PSO2二次創作小説「刻の爪痕」(12)

もう言い訳はすまい、いくらなんでも間が開きすぎ。
しばらくはこまめに更新する予定ですすみませんorz




この小説は、ファンタシースターオンライン2(PSO2)のストーリーを元にした二次創作小説です。
オリジナル要素も含まれますのでご注意ください。
ゲーム内「マターボード」を進められている方でなければ、ネタバレ状態になることをご承知下さい。

注意:初めての方はまずこちら↓
「Black Dream」~黒い夢~(~Ep1前まで)
「時の輪」(Ep1該当)

現在執筆中。
PSO2二次創作小説「刻の爪痕」(Ep2~3該当)
プロローグ
(1) (2) (3) (4) (5) (6) (7) (8) (9) (10)
(11)


(12)


帰還してからもずっと、テオドールの事が頭から離れなかった。
翌日になって、リュードは知らず「ウルク」に出会ったショップエリアの片隅へ足を向けた。

ルーサーに促されたとは言え、自分から虚空機関に協力するような行動をしたテオドール。
ウルクを守れなかった事に自暴自棄になり、自らの力の無さを嘆き、力を欲し、力に縋る。
その心が理解できるからこそ。
ウルクが無邪気にエリと話をしていたその場所で、リュードは立ち尽くした。

「…」

力にも色々ある。
物理的な腕力、戦闘力に限らず。
思考力、人材を束ねるカリスマや、組織が動く上で欠かせない資金力。
だが、それを持ってしてもどうしても抗えない「力」は存在する。
それは「権力」と呼ばれ、圧倒的な金や能力を持つものによって虐げられる存在が生まれる。
自分もそんな力に虐げられ続けて来た。
ふとルーサーの下卑た笑いが頭に浮かぶ。
あの男は、自分にとってもダーカーは敵だと言っていたが。

『シオンがルーサーに理解されたら、オラクルそのものが存続出来なくなる』

ルーサーは表向きはオラクルの、アークスの為に動いているように見える。
だが、奴は「虚空機関」の総長。
シャオの言葉を信じるならば「そうではない思考」が隠されていると見ていい。
自分を始め、数多くの非道な実験を繰り返した研究部―いやそれだけではない、アークスを、オラクルを裏で操ると言われている組織の頂に居る者なのだ。
何より、自分の直感があの男の危険性を訴える。

「…難しい顔をしていらっしゃいますね、リュード様」

その声にふと顔を上げると。
目の前に、薄い緑の髪の小柄な少女が立ち尽くしていた。

「君は…シーナ君、か」

名前を呼ばれて、影のある笑みを浮かべたメルフォンシーナが一歩、近寄る。

「身体はもう、大丈夫なのか」
「…はい、お蔭様でもうすっかり良くなりました」

【巨躯】(エルダー)復活時、付き従っていたゲッテムハルトに腹を抉られ、ダークファルスの「贄」として命を落としかけた少女。
長い事メディカルセンターで身柄を「拘束」されていた筈。
エルダー復活の首謀者の一人として六芒均衡の監視下に置かれて居たと聞いていたが、どうやら開放されたらしい。
少し辺りを見回して、いつもリュードに寄り添っている女性が居ない事に気付く。

「今日は、エリアルド様はいらっしゃらないのですね?」
「ああ、エコーの特訓に付き合わされてるよ」

そう言って、申し訳程度に笑ってみせるリュード。
実際の所、本当は自分も行く筈だった。
だが、エコーに八つ当たりしてしまいそうで、辞退したのだ。
こんな精神状態のまま、彼女に当たり散らしたら怪我をさせてしまうかも知れない。
とはいえ、身体を動かさないのも性に合わず。
結局、当たり障りのない任務を受けようとロビーに出てきた所だった。
そんなリュードの曇った表情に気付いたのか、メルフォンシーナは一度躊躇うように口を閉じるが。
意を決したようにリュードに正対した。

「…あの、お願いがあります」
「ん?」
「私と一緒に、任務へ行って貰えませんか」
「…え?」

思いがけない申し出に、意図が読めず答え倦ねて居たが。
メルフォンシーナはリュードを見て言葉を続けた。

「覚えておいでですか、あの時の武器…クラリッサを」
「…!」

忘れる筈も無い。
エルダー復活の「鍵」となった青白い杖。
己自身が直し、目の前の少女が奪っていったクラリッサ。
僅かに俯くメルフォンシーナの声色には、後悔と自責の念が。

「あれを、探したいのです。事件の首謀者としての容疑はまだ掛けられたままの私ですけれど、あれだけはどうしても自分で探したくて…許可を頂いたのです」
「探す?クラリッサを?」
「動けるようになってからずっと探しているのですが…見つからなくて。残されているのはあの『遺跡』ですが…私一人では…」

最後の言葉は消え入るようだった。
無理もない、少なからず想っていたであろうゲッテムハルトが【巨躯】になってしまったその場所なのだ。
そして、あの時にオベリスクに吸い込まれるようにして消えたクラリッサ。
どこへ行ったのか。
俯いたままのメルフォンシーナの声が震えた。

「あれは…危険なもの…私のような者が使ってはならないもの、そんな気がしました。持っているだけで心が引き裂かれて行くような、そんな力を感じました」
「…心が、引き裂かれる…?」
「自分が何をしているのか分からなくなって…闇よりも深い、そう、深遠の縁に立たされていたような…」

復元したクラリッサに、そんな力があったのだろうか。
それほどまでに大きな力が、あの武器には込められて居たのか。

「あれの本来の持ち主は、どうやってあんなものを扱っていたのか…。でも、あれはきっとその『正しい持ち主』へ返さないといけない。そんな気がするのです」

恐怖と、後悔と、渇望とが入り混じった表情でリュードに懇願する。
共依存していたゲッテムハルトがエルダーになり、縋る存在が居なくなった少女。
捨てられた子犬のように震えながら、それでも自分の罪を少しでも償いたいのだろう。
この少女もまた、過去に囚われている。
リュードは小さく息を吐き、頷いた。

「分かった、手伝おう」
「…ありがとうございます!」

深々と、頭を下げるメルフォンシーナ。
だが。

「一つだけ、約束してくれ」
「はい?」

思いがけない言葉に、頭を上げてリュードに向き直るメルフォンシーナだが。
リュードの表情に、僅かに身を引いた。

「俺はゲッテムハルトじゃない。自分の手足で、目で、頭で判断して動け」
「……!」

リュードはあくまで無表情に、そう言い放った。

「良いな?」
「…はい…」

項垂れ、小さな身体がますます小さく見えた。
酷なようだが、これは必要な事。
縋らせてはならない。
どんなに苦しく辛くとも、自分の足で立ち上がらねばならない。
今自分に縋らせたら、また同じ事の繰り返しになる。
彼女は一生、誰かに頼って生きる事になる。
誰かの顔色を伺う人生を歩む事になる。
それだけは、させたくなかった。





エリ以外の人物と組むのは久しぶりだ。
後であらぬ疑いをかけられてはたまらないので、エリには「メルフォンシーナとクラリッサを探しにナベリウスへ行く」と伝えてある。
以前一緒に戦った事があるので、メルフォンシーナが支援補助主体の「テクター」である事は知っていた。
その点では、自分が前衛に出る事に異論は無いとメルフォンシーナも了承している。
探索に出る時の専用回線を繋ぎ、キャンプシップへ。

程なくキャンプシップがナベリウスの宙域にゲートジャンプし、窓の外に見慣れた惑星が見えるようになる。
目指すは、ナベリウスの遺跡。
彼らにとっては因縁の場所。

「…あの時以来…ですね…」

窓に手をついて、眼下に広がる惑星を見るメルフォンシーナの声が震えた。

「怖いか?」
「…正直な所、怖いです。でも…」
「行かなきゃならない、か」

言いながら、キャンプシップの倉庫に転送されて来た武器を引き出すリュード。
背負われた巨大な弓なりの大剣のその禍々しさに、メルフォンシーナが息を呑む。

「そ…その武器は…!」
「…ああ。『奴』を斃す為のものだ。俺専用に調整してある。心配はない―むしろ、ここはこれでないと俺はまともに動けん」
「そう…ですか…」

ダーカーの「闇のフォトン」を吸収、浄化し、リュードの「力」にする大剣。
リュード自身の因子すらコントロールし、暴走する事無く最大の能力を発揮する事が出来る。
彼女は変異したゲッテムハルトの姿は見ていない筈だが、きっと拘束されている間に「自分の引き起こした事」として六芒の何れかから教えられているのだろう。
恐怖の混じった目で、リュードを見ている。
リュードはあえて、それを無視した。

「さあ、行くぞ、準備はいいか?」
「はい。いつでも」
『今日のオペレータは私、ブリギッタです。お二人共よろしくお願いします』
「ああ、頼んだ」

ヘッドセットからハキハキとした声が聞こえてくる。
それを確認して、テレプールを作動させた。
水面のような境界面に、緑の大地が揺らめいて見える。
二人はそれへ飛び込もうと歩き出し。
そして。

がくん、とキャンプシップに大きな衝撃が走った。

「――?!」
「きゃ…!?」

リュードは咄嗟に手すりを左手で捕まえて身体を支える。
メルフォンシーナは足元を掬われた形で、床に転がった。

「大丈夫か!?」
「…な、何…?」

メルフォンシーナが伏した床から顔を起こした直後、キャンプシップの非常赤色灯が灯った。
けたたましくアラートが鳴り響く。
ブリギッタの声が一気に緊張した。

『―緊急事態発生!キャンプシップ周囲に…ダーカーが出現しています!』
「何だと…!?」

咄嗟に窓を見る。
そこにひしめき合うように、赤黒い身体の大きな翼を持ったダーカーが張り付いていた。

「鳥型ダーカー…?!」
「どうして!?キャンプシップの周囲はフォトンフィールドで守られてる筈じゃ…!?」

そうしている間に、ブリギッタの声が一層緊張感を増す。

『…!?異常重力源を感知!キャンプシップが引き寄せられています!コントロール不能…!』
「どういう事だ!?」

その時、更に大きな衝撃がキャンプシップを襲った。
床に伏していたメルフォンシーナが簡単に宙に放り出され。
そのまま、作動した状態のままになっていたテレプールへと落ちていく。

「きゃぁあああああああ?!」
「―――!!!!!!」

リュードが咄嗟に彼女を助けようと手を伸ばして飛び出した時。
目の前にあったテレプールの水面に写っていたのは、赤黒い「何か」だった。
同時刻。
それを見ていた何者かが、口の端を釣り上げるように笑った事など、彼らが知る由も無く。





誰かが呼んでいる。
エリ?

「―様、リュ―…」

いや違う、これは。
生ぬるい風。
妙に湿った地面。

「リュード様!」

その瞬間、リュードはようやく意識を取り戻した。
仰向けに大の字に倒れていたらしい。
困惑した表情を浮かべるメルフォンシーナが自分を覗き込んでいた。

「…!」

自分の体を確認するように、動かす。
両手は動く。両足もある、多少の打ち身はあるものの、五体は無事のようだった。
ゆっくりと上半身を起こすと、メルフォンシーナがようやく安堵の表情を浮かべる。

「良かった…亡くなってしまわれたかと…」
「君は大丈夫なのか」
「はい、私は無傷です。ただ…」

押し黙るメルフォンシーナに、ふと辺りの気配が異常な事に改めて気付く。
目の前の光景。
リュードはようやく立ち上がり、辺りを見回して愕然となった。

「…何だ…これは…!?」

重力はある。
だが、視界全てが赤黒い何かに囲まれ、床のような部分には血のような水がそこかしこに溜り。
その場所全てが僅かに鳴動している。
見た事がない。
だがしかし、この気配はまるで。
ダーカーの巣とも言える程、闇の因子が渦巻いていた。
その手元にエルダーペインが無ければ、一瞬たりともまともでは居られないであろう濃度。
その証拠に、ペインが「浄化モード」になり、淡く輝き続けている。

「最近起きている事件に関係があるのではないでしょうか…」
「…何?」

メルフォンシーナは、震える身体を必死に抑えてリュードを見る。

「探索に出たまま、行方不明になるアークスが増えていると。それと同時に、行方不明になった筈のアークスが『アークスを襲ってくる』という話を」

そういえば、ネットワークニュースで見たような。
探索に出たまま行方不明になるアークスは少なくない。
それだけ、危険な任務であるからだ。
だから、その手のニュースは流し読みする癖が付いてしまっていた。

「…アークスが、アークスを襲う…?」
「そのアークスはダーカーのように闇の因子を纏い、倒されると『ダーカー因子の塊となって崩れた』そうです。まるでダーカーが生み出したクローンのようなので、ダーカークローンと上層部は呼んでいました…」
「ダーカークローン…だと…?」
「行方不明になったアークスは皆、おかしな場所へ転送された、という言葉を残しているそうです…」

ここが、そうだと言うのだろうか。
リュードはヘッドセットに手をやる。

「ブリギッタ、聞こえるか?」

乗ってきたはずのキャンプシップは何処にも無く。
スピーカーから聞こえてくるのはただのノイズだけ。
絶望的な状況であった。
メルフォンシーナが、震えを抑えきれずに蹲る。

「私達…このままここで朽ち果ててしまうんでしょうか…私達のクローンが、アークスを襲ってしまうんでしょうか…?」

リュードはエルダーペインの柄を握り、辺りを見回す。
そうして、笑った。

「馬鹿な事を。冗談じゃない、帰るぞ」

何処から湧き出るのだろうか、自信に満ちた笑みだった。
メルフォンシーナは驚いて、リュードへ向き直る。
不思議と、震えが止まった。

「…リュード様」
「俺は、帰らなきゃならん。エリが待ってるんだ。絶対にオラクルへ帰る」
「……」

ざわ、と鳥肌が立った。
エリでなくとも、この気配は嫌というほど分かる。
周りに、ダーカーが湧き始めたのだ。
それも、際限なく。
キチキチと嫌な音を立てて、彼らを取り囲み始める。
リュードはエルダーペインを構え直し。

「…行くぞ、援護を頼む!」
「は、はい!」

ダーカーの包囲網が閉じられる前に、ここを切り抜けねば。
考えるより早く、身体が動いた。
一番ダーカーが集まっている場所へ、リュードが真っ先に斬り込む。
一瞬にして、黒山になっていたダーカーが吹き飛んだ。
幸か不幸か、ダーカーの因子は無尽蔵にある。
今回ばかりは、エルダーペインに感謝した。ダーカーを斬れば斬っただけ、自分に力が漲るのが分かるのだ。
多少の傷など、あっという間に消えた。
その立ち回りに、メルフォンシーナは圧倒される。

「す…凄い…」

そのメルフォンシーナに、背後からいくつものダーカーが襲いかかった。

「…!!!」
「伏せろ!!!」

咄嗟にメルフォンシーナがしゃがみ込むと。
既の所で、ソニックアロウがダーカーの身体を真っ二つにした。
リュードは思わず怒号を上げる。

「油断するな!自分の身は自分で守れと言った筈だ!」
「は…はい!すみません!」
「行くぞ!!」
「はい!」

何処へ行くと言うのだろうか、自分でも分からなかった。
ただ、あの場に留まっていたのでは助かるものも助からない、それだけは分かっていたから。
今はただ、剣を振るう事に集中しよう。
リュードは鬼神の如く、目の前の敵を切り捨てて進んで行った。



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