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PSO2二次創作小説「時の輪」(25)

この小説は、ファンタシースターオンライン2(PSO2)のストーリーを元にした二次創作小説です。
オリジナル要素も含まれますのでご注意ください。
ゲーム内「マターボード」を進められている方(おおよそ9枚目クリア)でなければ、ネタバレ状態になりうることをご承知下さい。

PSO2二次創作小説「時の輪」

「プロローグ」

(1) (2) (3) (4) (5) (6) (7) (8) (9) (10)

(11) (12) (13) (14) (15) (16) (17) (18) (19) (20)

(21) (22) (23) (24)


注意:初めての方はまず上記の小説の前にこちら↓
PSO2二次創作小説「Black Dream」~黒い夢~
をお読みになる事をお勧めします。




↓PSO2二次創作小説「時の輪」(25)



比較にならないほどのダーカーの数。
ダガンやエルアーダ、ブリアーダなどの既に確認されている種に混じり。
見た事のない大型種や強固な甲羅を持つもの、遠距離攻撃すらしてくるものも居る。
お互いの死角を守るように、二人は戦い、進み続けた。
群れて襲い掛かってくる膨れ上がった魚のようなダーカーをタルナーダで一薙ぎして、リュードは振り返った。

「…大丈夫か」
「ええ。こっちも何とか片付いたわ」

ワイヤードランスを一旦収め、彼女は頷いた。
エリの光フォトンに触れたダーカーの残骸が浄化されていく。

「この場のダーカーは全部倒せたみたいね」
「そうだといいが」

そう言って、タルナーダを収めた途端。
ふとリュードの動きが止まった。

「…?」
「どうしたの?」
「…剣撃が聞こえる」

彼らの進行方向にある残骸の向こう、まだ「闇のフォトン」が浄化されていないあたり。
エリが耳を澄ますと、確かに戦いの音が聞こえて来た。

「誰かいる…?」
「行ってみよう」

言うやいなや、リュードは駈け出した。
後をエリが追う。

瓦礫を乗り越えると、そこに。

「もう!どれだけ倒せばいいの!」
「文句言う前に戦え!」
「わかってるわよ!!」

見覚えのある二人が、ダーカーに取り囲まれていた。
考えるよりも早く、リュードとエリは武器を抜く。

「加勢する!!!」
「…旦那!」
「リュードさん!エリアルド?!」
「話はあと!!」

返事を聞かず、問答無用で手当たり次第にダーカーを叩き潰し始める。
加勢された二人―ゼノとエコーは一瞬呆然としたものの、すぐにその戦列に加わった。
暫くの喧騒の後。
ゼノが棍棒を持った大型種を叩き斬ると、ようやくその場の闇の気配が薄まった。
ヴィタソードを収め、リュードに振り返って苦笑する。

「あー…助かったぜ旦那、流石にあの数はやばかった」
「気にするな、こっちも二人できつかった所でね」

不安を隠そうとせず、オロオロと辺りを見回すエコーに気付き、エリが駆け寄る。

「大丈夫?エコー…」
「う、うん…ねえエリアルド、ここ何なの?凄く気持ち悪い…」
「そうね…」

エリ程ではないが、フォトンをそのまま扱うフォースであるエコーにもこの場の異常は感じ取っているらしい。
そんなエコーを半ば放置して、ゼノはリュードに歩み寄った。

「旦那達が先遣隊として降りたって聞いて、俺達も無理言って降ろして貰ったんだ。ゲッテムの野郎の姿が見えないのも気になってたんでな…」

ゼノの感の鋭さは今に始まった事ではない。
この状況で、これほど信用出来る相手はいない。
何より、ゲッテムハルトとの浅からぬ因縁を持つ者同士。
リュードは頷いて、ゼノへ正対した。

「…奴がここで何かをしようとしているらしい。出来れば同行を頼みたい」
「勿論だぜ、旦那達が一緒ならこっちも安心だ」

リュードからの提案に、ゼノがニヤリと笑みを浮かべて頷くと。
エコーがあからさまに不機嫌な表情を浮かべた。

「ちょっとゼノ、あたしは?!」
「はいはい、エコーさんも十二分に頼りになりますよ」
「……なんか、最近私の扱いぞんざいになってきてない?」

逐一首を突っ込んでくるエコーにゼノが肩をすくめて向き直り、鼻っ面に指を突き当てた。

「いい加減独り立ちしろって事だよ。俺とばっかりつるんでてつまらなくないのか?」
「そ…そんな…」
「あー?聞こえねぇぞ」

ぐ、と言葉に詰まるエコー。何かごにょごにょと聞こえないように言い訳をしているようだが、ゼノは聞く耳を持たない。

「ま、そんな訳でよろしくな」
「ああ」
「それにしても…」

と、ゼノが辺りを見回した途端。
ぐらり、と視界が揺れた。

「きゃ…?!」
「何!?」

エコーとエリが思わず短く悲鳴を上げる。
いや、揺れたのは視界ではない。
足下…大地そのものが地響きを立てて揺れ始めたのだ。
程なくそれは収まったが。
ゼノが足下を見据えて、呟く。

「地震…にしては変だ。何か…地下奥深くで蠢いてるような…」
「蠢いてるって…、変なコト言わないでよ」

更に怯えてしまったエコーが、震える声を上げる。

リュードの全身が、緊張する。
鳴動、地鳴り、この身を揺さぶる全てがまるで己の身体と共鳴しているような、そんな感覚。
猛烈に嫌な予感がする。
ここにあるもの、ここにいるもの。
予感は半ば、確信に変わりつつあった。

「…要するにですね、ここは危険という事ですよ」

それまで何の気配もなかった背後から、不意に声が飛んだ。
反射的に、全員が振り返る。
エコーが怯えたまま、おずおずと問いかけた。

「え…い、いつの間にそこに…」
「ああ、すみません。驚かせるつもりはなかったのですが…」

手にしたタリスを収め、そこに居た人物は笑った。
リュードは向き直り、その男を刺すように見つめる。

「六芒の三までもがここに来たのは偶然じゃないな」
「え…?!六芒均衡の三って…カスラさん!?」

カスラは、驚愕の表情を浮かべるエコーに柔らかい笑みを浮かべて頷き。
そして、その笑みが消えた。

「そうです。六芒均衡の一人として、撤退を進言します」

脅しではない。
返答によっては、実力行使も辞さない。
余りの迫力に、エコーはゼノの後ろへと後ずさった。
リュードはゼノとカスラの間に立ち、その圧力を跳ね返すようにカスラを見据える。

「……」

一触即発の空気。
カスラはふう、と小さくため息をついた。

「…到底、退くつもりはなさそうですね」
「当然だ」
「…ならば、ご同行させて戴きましょう」
「え…?」

意外な言葉に、エリは目を丸くした。
苦笑して、カスラは肩をすくめる。

「私も、この先に行かなければなりませんのでね。…正直、一人で進むのは不安なだけでしたし」
「六芒が言う台詞じゃねえな…」
「もともと、私は情報収集専門。戦いは得意ではありませんよ」
「よく言うぜ…」

ゼノの呆れた様子も無理は無い。
六芒均衡の選出基準は「戦闘からの生還率」がまず挙げられるという。
それが本当ならば、戦いが不得手な者が選ばれる訳がない。
自分を謙遜しているのか、それとも「爪を隠」しているのか。

「私が知ることも、道すがら説明させていただければ、と思います」
「…説明?」
「お知りになりたいのでしょう?ここに何があるのか」

その視線は迷いなくリュードへ。
その時再び、地鳴りと共に揺れが。
リュードは頷き、視線を巨木へと移した。

「…どうやら、のんびり話してる時間はなさそうだな。一緒に行くしか無いか」
「助かります。皆さん、よろしくお願いしますね」

カスラはそう言って、笑った。





戦闘をくりかえしつつ、進む。
ダーカーが姿を見せないほんのつかの間の歩みの途中で、ゼノが切り出した。

「なあ、カスラさんよ。ここに何があるってんだ?」
「…四十年前、ここで何が起こったかはご存じですか?」

四十年前の出来事。
つい先程出会った、六芒均衡の二であるマリアの言葉を信じるならば。

「…ダークファルスとの戦闘、だな?」

リュードの答えに、カスラは肩をすくめ。

「本当に、貴方の情報収集能力は侮れませんね。そのとおり、ダークファルスと、この地で決戦が行われました」
「ダークファルス…」
「初代レギアス、初代クラリスクレイス、初代カスラがダークファルスを撃退した。それ自体は歴史として書かれていますが…それがこの地で行われたのですよ」

エコーですら知っているその存在。
ゼノが訝しげに、カスラに視線を投げる。

「どういう事だよ、この惑星にダーカーが出現したのはつい最近だろ?」
「…それは、嘘です」
「…アークスが嘘をついていた、って言うんですか?」

詰め寄るようにエコーが問いかけると、カスラの表情から笑みが消える。

「ええ、そうです。ダーカーの侵略が無く資源もさほど無い安全な惑星。そう偽る事で注目を逸らす」
「何のためにそんな事を…?」
「…ごく普通のアークスなら、そう言われればここに探索の価値は無いと判断するだろうな」

リュードは歩みを止めず、吐き捨てるように呟く。
全員がその歩調に合わせて、進んだ。
少し考えれば、至極簡単な答え。

「仰るとおり、人を遠ざけるための嘘です」
「解せねぇな…そんな事までして、何を隠してんだ?」
「アークスそのものを支える『虚構』が、ここには隠されているんですよ。ダークファルスは『倒せる』。そう信じ込ませる為に」
「…組織存続の為の『動機』と『士気継続』の為…?」

ダークファルスは『倒せる』もの。
そう信じさせ、人員を確保させるための嘘。
ダークファルスが『倒せない』ものと知れば、アークスになろうとする者は減ってしまう。
そこまでして「アークス」を保たなければならない理由。
それが見えない。
目的と手段が逆転している?

そう考えてふとリュードが顔を上げた時。
そこに、辿り着いた。
十五メートルはあるだろうか、苔むした大地からそびえ立つ、明らかに人為的な「石碑」。
数段高くなっているその場所に、その男は居た。

「来たな…リュード」

リュードのものとは色が違うがデザインは同じ、濃青の戦闘服を着た男。
ゲッテムハルトが振り返り、悍ましい笑みを浮かべた。

「おやおやァ?随分とギャラリーを連れてきたもんだな…くふ…ふふははははは!!!」
「ゲッテムハルト…てめぇここで何してやがる!!!」

ゼノの叫ぶような問いに。
大ぶりに両手を広げ、ゲッテムハルトは笑った。

「ピ・ク・ニッ・ク、だよォ?」
「ふざけんな!この鳴動はてめェの仕業か!!!」
「ピーピーうるせぇなァ…おいシーナ、まだかよ?」

ゲッテムハルトの視線につられて、全員が石碑の土台の方を見る。
そこには、祈るようにフォトンを収縮させているメルフォンシーナが居た。
その手にあったもの。
それに真っ先に気付いたのはエリだった。

「あ…あれは…!!!」

リュードを呼び、欠片を集めさせ、ジグが直し、そして奪われた「杖のような武器」。
やはり、彼女が持ち去っていたのだ。
メルフォンシーナのフォトンに呼応するように淡く白く、輝いて。
その状態に気付いたカスラが、驚愕の声を上げる。

「バカな…!あれは、クラリッサ!!!」
「クラリッサ…?」
「そんな、失われた筈のあれが何故…?!?!」

失われた?
カスラはあの「武器の正体」を知っている?
問い正す間もなく、クラリッサは輝きを増していく。

「いや、ならば全て合点が行く。封印が綻んだのも…!」
「封印!?」
「いけない!開放が成されたら終わりです!彼女とクラリッサを引き離さなければ!!!」

普段の冷静さとはかけ離れたカスラの様子に、全員が身構えると。
その前に両手を広げ、立ちはだかったのは。

「させねぇよ…なあ、分かんだろ?すっげえ事が起こるってよ」

その顔はもはや、正気ではなく。
闇の快楽に身を委ね、人としての理性を失った男。
リュードへ、その狂気を投げつける。

「なあ…リュード。お前なら、いやお前の『身体』は知ってる筈だ。ゾクゾクするだろ?」
「……!!!」

全身が、総毛立つ。
やはりこの地にあるのは…!!!
クラリッサの輝きが増す度に、己の身体の内側から沸き上がる「破壊衝動」。
リュードは思わず、片膝をついた。

意識が…吸い込まれる!

ガクガクと、その身が震えた。
エリがその手を取って「因子」を抑えこもうとするが。

「無駄無駄無駄無駄ァ!!!もう、誰にも止められねぇ、止めさせねぇ!!!」
「テメェ…狂ったか!!!」

ゼノの怒号に、ゲッテムハルトは狂気の叫びを上げる。

「うるせぇ!!俺は元々狂ってるんだよォ!!!!」

言うや否や、ゲッテムハルトは身動きが取れないリュードに襲いかかった。
エリが咄嗟に、その攻撃を弾く。

「無駄だって言ってんだろ!どけ!!!」
「…させないわ」

エリは猛然と立ちはだかった。
その身から立ち上る、光のフォトンの激流。

「リュードをこれ以上苦しめるなら…何者だって許さない…!」
「面白ぇ…楽しませてくれよ…!!!」
「やめろ…エリ…!!」
「リュードは、私が守る!!!」

苦しい息の下からの声は、エリには届かなかった。
怒りのままエリはゲッテムハルトに挑みかかる。
それはまるで、舞のよう。
繰り出されるゲッテムハルトの拳を凌ぎ、反撃する。
ゼノやカスラ、エコーがそれに加勢した。
それはアークス同士の戦闘。
お互いの身体を削り、消耗していく事に他ならなかった。

そんな場合では無いのに…!

その時、狂気の拳がエリの左腕を掴んだ。

「捕まえたァ…!」
「!!!」

下卑た笑みが、エリの瞳に飛び込んでくる。
そのまま、ゲッテムハルトは容赦なくその腕をねじり折った。
一瞬の静寂の後。

「きゃぁあああああああああああああああああああああああ!!!!!」

悲鳴が、彼の意識を引き戻した。
そのままリュードの方へ投げつけるように、エリの身体を突き飛ばす。

「エリ!!!!」

何とか、彼女の身体を受け止めるが。
肘があらぬ方向に折れ曲がったその腕が、一気にリュードの怒りを誘発する。
エコーが咄嗟に駆け寄りレスタをかけるが、アークス同士の戦闘による傷は簡単には治らない。
苦痛に顔を歪めるエリから、ゲッテムハルトへ怒りの視線を投げるリュード。

「う…うう…うぁあああ!!!」
「無様だなァ、いいセン行ってたのにな」
「…貴様ぁ…!!!」

だがゲッテムハルトはそれを鼻で笑った。

「くはははは!一人脱落ゥ!」
「戦闘狂が!4人がかりを凌ぐんじゃねえよ!!!」

ゼノが吐き捨てるように言う。
間合いを取り、攻撃しあぐねている全員の様子にゲッテムはニヤニヤと笑った。

「さて、楽しい時間をいつまでも味わっていたい所だけどよ…おいシーナァ!まだなのか!!!」
「もう少し…なのですが…」

クラリッサにフォトンを『与えて』いるメルフォンシーナの声が震える。

「あ?あァそういうことか」

ふと、何かに気づいたようにゲッテムハルトは彼女へと歩み寄った。

「なあ、シーナ」
「はい…ゲッテムハルト様」
「お前、俺のためなら、何でもしてくれるんだよな?」

驚くほど、優しい笑みをゲッテムハルトはメルフォンシーナに投げかけた。
その表情に、彼女は思わず笑みを浮かべる。

「…勿論です」
「そっかそっか、嬉しいなァ。んじゃ、済まねえが…」

その男の笑顔が一気に闇の笑みに、変貌する。

「死んでくれ」
「え…?」

気付いた時には、目の前の男の拳が、己の腹を抉っていた。

「…あ…」

メルフォンシーナは震える手をゲッテムハルトに伸ばし、その腕を掴んだ。
ずるずると己を傷つけた男の身体に縋りながら掠れた声で、彼女は呟く。

「ゲッテムハルト…さま…シーナは…シーナは…お役に…立てましたか…?」
「あァ、充分だぜシーナ…。これでようやく、奴さんが出てくる…!!!!」

その顔は、哀れな程に満足げだった。
目の前で行われた惨劇に、ゼノは怒りを露わにする。

「てめェ…味方を…!!!」
「おーっとっと、おっかねぇな。なんでテメェが怒ってるんだ?」

狂気の男は肩をすくめ、気を失ったメルフォンシーナを捨てるように払いのけた。
その言葉と同時に。
メルフォンシーナの最後のフォトンを吸い上げたクラリッサが一際大きく輝き。
自ら「石碑」の中へ吸い込まれるように消えた。

直後、大地が唸った。
絶え間ない地響き。
鳴動。
それは次第に大きくなり、立つ事すら難しくなってくる。
カスラが、呆然と立ち尽くした。

「このフォトンの奔流…ダークファルスの…復活…!!!!」

黒い、闇のフォトンの嵐。
石碑から吹き出すように、その場を荒れ狂う。
両手を広げ、まるでその闇の激流に問いかけるようにゲッテムハルトは叫んだ。

「さあ、出てこいダークファルス!!!お膳立てはしてやったんだ!テメェの『依り代』も用意してやったんだぜ!」
「依り代…!?!」

ゲッテムハルトの言葉に、ゼノやエコーがリュードを見た。

「テメェ強いんだろ?最強なんだろ?見せてみろその力を!!俺から全部を奪って行きやがったそのふざけた力を俺に見せやがれ!!はっははははははははは!!!!!」

狂気の笑い声が木霊する。
全ては、この時の為。
リュードが「ダークファルスの依り代」だと知っての、凶行。

がっくりと、リュードは両膝を付いた。
もう、終わりだ。
ダークファルスが己の身を使って、復活する。
止める事は、出来ない。
唯一の望みであったはずの「事象の羅針盤」は沈黙を保っている。
俺は、世界を崩壊させる存在になるのか。
絶望の表情を浮かべるリュードに、ゲッテムハルトが歩み寄った。

「くふはははは!!!心配しなくてもな、俺がテメェの全部をぶち破って、殺して、殺して、殺して、殺してやる!!!!!」

リュードは突然、目の前の狂気の男の「心」を見た。
ゲッテムハルトは、ダークファルスを殺す=滅ぼす為にこの状態を生み出した。
それがたとえ復讐からの行動とは言え、結局は「ダークファルスの消滅」という結果につながるのなら。

そうか。
そういう事か。

それなら、それでいい。

何故か心が驚くほど穏やかになる。
エリを、この世界を、宇宙を滅ぼす存在になるくらいなら、ダークファルス「ごと」殺されるくらいどうということはない。
自分が生み出された理由を考えれば、こうなる事は必然だったのかもしれない。
己を生み出した者達の手先としてその力を行使するくらいなら、死を選ぶ。
最初から、決めていた事。
それを、目の前の男が代わりにやってくれるというのだ。
己の手を汚してまで。

激痛に意識が次第に遠のいて行くエリの目に、悟りの笑みを浮かべるリュードが写った。
彼の頬に右手を伸ばし、涙を浮かべ、首を小さく振った。

「…駄目…駄目よ……!!」

そうして、エリは意識を失った。
だが。

「…な…なん…」

ゲッテムハルトの声に、不意に焦りが混じった。
リュードは顔を上げ、驚愕の表情を浮かべる。

「…?!」

何故か。
闇の粒子は『依り代』であるリュードではなく、ゲッテムハルトを中心に渦巻き始めたのだ。
己にまとわりつき始めたフォトンを振り払おうと、ゲッテムハルトはもがく。

「何だ…どうなってんだ、畜生!!…奴だろ、テメェの身体はリュードだろ!!!!」
「ゲッテムハルト!!!」
「駄目です!!!」

駆け寄ろうとするゼノを、カスラが止めた。

「近寄ってはいけない、貴方も取り込まれてしまいます!!!」
「取り込まれ…?!おいカスラさんよ、あんた何を知ってるんだ!」

カスラは、ゼノの肩を掴んでゲッテムハルトを見据えたまま、後ずさる。

「先ほどの話の続きです。四十年前、アークスはダークファルスを退けはしたものの、倒す事は出来なかったのです。私達に出来たのは、この地に『封印』する事だけでした」
「倒せなかった…?!」
「それを倒したと偽り、この惑星、この場所に封印し続けてきました。ダークファルスは『倒せるもの』と信じこませる為に」
「なん…だと…?!」
「あの石碑には、ダークファルスそのものが封印されていた。しかし今…その解けるはずのない封印が解かれてしまった。依り代と、鍵が揃ってしまったために」

依り代とは、リュード。
鍵とは、クラリッサ。

「ダークファルスも本質はダーカーと同じ、すなわち、他者を侵食し形を為す…」

しかし、そのダークファルスは今。

「どうなってやがる…!シーナ!おいシーナァ!!!くそ、クソ!!!俺に、俺の中に入ってくるんじゃねぇぇええええ!!!!」

ゲッテムハルトの絶叫が響き渡る。
止め処なく石碑から湧き出す闇のフォトンの奔流は、次第に凝縮され。
ゲッテムハルトを繭のように包んでいく。
リュードは腕にエリを抱えたまま、その様子を呆然と見る事しか出来なかった。




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