急がせた。
スペースポートからシティを横目に、ショップエリアへと走る。
ジグがレギアス達に救助されて、こちらの小さな工房に戻ってきているという連絡を受けたからだ。
雑踏を抜けると、居住区の入り口に彼は立っていた。
思わず、安堵の笑みが溢れる。

「無事で何よりでした」

リュードのその言葉にもかかわらず、目の前の黒いキャストは項垂れる。

「老いぼれのわしを気遣ってくれるのはありがたいが…」
「盗まれた…って、本当なんですか?」

エリが怪訝そうにそう問うと。

「申し訳ない…この騒ぎに乗じて『あれ』を、あれだけを持ち去った者が居るんじゃよ」

あれ、とは「破損した武器」。
リュードにのみ聞こえる「音」で彼を呼び、バラバラになっていたそのパーツを集めさせ。
目の前の「刀匠」によって修繕された、杖のようなもの。
リュードは怪訝そうに、ジグへと向き直る。

「どうしてそんな事に…」
「実は、あれはまだ『なおっていなかった』んじゃよ」

え、とリュードは思わず声を上げた。
メールには確か「修繕が終わったから取りに来い」とあったはず。

「あの時はそう思っておったんじゃが…どうやっても『可動』せんのだ」
「動かない?」
「わしのなけなしのフォトンにもぴくりとも反応せなんだ。形こそ整ってはいるが、あれはまだそのままでは使用出来んのだよ。それをどうにかしたくて…」
「それで、襲撃されても工房に残っていたと」
「お主達がテミスに来ている事はわかっておったんでな…それがこんな事になって…申し訳ない」

再び、深々と頭を下げるジグ。
リュードは小さく首を振った。
エリが笑みを浮かべて、一歩前に出る。

「起きてしまった事は仕方ありません。問題は、誰が、何の為にそれを『盗んだ』か、ですよね?」
「そうなんじゃ。何故あの少女はあれを持ち去ったのか…」
「少女?」
「レギアスと共に、わしを救助に来たというアークスの少女じゃよ」
「…えっ…?!」

リュードとエリは同時に声を上げ、顔を見合わせた。
それは「メルフォンシーナ」に他ならなかった。
あの時に感じた胸騒ぎ。
それまで控えめだった彼女が、突然自ら「レギアスと行動を共にする」と言い出した違和感。

「他のものには目もくれず『あれ』を迷わず掴んで…あの混乱に乗じて、姿を消したのじゃ。レギアスも探すとは言っておったが…」

まさか、これが目的だったのか?
何の為に?
いや、そもそも何故あの「武器」の事を知っていたのか。
疑問符が頭を埋め尽くす。
聞いてみるしか無いな。
リュードは頭を振り、ジグに向き直った。

「…心当たりはあります」
「そうなのか?」
「何とか、探してみます。貴方はとにかく、休んで下さい」
「ああ、ありがとう。本当に、すまなかったな」

申し訳なさそうに何度も頭を下げるジグに手を振り。
二人はそのまま、居住区へと足を踏み入れる。

「…あいつなら、知ってるはずだ」
「ゲッテムハルト?」
「ああ。住んでいる部屋が変わっていなければ、この先の…」

いつも、メルフォンシーナを従え、顎で使っていた男。
ひょっとすると、破損武器を奪わせたのは。
居住区にいくつか据え付けられている小さなロビーを足早に抜けようとした時。

「おんやぁ?まーだお前らつるんでやがったのか。へーぇ」

探していた男の声が背後から飛ぶ。
ゲッテムハルトは変わらず、人を見下すような笑みを浮かべてソファにどっかりと座っていた。
以前「L計画」の情報をエリに伝え、その心を乱した男。
エリは思わずつかつかと歩み寄って、ゲッテムハルトの前に仁王立ちする。

「あの時はありがとう。お陰様で真実を知る事が出来たわ」
「…ほぉ?それでもまだソイツと一緒って事は、大したタマだなねーちゃんよ」
「貴方の思い通りにならなくて残念だったわね」
「強い女は好きだぜェ?クッククク」

…尤も、どん底まで落ち込んだ自分を救ってくれたのは他でもないリュード自身だけれど。
そんな思いを飲み込んで、エリは一歩身を引いた。
入れ替わりに、リュードがゲッテムハルトの前に立つ。
視線をあたりに飛ばしてから、鋭く見据えて。

「…あの子はどうした。いつも一緒だったろう?」
「あぁ?シーナかぁ?何だテメェ、シーナに気でもありやがるのか?」
「誤魔化すな。どこだと聞いている」
「生憎だが、あれは俺のモンだ。渡さねェ。あんな便利なのはそう居ねぇしな?どこでどうしてようと、テメェには教えねぇよ」

狂気に満ちた笑みを浮かべるその顔。
あからさまに「何かを知っている」顔。
リュードはその態度に、苛立ちを覚えた。

「貴様、何を考えている?」
「何の事だかさっぱりだなァ?」
「とぼけるな。彼女に『武器』を盗ませたのは貴様だろう?」

普段は抑えている「殺気」を募らせ、ゲッテムハルトに詰め寄る。
ゲッテムハルトは人を食ったような笑いを浮かべたまま立ち上がり、リュードを大仰に覗き込む仕草をしながら馬鹿笑いをした。

「くふ…くふははははは!!」
「何がおかしい」
「テメェ、随分と美味そうになってきたなァ?いーい殺気だ」
「?!」

リュードに顔を突き合わせ、その顔を更に歪める。
あまりの狂気の笑みに、リュードは思わず身を引いた。
エリは二人の間に割って入るようにしてゲッテムハルトを睨む。
彼女の行動に、ゲッテムハルトはおどけたように首を振った。

「いーや、いやいや、まだだ、まだ早い、急いちゃいけねぇな。ちったァ我慢もしねーとなぁ?」
「…何を…?!?」
「何せ、これからもっともーっと楽しい事が起こるんだしな?」

囁くように、呻くように。
ゲッテムハルトはそう言って舌なめずりをして笑う。

「…貴様…一体何をしようとしてるんだ」
「そんなの気にすんなよ。テメェはテメェ自身がもっと美味くなるように動いてりゃいいんだ」

卑屈な笑いを浮かべたままの狂気の男。
この男のペースに飲まれてはいけない。
リュードが一つ大きく深呼吸をし、ゲッテムハルトに向き直った時。
エリが毅然と、目の前の男に吐き捨てる。

「貴方が何をしようと、私達が止めるわ。覚悟しておくことね」
「くっふふふ…せいぜい、がんばれよ?」

尊大な態度を崩さないゲッテムハルトに。
リュードはふと、真顔になった。

「…一つ、質問がある」
「あぁ?まだ何かあるのかよ」
「何故、彼女を『シーナ』と呼ぶ?」

瞬間、ゲッテムハルトの表情が凍りついたのが、エリにも分かった。
そして、みるみるうちに「怒り」にそれはすり替わる。
わなわなと拳を震わせ、リュードに詰め寄った。

「…テメェ…テメェが、それを聞くかよ!!!」
「だから、聞いているんだ。『シーナ』は…」
「ああそうとも!だからこそあいつを『シーナ』と呼ぶんだ!テメェが一番、分かってんじゃねえのか!えェ!?」

リュードの胸ぐらを掴み、殴りかかる勢いでゲッテムは怒鳴りつけた。
対して、リュードの表情は冷淡なまま。

「…彼女に『それ』を押し付けるのか」
「クソッタレが」

リュードを半ば突き飛ばすように、ゲッテムハルトはその手を離した。
そうして再び、狂気の笑みを浮かべる。

「テメェのしでかした事を棚に上げて、俺を責めるってか…流石は大量虐殺者様だ!くっはははははは!!!!」
「……」
「もうすぐ『あの場所』がアークスに開放される。そうなってテメェはようやく気付くんだよ。テメェの存在する『意味』をな!」
「あの場所?」
「楽しみだ…あー楽しみで仕方ねェ…!!!」

両手を広げ、ゲラゲラと笑いながら。
ゲッテムハルトは姿を消した。

「リュード…」

寄り添うように、エリがリュードを気遣う。
リュードの拳が微かに震えていたからだ。
エリがそれに触れると、我に返ったようにリュードはエリを見る。

「…大丈夫だ」

僅かに俯き、リュードはぽつりと呟く。
しかし、懺悔だけではなかった。その目からは光が消えていない。

「奴が何かしようとしてるなら、それを止めるのは俺の責務だ。奴をあんな風にしちまった俺の…」
「私も居るわ。一人でやろうとしないで」
「…ありがとう、エリ」

その時だった。
エリの端末に、メール着信があったのは。

「…何だ?」
「フーリエちゃんからだわ」

そういえば、リリーパに「ロジオ」の消息を求めて探索に出かけていたはず。
しかし、エリはその「発信元」に首を傾げた。

「変ね、これ『自動送信』されてるメールだわ。発信地点はシップ内だし、時間が午前9時になってる」
「…しかも何だ、空メールじゃないか」

現在の時刻はアークスタイムで既に午後5時を回っている。
居住区を照らす人工太陽が沈み、シップ内の照明が徐々に「夜のもの」へと切り替わる時刻でもあった。

「どういう事だ…?」
「分からないけど、フーリエちゃんに何かあったのかも…」

彼女自身が万が一の時のために送信予約をかけておいたのか、それとも何かの、罠か。

「エリ、今から動けるか」
「私は大丈夫」
「もう一働きしないとならないようだな…」
「ええ。行きましょう。フーリエちゃんが心配だわ」

ロジオに続いてフーリエまでもが、命の危機に瀕しているのだとしたら。
到底、疲れたなどと言ってはいられない。
装備を整えなおし、彼らはその足でリリーパへと向かった。



フーリエが探索に降りたリリーパの地下坑道。
まだ、アークスの探索の手が行き届いてはおらず、あちらこちらで機甲種との戦闘になった。
何度目かの機甲種の軍団を沈黙させ、区画を超えた時。
小さな小さな泣き声がエリの耳に届いた。

「…え?」
「どうした」
「今、何か…」

振り返ると。
鉄屑の山の影から、長い耳が見え隠れする。

「あ!」

エリが小さく声を上げた。
リリーパ族の一匹が、恐恐とこちらを覗いていたのだ。

「りり?」
「あなたは、リリーパ族の…」

その個体はエリに見覚えがあるのか、にっこりと笑みを浮かべた。
思わずエリは腰を落として、笑みを返す。

「ねえ、私達を覚えてる?」
「りー!」

リリーパ族は大きく頷いた。
こちらの言語を多少は理解しているのだろうか。
物は試し、とエリは言葉を掛けてみる。

「えーと、じゃあ、黄色いキャストの女の子覚えてるかな、あなた達と多分一番お話してると思うんだけれど…」
「りり…りー…?」

困ったように首を傾げている。
エリもつられたように、首を傾げた。

「うーんとね、フーリエちゃんって言うんだけれど…」

その言葉に。
リリーパ族の耳が直立した。

「リーリリ!リーリリ!」
「え?」
「りーりり!りっり!!りっりりりー!!!りーりり!!」

イントネーションが、そのまま「フーリエ」だった。
唐突に、エリのネイバークォーツの触覚のような飾りを掴み、引っ張る。
その様子を見ていたリュードが笑った。

「来いと言ってるみたいだぞ?好かれたな」
「んもう、冗談言ってる場合じゃないでしょ」
「それもそうだな、行ってみよう」

リリーパ族に連れられて。
残骸の山を乗り越え。
時には、人一人通れるかどうかという隙間を抜けて。

「…リュードさん、エリアルドさん!」

別の区画と思しき場所に辿り着いた時、小さく声が届いた。
瓦礫の影から姿を表したのは、女性体にしては厳つい黄色いボディのキャスト。

「フーリエちゃん!!」
「お待ちしていました、お二人共ご無事でなによりです」
「良かった、心配してたのよ?」

エリがかけよると、フーリエは人懐こい笑みを浮かべる。
リュードが歩み寄ると、彼女は軽く頭を下げた。

「すいません、戻れなかった場合の自動送信メールが届いたってことですよね?」
「ああ、何かあったのか?」
「こちらから連絡を入れたかったんですけど、危険だからやめたほうがいい、と止められてしまいまして…」

そう言って、振り仰いだフーリエの視線の先に。

「…おふたりとも、また会えてよかった…!!!」

よろよろと、歩いて来る人影。
思わずリュードはその身体を支えるように駆け寄った。

「ロジオ!!!」

その探究心、好奇心が仇となり、命を狙われた科学者。
フーリエも慌てて駆け寄り、反対側からその身体を支えた。

「ああっ!!ダメですよ!まだ怪我治ってないんですから!!!」
「あいたた…いえいえ、大丈夫です。でも良かった…お二人共ご無事で…貴方がたも狙われてるかと思いましたよ…」

怪我をしてまで自分たちを気遣うこの科学者に、リュードは思わず苦笑する。

「こんな状態になってよく生きてたな…」
「凍土で暗殺者に襲われたんですが…気づいたらここに」
「私がこの子達の所に辿り着いたのと同じくらいの時に、長い黒髪の女の子がロジオさんを連れてきてくれたんです。ここで匿ってやってくれって」

長い黒髪の女の子?
誰だろうか。
例の、始末屋でないのは間違いないが。
他に水面下で動いている者達が居るということか?
それを遮るように、ロジオがリュードの前に立った。

「そんな事はどうでもいいんです。もっと大変なことが分かったんですから…!」

ロジオを気遣い、その場に座らせ。
リュードも胡座をかいて、座る。
エリもフーリエも、同じように腰を落とした。

「大変なこと?」
「私が殺されかけた、理由ですよ」

そう。
ただの地質調査をしていた科学者を何故「殺す」必要があったのか。

「凍土やそのあたりに知られたくないものがあるのなら立入禁止にすればいいだけなのに、何故かアークスは普通に入れますよね?なのに何故私が殺されかけたのか…」
「何か、分かったのか?」
「私が『地質学者』だったからですよ」
「地質…ナベリウスの地質に、何か尋常でないものがあったのか?」

眼鏡の奥の瞳が左右に揺れる。
受けた恐怖を打ち消すように、ロジオは語り続ける。

「凍土の組成分から、ダーカーの因子が検出されたんですよ。しかも、表層ではなく…地中の、奥深くから」
「何ですって…?」
「これが意味する所は、ダーカーが遥か昔からナベリウスには存在していたという事なんですよ」

エリは呆然と、ロジオを見つめる。
アフィン達のような「新人」を研修させる場所として、比較的安全な場所として選ばれていた筈のナベリウス。
そこに昔から、ダーカーが存在していた?
それをアークス上層部が「知らない筈は無い」のに。
だから、それを知ったロジオが「アークス側」に消されかけた?

「でも、それだけじゃないんです。もう一つ…」
「何?」
「あの凍土は、今から四十年前にダーカーによって生み出されたものなんです」
「凍土を…ダーカーが生み出すって…そんな途方も無いこと出来るんでしょうか?」
「ダーカーと言っても、普段貴方がたが相手をしているような小さな個体ではなくて…凍土を生み出すほど巨大な、それこそ惑星規模のダーカー…そう、『ダークファルス』と呼ばれる存在の、攻撃だったんです」

その言葉に、リュードの身体の全身に鳥肌が立った。

ダークファルス。
闇の陰茎。
千年に一度蘇る闇。

「自分の身体」が、その存在を知っている。
必死に、全身を駆け抜ける怖気を打ち消そうと、リュードは己の左腕をきつく掴む。
エリがそれに気づき、思わずその手を取った。

「大丈夫?」
「…リュードさん?」
「いや、すまない、続けてくれ」

訝しげにリュードを見るものの、ロジオは言葉を続けた。

「四十年前に、三英雄によって撃退されたダーカーの長、ダークファルス。その決戦の地が、あの凍土なのかもしれないんです」

四十年前の大戦。
歴史の教科書や、文献などにちらほらと書かれてはいたが、そこまで凶悪な存在だとは書かれていなかった。
当時の三英雄を中心にしたアークス達がダークファルスを撃退し、平和が訪れたとあるだけ。
以前から思っていた。
何かが、おかしい。
歪んでいる。
いや、意図的に歪められている。
それが今はっきりと、現れたのだ。

「元々、ナベリウスには凍土など存在しない、緑豊かな温暖な惑星だったんです。しかし、ダークファルスの人智を超えた一撃により、惑星の環境が変えられてしまった。そう考えれば、数値の異常も気候の激変も全て説明できるんです」
「なるほどな…」
「でも、これだけじゃ、私の命を狙うほどの秘密ではない。きっと他になにかある筈なんです」

そう、地質学者はロジオだけではない。
他の学者も、ちょっと調べればこのくらいはすぐに辿り着くはず。
きっと、ロジオが掴んだ「データ」の中に、何かが潜んでいる。

「私はもう少し調べてみます。幸い、フーリエさんが色々と良くしてくださるので、ここでも作業が可能ですから」
「無理はするなよ?」
「私がロジオさんを守ります。大丈夫ですよ」

両方の手を握りしめ、フーリエが頷く。
リュードは立ち上がり、真上を向いた。
眼に入るのは、地下坑道の暗い空間。
深呼吸をし、己を落ち着ける。

見え始めた「悪意」。
だが、それ以上に。
己が身を置くアークス自体の「裏側」が再び見え隠れし始めている。

げに恐ろしきは人間。

そんな言葉が、脳裏をよぎった。




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