PSO2二次創作小説「刻の爪痕」(2)

この小説は、ファンタシースターオンライン2(PSO2)のストーリーを元にした二次創作小説です。
オリジナル要素も含まれますのでご注意ください。
ゲーム内「マターボード」を進められている方でなければ、ネタバレ状態になることをご承知下さい。

注意:初めての方はまずこちら↓
PSO2二次創作小説「Black Dream」~黒い夢~

PSO2二次創作小説「時の輪」(Ep1該当)

PSO2二次創作小説「刻の爪痕」(Ep2該当)
プロローグ
(1)


(2)
 
 
 
ダークファルス・エルダーの迎撃作戦に参加を表明したアークスはオラクル全体でおおよそ1万人に上る。
無事なシップの内、比較的アークスの生存者が多かった十隻に志願者が集合。
普段はイベントなどに使わているオーロラビジョンの前に集められていた。
リュードも、千人程のアークスの中に紛れるように立っている。

『まず、諸君らの勇気と行動力に敬意と感謝を述べさせてもらう。
これより任務の説明に入る』

ビジョンに映し出されたレギアスは、静かに頷いた。

『はじめに、諸君らを4つの大隊に分ける事になった。
フェオ、ウル、ソーンの三艦を一つの大隊とし、六芒の二である「マリア」の指揮下に。
同じようにアンスール、ラグズ、ケンを「カスラ」の指揮下に、ギョーフ、ウィン、ハガルを「ヒューイ」の指揮下に置く。
この3大隊には主に全方位からの「ファルスアーム」の迎撃を行ってもらう』

オーロラビジョンのレギアスがワイプし、現在のアークスシップの配置が表示された。
それが移動し、輪形陣を描く。

『マザーシップを中心に有人のシップを配置、その外側に建築途中、及び今回の襲撃で廃棄された無人のシップを盾にするように配置する。戦闘はこの「無人のシップ」にて行う。基本はこの隊形を崩さず、いつ、どこからダークファルスが攻めて来ても対処出来るように行動する。
貴奴は「10日後」と言ってはいたが、それを信じる程我々は愚かではないのでな。
以後、説明は各指揮官より受けてくれ。以上だ』

一連の通達が終わると、レギアスがモニターから消えた。
だが。
そこまでの説明にざわついて居るのが『ナウシズ』だった。
何より、数段高くなっている壇上に立つ指揮官に、全員が動揺している。
ビジョンの前に立っているのは、他ならぬレギアスだったからだ。
リュードはただ静かに説明を聞いていたが、他の者達と疑問は同じ。

何故、レギアスが「ここ」に。

どよめくフロアを沈めるかのように、レギアスは静かに右腕を挙げた。

「…諸君らの疑問も無理は無い。が、まずは聞いてくれ」

レギアスが数歩、横に歩いた。

「…諸君らには、『ダークファルス本体への道』を切り開く任務に着いて欲しい」

ざわめきが一際大きくなる。
それは、他の大隊より遥かに危険な任務であることは明白。
レギアスはその場に居るアークス達の視線を一身に受けながら、言葉を続けた。

「ダークファルス・エルダーは文字通りその巨躯故自らは動こうとせず、無尽蔵に生み出すファルスアームに攻撃と防御を任せている。ゆえに『本体』を叩かねばその攻撃が収まる事はない。その為に諸君らに『矢面』に立ってもらう。
他の大隊がアームを抑え込む間に、本体へ向かう『攻撃部隊』を援護するのが諸君らの役目だ。
エルダーは己(本体)に向かってくると察知すれば全力でファルスアームを差し向けてくるだろう。
このシップに居る諸君らには60人の中隊、さらに12人ずつの小隊に分かれて貰う。
フォトンシールドを展開したキャンプシップによる楔形陣を保ちつつその甲板上で各小隊毎に向かってくるアームを撃破。
陣形の中心にある『攻撃部隊』を死守して欲しい」

―俺達に捨石になれって事か?
―なんでよりによって俺達なんだよ?
―攻撃部隊って、どいつらが?

そんな声があちこちで囁かれる。
本体を攻撃しなければならないのは間違い無い。
だが、その為の「犠牲」を覚悟の上での戦法。
そこまで、人類は追い詰められているのか。

レギアスは暫し、言葉を止めた。
それから、今一度正面に「ナウシズ」のアークスを据え。

「勿論、強制はしない。この任務に耐えられないと思った者は遠慮なく他シップへ行ってくれ。
今からでも、この任務から離脱して構わん。
だが諸君らは、あえてここに集められた精鋭だ。他の艦に集められた者達より優れていると自負していい。
だからこそこの危険な任務を諸君らに託したい。
オラクルを、数多の命を守る為に。…それを、理解してくれ」

今まで、ずっと冷静であったレギアスの言葉に、ほんの僅かに熱が。

―あえてこのナウシズに「集められた」?
―俺達が精鋭だと…
―あのレギアスが、俺達を頼ってるって事か

一種の洗脳でもあるだろう。
士気高揚、状況打開。
目的をはっきりさせ、その支えを作る。
その為にレギアスは「群衆心理」を利用している。
生ける伝説と呼ばれるレギアスだからこそ、通る「言葉」。
リュードは冷静にそんな事を考えていた。
だが、事ここに及んでこれは必要な状態なのかもしれない。
レギアスには、この場にいる全ての「命を背負う覚悟」があるのだ。

士気は一気に高揚した。
ほぼ全員の表情が「戦い」を選び、その視線はレギアスに注がれる。
「精鋭」達の視線に、レギアスは頷いた。

「ありがとう、諸君。各員には後ほど、今回の任務で配属される小隊が通達される。
それに従い、配置についてくれ。
また他の大隊とは違い、ダークファルス襲撃が確認されてからの出撃になる。
先ほど言ったように、10日後という保証はない。念入りに準備し、待機していてくれ。以上だ」

レギアスが敬礼する。
と同時に、その場に居た全員が踵を合わせ、一糸乱れぬ敬礼を返した。



アークス達がそれぞれ、端末に配属される小隊の通達を受けてそれぞれ行動し始める中。
リュードには一向に「通達」が届かなかった。

「…?」

何故だろう。
人数が多いから、手間取っているのか。
これでは、動きようがない。
そう思っている内に、唐突に端末に反応が。
ホログラムモニタを展開し、内容を確認するが―そこに書かれていた内容は。

『その場に待機せよ』

…どういう事だ?

気付けば、既に殆どのアークスの姿が消えている。
ビジョンの前に居るのは、ほんの十名ほどになっていた。
その中に、レギアスが先ほどの場所から微動だにせず立っている。
そのキャストの機械的な目を閉じて、腕組みをしたまま。

自然に、リュードの足はレギアスへと向かった。

「サー・レギアス」

敬礼し、その名を呼ぶと。
ようやく、レギアスは目を開いた。

「…君か」
「待機命令を受けました。何か理由が?」
「君だけではないよ。他にも君と同じように残って貰っている者達がいる」

ふと背後に気配を感じて振り返ると。
その場に、己と同じようにレギアスを見て歩み寄ってきた者達が居た。

「…集まったようだな」

その数、リュードを含め12名。
全員の顔を見渡して、レギアスは頷いた。

「諸君らに残って貰ったのは他でもない。『攻撃部隊』として、私と共に『本体』へ向かって欲しいのだ」

ざわ、と総毛立つ。
何となく感じては居た。
無論、願ってもない人選。
あれと正面切って戦うチャンスを与えられたのだから。
紫のボディを持ち、背中に巨大なライフルを背負う女性キャストが、一歩前に出た。

「あの巨大なダークファルス・エルダーを叩くには少なすぎでは?」
「…奴には弱点があるのだよ」
「弱点、ですか?」

背中の白い羽―アクセサリだろうか―が目立つ、白く真っ直ぐな長髪の少女が首を傾げると。
レギアスは呼応するように頷いた。

「貴奴は、その巨体から『ファルスアーム』を生み出している。故に、アームを叩けば叩くだけその体が小さく成って行くのだ。今回貴奴が一時的に姿を消したのはそのせいもある」
「なーるほど、だから他の連中にそれを目一杯叩いてもらうって訳か」
「物理的に小さくしてから本体を叩く訳だな。楽と言えば楽な仕事だ」
「四十年前、我々六芒均衡はそうして貴奴を退けた。…最も、滅する事は叶わなかったがな…」

粗暴な口の聞き方をする、乱雑な黒髪の下から青い目が鋭く光る男が鼻で笑った。
同調するように、リュードより少し年上に見える白髪に無精髭を蓄えた男が冷静に答える。
自嘲するようなレギアスに、右目を隠すような黒髪を持つ、小柄な女性が不安を浮かべる。

「六芒均衡ですら封じるのが精一杯だったのですよね?それを私達に…出来るのでしょうか…」
「うまく行かせるのが俺らの仕事、だろ」
「やらない内からうまくいかないなんて言ってたら、何やってもうまくいかないっスよ?」

隣に居た白い短髪の女性キャストがまるで男のような口調と態度で笑い。
その更に隣に居た元気な女の子が、そのキャストボディの全身を使って踏ん張ってみせる。

「万が一、目標が『こちらを標的にしなかった場合』は?」

その一方で、赤い瞳を持つ青い髪の女性キャストが、まるで抑揚のない言葉を発した。
レギアスはその言葉に向き直り、僅かに笑った、ように見えた。

「…それは無いな。餌がある」
「えさ ? ごはん? だーくふぁるす ごはん?」

まるで場違いなたどたどしい言葉遣いの、真っ白い肌を持つ少女がそのオッドアイでレギアスを見つめる。
すぅ、とレギアスの指がとある人物を指す。

「その為に、君がいる」
「……!」

全員の視線が、その指先が示す者に注がれた。
それは、他ならぬ「リュード」を指していた。

「……成る程」

ふう、とリュードは小さく息をする。
当然といえば当然。
ダークファルスの「依代」という他の誰にも代わりの出来ないその存在。
自分がいると認識すれば、まず間違いなくダークファルスはこちらに向かってくるだろう。
レギアスはそれを知っていて、リュードを選んだ。

「リュード・アレル、だよねあんた。この所頭角を現してきた『新人』アークスだって聞いてるけど…餌だなんて言われて納得してるんだ?」

赤く長いくせ毛を揺らし、リュードを疑いの目で見据える女性に。
彼は悟りの笑みを浮かべる。

「事情があってね。…他に手段がないなら、俺は喜んで囮になるさ」
「この場に残されている時点で、只者ではないのは確かだろう?『新人』には到底見えぬしな」

顔は老人だがその体つきはリュードより遥かに大きい、白髪を後ろで束ねた爺がそう言ってニヤリと笑う。
リュードは改めて、その場に居た者達の顔を見た。
どの顔も一癖も二癖もある者ばかり。
だがその表情に共通して存在しているものがあった。

それは「影」。

何処かしらに、その場に居る全ての者から感じ取れたのだ。
全員が「特別な理由」を持ってこの場に存在している。
それだけは、分かった。

「私も戦闘に参加はする。が、アークス全体の指揮をするが故に『部隊の指揮』は取れん。戦闘時の部隊の判断は…」

レギアスは全員を今一度見据えてから、リュードに向き直った。

「リュード君に任せよう」
「…え!?」

寝耳に水。
呆然と、リュードはレギアスを見た。

「俺が?!」

全員の視線に、リュードは狼狽した。
一アークスとして、戦闘に没頭する事は覚悟していた。
だが、「リーダー」という重責を押し付けられる事になるとは思いもしていなかったのだ。
首を横に振り、眉間に皺が寄る。

「俺…いや自分には…無理です」
「何故かね?」
「今しがた、自分は囮だと、餌だと貴方自身が仰られたではないですか」
「だからこそだよ」

カシャリ、カシャリ、と硬い足音を立て。
レギアスはリュードの前に立つ。

「君が一番『死んでは困る』からだ」
「!」
「言ったろう、私は生き抜く事を選ぶ者を求める、とね」

死なない。
死んではならない。
必ず戻ると約束した。
帰る場所を、作ってきた。
血反吐を吐き、這いつくばってでも。

そんな覚悟をレギアスは知っているのだろうか。

「他の者も、異論はないな?」

レギアスが同意を求めるように全員を見ると。

「まあ、いいんじゃないかしら?」
「…レギアスさんが言うんです、間違いはないでしょう」
「だなー、俺としちゃ付いてく方が楽だし」
「全くだ」
「俺は暴れられりゃ何だっていいぜ?」
「私だって頑張るッス!」
「私も…出来るだけの事はしますから」
「命令には従います」
「ま、他の連中がそういうなら従うさ」
「だーくふぁるす たおす おしごと する」
「儂のようなロートルを引きずりだしたんだ、少しは若いもんにも頑張って貰わんとな」

それぞれが好き勝手にしゃべりまくる者達。
いわば、独立愚連隊のような。
だからこそ、選ばれた。
いや、選ばれたのではない。
自分の意志で、この場に立っているのだ。

覚悟を、決めよう。

リュードは一度、深く深呼吸をした。
それを見て、レギアスがリュードに正対する。

「リュード・アレル、君に部隊長を命ずる」
「…拝命します」
「戦場では私も君の部下だ。よろしく頼む」
「はい」

踵を合わせ、敬礼をする。
課せられた「枷」。
意地でも、生きねばならない。
ダークファルスを倒し、この場にいる者達全員と無事に戻らねばならない。

これほどまでに重い任務は、初めてだった。



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