PSO2二次創作小説「刻の爪痕」(16)

ヒャッハー!80開放!楽しいレベリング!!(←
すいません最近すっかりご無沙汰('、3_ヽ)_



この小説は、ファンタシースターオンライン2(PSO2)のストーリーを元にした二次創作小説です。
オリジナル要素も含まれますのでご注意ください。
ゲーム内「マターボード」を進められている方でなければ、ネタバレ状態になることをご承知下さい。

注意:初めての方はまずこちら↓
「Black Dream」~黒い夢~(~Ep1前まで)
「時の輪」(Ep1該当)

現在執筆中。
PSO2二次創作小説「刻の爪痕」(Ep2~3該当)
プロローグ
(1) (2) (3) (4) (5) (6) (7) (8) (9) (10)
(11) (12) (13) (14) (15)
 
 
 
(16)



淡い光の中に、気付いたら揺蕩っていた。
己の頭上に広がる水面。
ここは何処なのだろう、この上なく心が安らぐ。
ウォパルで見た青い海でも、いつも見る悪夢の血の海でもない。
まるで、命のゆりかごとでも言うような優しく温かい陽の光のような色。

ふと、遠くから声が聞こえた。



 ―リュード。
  聞こえているか、リュード。


ああ、聞こえる。


  ついに、この時が来た。
  過去を精算するべき時が。


過去の精算…?


  彼女…マトイを連れ、私の元へ。


マトイを?何処へ…?


 ―待っている。
  私と、私たちは、貴方達による精算を、待っている…。








いつもと同じ朝のようでいて、何かが違う。
レーションを口に放り込みながら、戦闘用スーツに着替え。
部屋を出ると、時間など言った覚えは無いのに申し合わせたようにエリが居た。

「リュード」
「エリ」
「…シオンさんが、来てくれって」
「…お前も見たのか?」

エリは切迫した表情で頷く。
夢ではなかった。
あれは、自分とエリだけに聞こえるシオンの言葉。

「マトイの…メディカルセンターへ行こう」
「ええ」

足早にメディカルセンターへ向かうと、入り口が何やら騒がしい。
よく見ると、ローラやフィリアに詰め寄るマトイが居た。

「お願い、行かせて…!」
「駄目です!まだ貴方は保護されている身分なんですよ?」
「わたし、行かなきゃならないの」
「理由を言って貰わなきゃ、私達も許可は出せないのよ?」
「…それは、言えないんだけど…」
「困ったわね…」

その時、マトイが二人に気付いた。

「リュード!エリアルド!」
「どうしたんだ」

リュードの返事にフィリアが振り返り、驚いた顔をする。

「お二人とも、どうしてここに?」
「ちょっと用事があって、マトイちゃんに会いに来たんだけど」
「ええ!?」

エリがそう答えると、ローラが腕組みをして訝しげに二人を見る。

「偶然なの?今しがた彼女がここを出るって言い出して困っていた所なの」

やはり。
一番の縁者であるマトイにも、シオンの声は届いていた。
だからこそ焦っているのだ。

「…無理なの?」
「身元不明の人間をアークスエリアにうろつかせるわけには行かないのはわかってるでしょ?」

エリとローラは旧知の仲とは言え、公私混同をしないローラ。
確かに、マトイの立場は「身元不明の一般人」。
本人の記憶が無いのも相まって、アークスにとってこれほど不審な存在はない。

「保護観察という名目なら連れ出すのも可能ですが…まだマトイさんの体調は良くないんです」
「…そうなのか」

懇願するように、マトイはリュードとエリ、そしてフィリアを見る。

「お願い、わたし、行かなきゃ…」

ローラはリュードとエリを見て、マトイへと視線を落とし。

「そうねぇ、誰か保護観察出来る人が居れば良いんだけど」

ちらりと、リュード達を見る。
エリがはた、とローラの意図に気付いた。
それからにっこりと笑い。

「つまり、私達がマトイちゃんの身を保証すれば良いのよね?」
「…エリアルドさん!?」
「まあ、それしか無いだろうな」
「リュードさんまで?!」

フィリアが困惑して、二人を見る。
ローラが溜息を付いて、端末を操作した。

「はいはい、じゃあマトイさんの保護観察者はお二人という事で良いわね?」

勝手に端末に情報を打ち込み出すローラに、フィリアは仰天した。

「ちょっとローラ!越権行為じゃないの?!」
「私が責任を取れば良いだけよ。フィリアは何も知らなかった、OK?」
「そんな事出来るわけ無いでしょう?!」
「じゃあ二人で責任取りましょ?私たちには止められなかったって言えばいいだけよ」
「もう、いつもローラはそうなんだから…」

ぶつぶつと、しぶしぶと。フィリアは不満を隠そうとせずにつぶやくが。
ローラは我関せずな表情のまま、端末を操作し続ける。
エリは眉をひそめた。

「ローラ、いいの?」
「どうせ止めたって駄目なんでしょ?何か大事な理由があるんだろうし。貴方達がここにこのタイミングで来たのもそういう事なんだろうし」
「ローラ…」

おろおろと、マトイがローラを見ている。
それに気付いて、ローラは手を止めずにマトイを見た。

「マトイさん、今回だけは特別に許可します」

その言葉を聞いて、マトイの表情が俄に明るくなった。

「え…じゃあ、わたし行ってもいいの?」
「ですがこの二人から絶対に離れないように。それだけは約束してください」
「はい!ありがとう!!」

頷いてから、エリへと両手を伸ばして。
飛びつくように、駆け寄って抱きついた。
決して笑顔ではなく、緊迫したその顔。

「エリアルド、行こう!」
「…ええ、行きましょ」

エリは小さくローラに頭を下げ、マトイと共に足早にメディカルセンターを後にする。
リュードはそれを目で追ってから、ローラに向き直った。

「…ありがとう、すまない」
「二人の事、お願いね」
「ああ」

頭を下げ、二人を追うように走り出すリュード。
それを見送って、ローラが溜息をついた。

「全く、来た時と同じように慌ただしい事」

フィリアも同じように溜息を付いたが、ふと三人の背中を見て。

「…ねえローラ」
「ん?」
「あの三人、本当に他人なの?」
「戸籍上の繋がりは無いはずよ?」
「何か、まるで…」

親子のようだ、という言葉をフィリアは飲み込んだ。
足早に去る三人の姿は確かに、部外者から見たらそう見えるかもしれない。
でも、そんな単純な関係で無い事は彼女も理解していた。




アークスシップ・ナウシズ総督であるヒース・グラハートは、突然の訪問者に呆然となった。

「貴方が『シャオ』だと?」
『そうだよ、今まで僕達を影から支えてくれてありがとう、ヒース』

エリの身体を使って、「シャオ」が答える。
リュードは僅かに眉を顰めて、そのやりとりを見ていた。
自分の背後に隠れるように、マトイがその様子を見ている。

ヒースは、今までずっとリュード達の行動を隠匿していた。
虚空機関へ改竄されたデータを送り。
彼らに向けられる監視の目を遠ざけ、見守り続けて来た。
少し前の「ダークファルス・エルダー掃討作戦」の時にナウシズが攻撃拠点となったのも、ヒースが総督だったからこそ。
それほどまでに、他のシップの総督達とは一線を画する存在。

『時間がない、ゲートを開いてくれ』
「…他ならぬ貴方の言葉ですが…彼らが行くのですか?」
『そう、彼らでなければルーサーは止められない。シオンが未来を託したこの3人で無ければ…』

ヒースは、僅かに躊躇する。
マザーシップへ向かう事が何を意味するのか、簡単に理解出来たからだ。

「大丈夫、リュードもエリアルドも、強いから」

両手を拳にして、リュードの後ろからマトイが力む。
マトイを見て、ヒースの顔が綻んだ。

「…そうだったな、君たちはいつも、そうして生き延びて来た…」

椅子から立ち上がり、背を向け。
暫く窓の外に広がるシップの市街地を見てから。
振り返り、じっとリュードを見据える。

「このオラクルという世界の重責を君達だけに押し付けるのが心苦しいが、私は待つ事しか出来ない」
「俺達に何が出来るのかは分かりませんが、必ず戻ると約束します。ご心配無きよう」

踵を合わせ、答えるリュード。
リュードの言葉を聞いて、ヒースは彼に歩み寄った。

「本当に、変わったな…リュード・アレル」
「…は…?」

その視線は他ならぬ、親のもの。
切望が、言葉に乗る。

「必ず生きて戻れ。それが私からの命令だ」
「…はい」

リュードはその思いを困惑しつつも受け止め、頷いた。
ヒースがワークデスク上の端末の操作を始めると。
程なく、普段は厳重に閉ざされている隣の部屋への扉が開いた。

「こちらへ」

彼らがそこに入ると、部屋の中央に「赤い転送装置」が設置されていた。

「これが…?」
『マザーシップへの直通ゲートだよ。各シップに1つしか設置されていない。総督の権限が無ければ起動しないようになってるんだ』
「マザーシップ…」

シャオの言葉に、リュードはふと思い抱く。
記憶に残るマザーシップは、闇そのものであった。
闇へ至る道が開きかけ、自分やエリが翻弄され、エリが命を落としたあの時間軸。
何故、そこへ行かなければならないのか。
そこにシオンが待つというのか。

「考えてるだけじゃ、進めないわ」
「そうだね、そこにシオンさんが待ってるんだもの」

エリがいつの間にか、元に戻っていた。
マトイと共に、己を見ている。
シャオという存在をその身に受け入れるようになって、彼女は益々強くなった気がする。
リュードは振り切るように頭を振り、頷いた。

「…行こう」
「ええ」
「うん」

装置の中央に3人が立ったのを確認して。
ヒースがテレパイプを起動させると、彼らの姿が瞬時に消えた。

「…戻ってこい。必ずだぞ」

転送装置が起動した証の赤い輪が、ヒースの瞳に延々と写り続ける。




そこは、何処なのか。
アークスの文明とも違う、青く重い色をした構造物。
そこかしこに、何処までも透き通った水が湛えられている場所。
一際広い空間のそこに、大きな「水の門」があった。
水面の壁に、不可思議な文様が刻まれている。
さながら「封印」のような―外界からの侵入を拒むようなその門の前。

「―とうとう、この時が来たね、シオン」

門を見据えて二人の男が佇んでいる。
彼らの背後に、十名程の研究者の出で立ちの者達が立っていた。

「総長、準備が整いました」
「そうかい、ご苦労だったね」

そう言って、門の一番近い場所に立つ男―ルーサーが笑った。
研究者たちのリーダーらしき男が、頭を振って頷く。

「いいえ、総長達の悲願の為ならばこの程度の事。…これで、私達もフォトナーになれるんですね」

待ちきれない、といった様子で顔が上気している。
その場に居る研究者達全員が、同じように期待に満ちた顔でルーサーを見ていた。
だが。

「ああ、そうだよ。フォトナーに…ね」

ルーサーがそう言って、研究者達へ手を伸ばすと。
研究者達の目から生気が消え、次々にその場に崩折れ、倒れていく。
笑顔のまま、研究者達は死んでいた。
何が起きたかも分からないままに。
それを見下し、歪んだ笑みを浮かべるルーサー。

「喜び給え、君たちの望むこの場所で一つになれたのだから」
「…お前も人が悪いな、最初からそのつもりだったんだろう?」

ルーサーの傍らで黙っていた存在が口を開く。

「人聞きの悪い。彼らはとても役に立ってくれたよ。だから『フォトナー』としてここで眠らせてやったんじゃないか」

舞台役者の主役のように大仰に両腕を広げて、わざとらしく説明するルーサーに。
白衣をキャストの身体に纏った金髪の男が、くつくつとくぐもった笑い声を立てた。
その後、ルーサーに正対する。

「お前はここで『全知』を手に入れる。私は【深遠なる闇】を手に入れる」
「そうとも。その為にここまで来たんだ。君も良くやってくれたよ」
「…長かった。幾千の年を費やしたのだろう。途方もない時間、私たちは待った」
「そうだな、長かった…」

二人して、その門を見上げる。
悠久の時を経て、その場にたどり着いた感慨を噛みしめるように。
だが、ふとルーサーは思い出したように、男を見る。

「もう一度確認しよう…君は、【深遠なる闇】の力を手に入れてどうするつもりなんだ?」
「何度この問答をしたか。私は変わらん。全てを無に戻す。己の体を失ってまで、今まで生き延びて来たのはその為。崩壊を見届けるのが、私の役目」
「あの君のおもちゃ達を深遠の依代にするんだったか。彼らもとても役に立ってくれたね、オスト君」

男の名は、パティス=オスト。
リュードを生み出したL計画の首謀者であり、研究部の裏側の全てを取り仕切ってきた存在。
研究部で行われていた非人道的な実験の類は全て、彼の指示とも言える。
ルーサーの腹心の友として、アークス、オラクルの裏側で暗躍して来た。
その名も、本当かどうかすら分からない。
誰も知らないその男の正体は、ルーサーと共に原初の時から生きて来た存在。
その旧友をもう一度見てルーサーは。

「まあ、そう言うと思っていたよ。長い付き合いだしね」
「全知を手に入れたお前ならば、その無から新しい世界を構築する事が可能、そう言っていたな」
「僕になら出来る…だが」
「何?」
「僕の不完全な演算でも、全てを無にする事など不可能だと結論が出た」

そう言って、口の端を引きつらせるように笑う。
途端に、オストのキャストボディが膝をついた。

「な…!?」
「君が身体を捨てた時に、全ては決まっていたのさ」

ゴミを見る目で、ルーサーはオストを見下し、もう一度笑う。
驚き、焦燥、怒り、全ての感情。
オストは自由にならなくなった己の身体を震わせ、ルーサーを見上げる。

「私を…裏切るのか…!」
「裏切り?君はとうの昔にフォトナーでは無くなっていた。その時点で僕を裏切っていたのは君だよ。僕はフォトナーのまま、生きて来た。自分自身をクローニングしてね」
「…貴様…!」
「これで、君も用済みだ。安心してこの『海』で眠るといい」
「わ…たしの…悲願を…終わ…」

ガシャン、と冷たい音と共にオストは倒れ伏した。
その場に生きているのはルーサー一人となり。

「君の行ってきた研究はとても役に立ったけれど、その悪趣味に付き合うのも疲れていてね。シオンまで壊されてしまっては困るんだよ」

ルーサーは引きつった笑みのまま、オストのキャストヘッドを踏み砕く。

「それにあの君のおもちゃは、今や害虫になってしまっているんだ。僕の目的にとって邪魔な害虫は枝葉ごと切り離すに限る。そう…もはや全て必要無いんだ」

そう言って、再び門へと歩み寄り。
もう一度、恍惚の表情でそれを見上げた。

「君と僕さえ居れば、それでいい。君もそう思うだろう?―シオン」




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