PSO2二次創作小説「時の輪」(24)

この小説は、ファンタシースターオンライン2(PSO2)のストーリーを元にした二次創作小説です。
オリジナル要素も含まれますのでご注意ください。
ゲーム内「マターボード」を進められている方(おおよそ9枚目クリア)でなければ、ネタバレ状態になりうることをご承知下さい。

PSO2二次創作小説「時の輪」

「プロローグ」

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注意:初めての方はまず上記の小説の前にこちら↓
PSO2二次創作小説「Black Dream」~黒い夢~
をお読みになる事をお勧めします。




↓PSO2二次創作小説「時の輪」(24)


数日後。
二人にひとつの任務が課せられた。

『惑星ナベリウスに「遺跡」のような地域が発見された。先遣隊として、探索を要請する』

探索に出るための最終チェックをキャンプシップで行いながら、リュードは零す。

「遺跡…か」
「ナベリウスにまだ未開の場所があったなんて」
「…奴の言っていた『あの場所』とは、ここの事なんだろうか」

優先して彼らに任務を与えてくれたナウシズ総督のヒースには感謝するものの。
何故それをあのゲッテムハルトが知ったのか、知る由もない。
もとより、研究部の最高機密である筈の「L計画」のデータを彼が手に入れられる立場に居る時点で、情報を手に入れるルートがあるのは間違いないのだが。

成層圏から見るナベリウスは、静か。
森林地帯、凍土、その向こうにはまだ「足を踏み入れていない場所」がある。
ガチン、大きな音を立ててとタルナーダの安全装置が外された。

「行こう。この目で見てみなきゃ分からない」
「そうね…油断しないようにしなきゃ」
「そうだな」

テレプールへ飛び込み、広がる森林地帯を間近に見ながら。
彼らはその場所へと降り立った。

その、瞬間。
エリの首筋が、緊張する。

広大な湖の中に広がる、人工的な建造物の残骸。
その残骸を緑が覆い、そのあちらこちらに胞子のようなものを撒き散らす「不思議な花」が見える。
小さなものでも両手を広げたくらいはあり、大きなものは残骸にへばりつくようにしてその大輪を咲かせていた。
一見、美しい景色ともとれるが。
エリは、全身に走る「鳥肌」を必死に抑えようと自身の両腕を掴む。

「なに…ここ…?至るところから…」

足元の大地から這い上がる「ダーカー」の気配。
人一倍ダーカーに敏感なエリアルドが、思わず立ちすくんでしまうほどだった。
原因は分からないが、時折それが妙に濃くなったり薄くなったりする。
それに同調するように、空気の色が変わる。
震える身体を何とか宥めようと深呼吸して、ふとリュードを見ると。
彼自身が、硬直したように動かない事に気付いた。

「…リュード?」
「…こ…こが…遺跡…だと…?」

真っ青な顔。
震える拳。
その視線の先には、凍土地帯から見えていた「巨木」があった。
近くに来てようやくわかるその異常なまでの大きさ。
薄紫に白い「文様」が刻まれ、視界を遮るようにして僅かに傾いて立つ「それ」には、ひときわ大きな「花」が咲いている。
枯れ木のように佇むそれを、リュードは凝視している。

「大丈夫…じゃあ、なさそうね…」
「ここは本当に発見されたばかり、なのか?」
「え…?」

ようやくその口から出てきた言葉は。

「俺は、俺は…ここを…知っている」
「!!」
「いや…知っているのは俺じゃない…俺の…俺の中の…」

よろめき、自分の両肘を掴む。
身体をめぐる「何か」を必死に押さえつけているが、その体から「赤黒いフォトン」が少しずつ立ち上り始めていた。
何とか落ち着こうと深呼吸を繰り返す。
体を支えるように、エリは駆け寄った。

「引き返す?」
「…いや…駄目だ」

一種の強迫観念のようなもの。
この最奥で…奴が、ゲッテムハルトが何かをしようとしている。
先に進まなければ「真実」を知ることが出来ない、ゲッテムハルトを止める事など出来はしない。それだけは分かる。
だがこのままでは。

エリはふと、何かを決意するように瞬きをしてからリュードの前に立った。
彼の胸元に右手を添えて目を閉じる。

「…?何を…」

ふっと、エリの身体が淡く光り始めた。
暖かいフォトンの輝きが、腕を伝ってリュードへと広がっていく。
その途端、リュードの体内でざわめいていた「何か」が静まり返る。
脳裏に小さく聞こえ続けていた「声」が、その身から立ち上っていた闇のフォトンがぴたりと止んだ。
それがあまりに静かで、逆に落ち着かない。
手を離したエリを見据えて、思わず声に出してしまう。

「…何をしたんだ」
「あなたの闇のフォトンを、私の光フォトンで中和したの」
「フォトンを…中和?」
「…父と母が遺した唯一の『遺品』があるの。覚えてる?私が『フォース』として戦ったあのスーツを」

忘れるわけがない。
他の誰が「マターボード」によってその記憶を奪われても、彼はそれを覚えている。
自分を守るため、「闇の意思」を断ち切る為にそのフォトンを使い果たして命を落とした「あの時の姿」を。
ゆっくりと頷くリュードに、エリは淡々と続ける。

「あの服が入っているスーツケース、絶対に使わないと封印してずっとクローゼットの奥にしまっておいたの」
「…そうでなきゃ困る」
「でも、あの『L計画』の書類に目を通して…父さん達が何を考えていたのかをどうしても知りたくて…調べたの。スーツケースをひっくり返して」
「何か、あったのか?」
「ケースの裏地をめくったら、底の方に『マイクロチップ』が貼り付けられてたわ。ネットから切り離した端末でその中を見たら…あったの。二人の『研究資料』が」

エリの両親はアークスであり、L計画の初期に携わった研究者だった。
十年前のダーカー強襲時、家族全員で自宅から脱出しようとしていた彼女は、母親から「スーツケース」を受け取っていた。
だが、その後の惨劇のせいでそれは一時手放す事になり。
ダーカーが駆逐されたのち、廃棄される事が決まったシップからそれだけを持ち出すのが精一杯だった。

「私が莫大な光フォトンを持っているのは、あなたの中の『D因子』をコントロールする為」

人がその身の内に保てるフォトンの量は、両親の持つDNAに書き込まれている許容量によってほぼ決定されるという。
フォトンを内在出来る量の多い者同士の子は、単純にフォトン内包量が増える事が確認され。
それを何度も繰り返し、人工交配を重ねて生み出されたのが「ニューマン」。
代償として、その「寿命」はヒューマンのそれより短い。
故に、ニューマン同士の婚姻は『種の寿命』を縮めるという事で敬遠されていたのだが。

「それを『何とかしよう』としていたのが両親だったの。父も母も、すごく沢山のフォトンを内包してたから…」

エリの両親が発表した「ニューマンの種としての保存」という論文。
それは、母親の体内での自然受精、着床、そして育成という至ってシンプルなものだった。
人工授精、人工子宮での育成が当たり前であったニューマンの生態系に革命を齎したのだ。

「そこに目をつけたのが、奴ら…か」
「最初は純粋に協力してくれる研究部を喜んでいたみたいなのだけれど、『あの事件』の直前に自分の娘(私)を被験体として差し出せと脅迫されて」
「それを、拒んだ…んだな」

静かに頷くエリの目が、心なしか潤んでいる。
今思えば、彼女が真実に辿り着いた時の為にデータを残し、彼女を逃したのだろう。
その為に命を落とした。
リュードの「親」と同じように。

「資料の最後に、貴方の事も書いてあったわ」
「俺の?」
「決して貴方の中の『闇』を目覚めさせてはならないと、その為にあえて『D因子を制御する方法』を記してあったの」
「それが…今の?」
「一時的ではあるけれど、しばらくは因子の活性化を抑えられる筈よ」
「やっぱり…お前の両親は…」
「…うん。それどころか、貴方や私への『懺悔の言葉』ばかりが最後には連なっていたわ」

ほう、と安堵の溜息が出てしまった。
改めて巨大な枯れ木を見上げるリュードの目にはもう、一欠片の迷いも曇りもなく。

「…俺達は、色んな人に助けられて今を生きてるんだな」
「私達だけじゃないわ、皆そうして、支え合って生きてる」
「だからこそ…ゲッテムハルトを止めなきゃならん」

狂気で自分を染め上げ、全てに対して憎しみをまき散らす男。
自分がその一端を担ってしまっている以上、彼を止めなければならない。
一刻も早く。




「…このような所に来訪者とは、そうか、先遣隊が降りてきたか」

背後から、声が飛んできた。
二人が振り返ると、そこには。

「レギアスさん…!」

エリが思わず声を上げた。
六芒均衡にして三英雄の一人、レギアス。
他の六芒が世襲しているにも関わらず、彼だけは「生ける伝説」としてアークスの頂点に座し続けている。
思い出したように、レギアスは二人の顔を交互に見る。

「君たちは…先日の…?」
「はい。先遣隊としてここに来ています」
「そうか…」

エリの答えに、じっと彼らの挙動を見るように探るようにレギアスは言葉を作った。

「仕事熱心なのはいいことだが…この付近はちょっとばかり他の場所とは勝手が異なる。ある程度の探索が終わったら、早々の帰還を勧める」
「…何故です?」
「私ならともかく、もっと面倒なのに目をつけられると厄介だからだ」
「面倒…?」

リュードはレギアスに正対し、表情の見えない「目」を見た。
まるで、この場から彼らを追い出したいような、そんな言葉。
真意を探り出そうと、リュードは視線を外さない。
ふと、そんなリュードの顔をまじまじと見てレギアスは首を傾げた。

「…以前も思ったが、その顔どこかで…?」

リュードは一瞬、我に返った。
まただ。
ゼノと話した時の「違和感」。
レギアスとはこの間の「テミス」で出会ったばかりの筈。
何故自分を知っているのか。
自分の知らない「自分」を。
疑心の目で己を見るリュードに、レギアスは慌ててその手を振った。

「ああいや、失礼した。私の気のせいだろう」

気のせい?
いや、おそらく違う。
本当は「知っている」のではないのだろうか。
知らないふりをしているのか、それとも知らない事に「されている」のか。
その刺すような視線に、レギアスはふと笑った。

「名は何と?」
「…リュード。リュード・アレルです」
「ほう…君がそうであったか。良い気を滾らせておるな、先々が楽しみではある。…だからこそあまり急くな、大局を見失えば取り返しがつかなくなるぞ」

やはり、自分の存在が六芒均衡に知られている。
それは本来ならば嬉しい事ではあるのだろう。
だが状況がそれを許さない。
知られている理由は、恐らく。
忠告をそのまま受け取る事が出来ずに居るリュードに、レギアスは苦笑した。

「いかんな、年をとると説教臭くなる。…まあ、老婆心からの助言だ。心の片隅にでも留めておいてくれ」
「…はい」
「ではな、くれぐれも気をつけ給えよ」

二人を残し、レギアスは去った。
さらに大きくなった「アークス上層部への疑念」を残し。

「ふぅん、レギアスに認められるって位だから、優秀なんだ」

突然、別の方向から女の声が飛んでくる。
二人が弾かれるように振り向くと、そこには。

「こんな奥地くんだりまでようこそ。リュードと、エリアルドだったね」

顔を半分以上黒いマスクで隠した、黄色い躯体のキャシール。
リュードはその女性に見覚えがあった。

「…マリア…?六芒均衡の二の…」

レギアスに並び、その強さと知識の多さで名を馳せる六芒均衡の一人。
機械の体を持つ者であるゆえに、その活動は70年を超えるとも言われている。

「その通り。不本意ながらね。まあ、そんなわけでちょっとばかし質問させてもらうよ」
「質問?」
「…あんたたちはここに何をしに来たんだい?」

エメラルドに深く輝く瞳で、二人を見据えてくる。
嘘をついても、ごまかしても無駄だろう。
リュードは素直に、答える。

「先遣隊として、調査に降り立ったまでです」
「本当、優秀だね。…あんたたちに入れ知恵した学者さんでも居るのかな?」

学者?
ロジオの事か?
こちらの出方を伺うように、マリアはじっとリュードを見据えている。
逆にリュードは、その瞳を刺すように見た。

「そのあたりには、俺達には答える義務は無いと思いますが」
「は、確かにその通り。アークスらしい受け答えだね。ま、いいだろう」

辺りに漂う、ダーカーの気配と。
表面上は穏やかなマリアとリュードとの間にある緊迫感。
エリは無意識の内に、後ろ手にラムダクシャネビュラの柄を握っていた。
そんな二人に、マリアはふと目尻を下げた。

「…世の中には『優しい嘘』というものがある」

唐突に、マリアは語り始めた。

「優しい、嘘?」
「皆のためになる嘘、ってやつだ。真実がいつも正解じゃない。黙っておくべき事というのはわりと多いのさ、この世の中にはね」

ここの事を言っているのか。
リュードには、この場所は到底「遺跡」には見えなかった。
辺りに散らばる残骸の新しさや、このダーカーの気配。

「ここの違和感に気づいてるようだね。お見事だよ。…でも、真実にはまだ遠い。それで言いふらされても困る」
「言いふらすつもりも無いが…ここは何なのかは、知りたい」
「いいだろう、教えよう。一つの真実をね」
「真実…?」

エリが思わず一歩前に出た。
ふと、二人から視線を外し、マリアはそびえ立つ巨大な枯れ木を見上げた。

「ここは、四十年前に行われた一つの大きな戦いの痕」
「四十年前…?!」
「そう。ここは遺跡なんかじゃない。ダークファルスとの大戦跡なんだ。歴史で習っただろう?アークスにとってひとつの節目になった、大きな戦いの痕なのさ」

ダークファルスと、このナベリウスで戦闘…?!
呆然と、二人はマリアを見つめるしか出来なかった。
十年前の悲劇とは違い、四十年前の大戦はあくまで資料でしか見たことはなかった。
だが、それが「ここ」で行われたとは、何処にも表記はない。
何故隠す必要があったのか?
そうまでして隠し通す理由は?
疑問が顔に浮かぶ二人に、マリアはふと振り返った。

「っと…何故かは自分たちで考えな。無意味に嘘をつく訳もない。何事にも、それなりに理由がある」

答えを知っているのか。
六芒均衡が「知らないわけはない」だろう。
だが、それを教えるつもりはないようだ。

「あ!いた!」

不意に、甲高い声が響いた。
マリアが振り返った方向に、息を切らせて駆け寄ってくる少女が一人。

「おいこら馬鹿マリア!あたしを置いて勝手に行くな!!」

長い黒髪を束ね、黒い瞳がその意志の強さを表す。
マリアは苦笑して、やれやれと肩を落とした。

「馬鹿とはご挨拶だね、馬鹿娘。追いつけないあんたが未熟なの」
「むー…あたし、まだ未熟?」
「未熟も未熟、大未熟。馬鹿娘は今日までにして、今日からは未熟娘と呼んでやろう」
「うるさい!」

黒髪の、少女?
エリはその元気な女の子を見つめる。

「ねえ…あなた、ひょっとしてロジオさんを助けてくれた子じゃ…?」

少女ははた、と我に返ってエリとリュードを交互に見る。

「ロジオって?あの身の程知らずの科学者の事?」
「全く、まだ懲りてないみたいだねぇ」
「あいつの知り合いってあなたたちだったの?」

甲高い声で驚きを隠さない少女と、師弟関係というよりはまるで親のようなマリア。
エリはくすりと笑って、少女に頭を下げた。

「ありがとう、あなたのお陰で私達の友達が助かったわ」
「え…え、わ、私はそんなつもりじゃ…助けろってマリアが言うから仕方なく…!」
「おやおや、人の好意は素直に受け取っとくもんだよ、未熟娘」
「うるさいなぁもう!」

とんだ跳ねっ返りのようだ。いわゆる「ツンデレ」というやつだろう。
リュードは苦笑して、少女に向き直る。

「君の名前は?」
「サラよ、サラ。リュードとエリアルドでしょ。知ってるわよそのくらい」
「…ありがとうな、サラ」

改めてリュードが笑いながら感謝を口にすると。
顔を真赤にして、サラはぷいと横を向いた。

「だから私の意思じゃないってば!もう行くわよ馬鹿マリア!!!」

恥ずかしさを隠すように、サラは先へと走っていった。
肩をすくめ、マリアが笑う。
が、その直後に真顔になった。

「…アークスは嘘をついていたけど、あたしの言ったことは嘘じゃないよ。よーく、考えてみるんだね」
「……」

マリアとサラはそのまま、姿を消した。
六芒均衡の一と二が、自分たちに忠告するその意味。
このまま進んでいいのだろうか。
躊躇いと、不安がエリの心をかすめる。

「…行こう。ここが何であれ、ヤツを止めなきゃどうにもならない」

リュードは、そう言ってタルナーダを抜いた。
エリは隣に立つ男の覚悟を、垣間見る。

「そうね。何か起きてからじゃ、遅いわ」

漂う闇のフォトンを、エリは一気に振り払うように。
ワイヤードランスを抜いて、巨木を見据えた。




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