Black dream~黒い夢~(6)

本来ならば、リュードには「味方を傷つけた」という規律違反で謹慎処分が下される筈だったのだが、ダーカーの異常発生が続いていた為、免除された。
アフィンとリュードには二人での「ナベリウス」の継続調査の任が。
エリには一週間の休息期間が与えられた。
自室でリハビリをしているエリの手元に、ナベリウスでダーカー相手に奮闘する二人の様子が映し出されている。
逐一情報が入ってくるように、担当オペレータのブリギッタに頼み込んだのだ。

「相変わらずアフィン君は戦闘時に下がる癖があるわね」
『性格的に仕方ありませんよ、慎重って言ってあげてください』

まあ、仕方ないか。
エリは苦笑した。

「引き続き、モニターをお願いね。私は今から別の用件で通信できなくなるから」
『了解しました』

軽いランニングを終え、汗をシャワーで流しながら腹部の違和感を確かめる。
大きな絆創膏が張ってある患部にはもう殆ど違和感もない。

「大丈夫そうね」

部屋に戻り、濡れた髪を拭きながら。
ふとベッドの上に視線が止まる。
古びた衣装ケースの上に、いつもとは違う水色のロングドレスのような装備が出され。
その脇に、長く使い込まれた翼のような「法具」があった。
倉庫から装備品のリストに登録し、いつでも引き出せるようにする。

「これを装備する日が来るなんて思ってもみなかったわ、父さん…母さん」

懐かしいような、辛いような。
エリは複雑な笑みを浮かべて、そのスーツに触れる。

ずっとしまっておくつもりだった。
あの戦火が収まり、投棄される寸前のシップの自宅へと戻ったエリが見つけた、母親のもの。
そして、その法具は父親が愛用していたものだった。
エリの両親は生粋のフォース。
あの事件で命を落とすまで、ずっと「アークス」でフォースとして活動していたのだ。
エリのずば抜けたフォトンの力も、親譲りのもの。

己のクラスの変更と戦略OSの書き換えは既に昨日済ませた。
今の彼女のクラスは「フォース」。
「フォニュエール」として、彼女は今アークスに在籍している。

やっと、踏ん切りがついた。
怪我やチームの事も考えての、決心。
エコーにも、看護士のローラにも散々言われ続けてきた「クラスチェンジ」。
フォースになる事を決めたと伝えた時のローラの顔が、全てを物語っていた。
ここまで、自分を心配してくれていたのかと。
自分は思った以上に周りを見ていなかった。
そう思った時、今まで無駄に意地を張ってきた自分が恥ずかしくなった。

スーツを装備する前に、エリは何枚ものテクニックディスクを衣装ケースの中から取り出した。
それも、父親が保存していた遺品。
背中に当たる部分の「戦略OS」のディスク読み込み部に差し入れると、テクニック登録が行われた。
幾度目かの登録の後、最後の一枚にふと目が留まり。

「これ…今の私に使えるのかな」

しばらく考え込んでから、インストールを試みる。
問題なく、書き込まれていった。

「使う事にならなければいいけど、念のため、ね」

今までの「肌を露出してフォトン感応値を上げる」装備とは異なり、その防御力の無さを補うためにぴっちりと肌を覆うタイプのスーツに袖を通すと、驚くほど身体に馴染んだ。
今まで無意識に押さえ込まれていたフォトンが、整えられて自分の周りに纏わり付くような感蝕。
ローラが「フォースになったお祝いに」と用意してくれた、尖った耳のようなヘッドギアを装備する。
脳の負担を軽減してくれる、と言っていたっけ。
インターホンが鳴った。

『エリアルド、準備できた?』
「ええ、今行くわ」

部屋を出ると、そこに目を丸くしたエコーが居た。

「え…エリアルドよね?」
「他に誰が居るのよ」
「何なのそのフォトンレベル?!」

エコーには、エリがまるで「フォトンの結晶」のように見えたのだ。
ハンターの時とは雲泥の差。
驚きと共に、自分の目に狂いはなかったとエコーは笑った。

「実地訓練に私を呼び出すとは、流石はエリアルドだな」
「…先生!」

振り返ると、リュードより更に一回り年上に見える男性が立っていた。
エリは慌てて頭を下げる。

「すいませんオーザ先生。他にお願い出来る方がいらっしゃらなかったので…」
「構わんよ。他でもない教え子だ。たとえフォースになってもな」
「よろしくお願いします」

エリがアークスに成る為に、十年前に強引に師事を申し込んだのがオーザ。
当時は形振り構っていられなかった。
傷だらけになり、体力の無さを指摘されても。
それでも、オーザに付いてハンターとしての技量を学んだ。
アークスとしての生き方、考え方を教えてくれたのもオーザだった。
ゼノやエコーに出会ったのもその頃。
キャンプシップで、オーザが自分のパルチザンを装備する。

「さて、準備はいいか?」
「はい」

法具「ローザクレイン」。
引き出された法具をいとも容易く装備しているエリに、エコーが驚愕した。

「エリアルド、それ装備出来たの?」
「うん。おかしい?」
「当たり前でしょ?私だって法撃力が足りなくて無理なのに…なんか嫉妬しちゃうわ」
「でも立ち回りは絶対貴女の方が上手な筈だわ。色々教えてね、エコー先生」
「まあそうね。その辺は私が鍛えてあげるわ」

エコーがふふんと笑う。
だが、オーザが二人のやり取りを見て、エリの前に割り込むように立った。
その表情はあくまでも「師匠」のもの。

「遠足気分で居られたら困るぞ。いくら法撃力が高かろうが、お前のフォースとしてのレベルは最低なのだからな」
「は、はい」

厳しい目に、エリは背筋を正した。
オーザがキャンプシップの転送パネルを操作する。

「リリーパで一気に鍛える。ダーカーも出現していると聞いている。油断したら即死だ。覚悟していけ」
「はい!」

テレプールに、砂漠の星「リリーパ」の黄色い地表が映りこんでいた。
当然、覚悟の上だ。
そのくらい強引でなければ、私はフォースとして生きていけない。
迷わず、エリはテレプールへと飛び込んだ。



「って、ええええ!?」

翌日、チームの集合場所でアフィンが奇声を上げた。
エリのあまりの変貌に、呆然としている。
当然といえば当然だが。

「アフィン君だってフォースが欲しいって言っていたでしょ?」
「いやまあそうですけど…まさか先輩がフォースになるなんて俺…先輩のハンタースーツが好きだったのになぁ」
「何それ?」
「ななな何でもないですっ!!はいっ!」

幼いように見えてもそこは男子。
本音の出てしまったアフィンがばたばたと否定する様を、エリはくすくすと笑ってなだめた。
それから、リュードへと向き直る。

「これからは前衛は貴方一人よ。よく考えて動いて」
「判っている」
「アフィン君も、怖がらずもっと思い切り前に出て。私がちゃんとサポートするから」
「わ、わかりました」

少なからず、リュードも驚いていた。
俺の為、か?
そう言い掛けて彼は踏みとどまった。
まさかな。
だが何故か、彼女が矢面に立たなくなる事に安心している自分が居る。
先日ゼノに言われたからという訳では無い筈なのだが。
ヴォル・ドラゴン戦で、自分の記憶が飛ぶ寸前までやっていたような「剃刀の上を素足で歩くような戦い方」をして欲しくない。
そう思っていたからだ。

ロビーの脇にある、大型の遮蔽ガラスから見えるオラクルの船団。
「アークスシップ」の同型艦が視界を埋め尽くす。
エリは何気なく視線をそこへ移し。

「…え?」

目を疑った。
アフィンが思わずつられるように、窓の外へと視線を移す。

「どうしたんです?」
「何、あれ…」

何隻か離れている「アークスシップ」から、火柱が上がったように見えたのだ。
直後、けたたましくアラートが鳴り響く。
非常事態を示す赤色灯が、ロビーを一気に赤く染めた。
その場に居たアークス達がざわめく。

『コードD発令。コードD発令。アークスシップ4073において、ダーカーの出現を確認。アークスシップ4073において、ダーカーの出現を確認』

艦内に響き渡る「コードD=緊急最優先事項」の放送。
エリの全身に鳥肌が立った。
見間違いではなかった。
アークスシップにダーカー?!
アフィンの顔色が一気に青ざめた。

「嘘だろ…?これじゃまるで10年前の…!!」

そう、同じ。
十年前の事件。
思い出さない筈が無い。
エリが生まれ育ったシップがダーカーに襲われ、結果として「投棄」せざるを得なくなった事件。

『現在行動中のものを除く全てのミッションを凍結。4073におけるダーカー殲滅作戦が最優先される。スペースポートを4073への転送に限定。活動できるアークス各員は直ちに行動を開始せよ。繰り返す。現在行動中の…』

赤色灯が廻るロビーは混沌が渦巻いていた。
仲間同士で合流してポートへ飛び込むもの、単独で向かうもの。
その誰もが、この状態の「異常さ」に表情が硬くなっている。

「エリアルド!」
「おいおいおい、どうなってんだよこれ」
「二人とも」

エコーとゼノが、息を切らせて彼らの元へと走ってきた。

「俺たち4073へ向かうけど、お前らどうする?」

その時、一番最初に身を引いた者が居た。
アフィン。
真っ青な顔をして、首を振る。

「オレ…いやです。行きたくない」
「アフィン君?」
「何て言われても良いです、オレは行かない…あの人に会うまで…死にたくないんだ」

ガクガクと震え、パニックを起こしかけているようだった。
アフィンも、自分と同じように「人を探すため」にアークスになったと聞いた。
ひょっとすると彼も、10年前のあの事件に巻き込まれていた一人?
きっとこの状態に陥って、トラウマが蘇ってしまったのだろう。
エリはアフィンの前で膝を落とし、安心させるように肩へ手を置いた。

「大丈夫、あなたはここにいていいの」
「先輩…」

ぼろぼろと涙を流すアフィンを、エリはそっと抱きしめた。
震える体。
まるで、あの時の自分のよう。
ここにも、被害者が居た。
もうこれ以上、こんな人たちを増やすわけにはいかない。
複雑な表情で見守る仲間達の中、エリはアフィンの両肩を支えるように両手を添え、笑う。
あの時自分を励ましてくれた彼のように。

「あなたはここで、私達の帰りを待ってて」

アフィンは小さく、頷いた。
そのままアフィンを落ち着かせるようにベンチに座らせてから、エリは二人へと向き直る。

「ゼノ、エコー。私を連れて行って」
「オーケー」
「エリアルド、まだフォースに慣れてないのよ、大丈夫?」
「俺が守るから心配すんなよ」
「ちょっとゼノ、またそんな軽率な約束して」

昨日の強引なトレーニングで大まかな動きは把握した。
確かにまだまだ不安は残るが、そんな事を言っている場合ではない。
そこへ、リュードが割って入った。

「俺も行く、いや一緒に行かせてくれ」

エコーが驚いて向き直る。

「大丈夫なの?」
「またこないだみたいになるのは御免だぜ?」
「大丈夫だ」

ゼノがしばらく、リュードを見据えた。
そして、ニヤリと笑みを浮かべる。

「その言葉、信じるぜ?」

ゼノが笑ったのには理由がある。
頷いたリュードの表情が明らかに以前とは違う。
己の行動に「信念」を持っている表情。
どうやら、先日の事件がこの男の考え方を変えたらしい。
ゼノは頷いた。

「よし、行こう」

頷きあい、4人はスペースポートへと走る。

どうしても行かなければならない。
彼はそう感じていた。
リュードの脳裏に焼きついた断片。
自分の記憶の欠片が、行けと言っている気がする。
そこに行けば、何かを思い出すかもしれない。
それが自分を「絶望」に陥れる可能性があるとしても。
どんな「真実」が待っていても、もう逃げたくは無かった。



破壊された街。
ビル郡が崩れ落ち、到るところに火の手が上がっている。
少なからず、犠牲者の姿も見えた。

火柱が上がった箇所には、緊急シャッターが下りている。
辛うじて、シップの気密は保たれているようだったが。
ゼノとエコーは冷静に現状を確認していた。

「ひでぇな…」
「行きましょう、一人でも多く助けなきゃ」

記憶がフラッシュバックし、エリは一瞬躊躇したが。
それでも、気丈に走り始める。
恐怖を、責務が押し潰してくれた。
ダーカーを殲滅しつつ緊急用テレパイプを避難経路として設置、生存者を救出する。
それが任務。
側から、有象無象のダーカーがそこかしこに「湧き」はじめた。

「おいでなすったぞ」
「エリアルド、補助と回復をお願い。私は攻撃に専念するわ。数が多くなったら私も補助に廻るけど」
「了解、気をつけて」
「さあ行くぜ、リュードの旦那」
「ああ」

ゼノとリュードが、「道」を切り開き。
エコーが集団で纏わり付こうとするダーカーを纏めて殲滅する。
エリは必死に、回復と補助に集中した。
たとえ一人ずつでもと、少しでも傷を負った仲間は直ぐに回復した。
幸い「タリス」と呼ばれる投擲法具の効果で、多少離れた場所からでも補助が出来る。
しかし、どうしてもエリはその行動故に遅れがちになった。
その間に割り込むようにして、大型のダーカーが突如出現する。
彼女を捕らえようと鎌首をもたげ、一気に接近してきた。

「!」

覚えたばかりの回避行動(ミラージュエスケープ)を取ろうとして。
直後にその赤いコアごと、ダーカーを真っ二つに切り裂いた者が居る。
崩れ落ちるダーカーをそのままギガッシュで弾き飛ばし、リュードが叫んだ。

「無事か?!」
「え、ええ。ありがとう」
「殿(しんがり)は俺に任せてくれ、君はエコー君の所へ」
「了解」

そのまま、周りのダーカーを一掃してエリの背へと廻る。
エリはすれ違いざまに、回復を施した。

「ありがとう、助かる!」
「気をつけて」

戦うリュードの姿。
少なからず、この光景が彼にとっては「何かしらの影響」を与えている筈だが。
それ以上の「決意」があるのだろうか、剣筋に「迷い」が無くなっていた。
これなら、大丈夫。
振り返る事もせず、エリは走る。

幸い、大きな建物の中に取り残されていた人達は無事な事が多かった。
対処が早かったお陰もあるのだろう。
テレパイプを配置し、次々に別のシップへと避難させる。
子供、大人、老人、女性男性。
怪我をした人々に「レスタ」をかけると。
種々雑多の種族の人々が、エリに感謝の言葉を連ねた。

「ありがとう」

混乱の中、何となくエリは何故エコーが「フォース」に拘るかが判った気がした。
この言葉が聞きたいのかもしれない。
先刻リュードに感謝の言葉をかけられて、嬉しかった自分を知っている。
今目の前に居る人たちからのその言葉が一層エリを強くする。
まだ、沢山の人が助けを求めているはずだ。
エリは仲間と共に、戦場を駆け抜けた。
ふと、戦火が一時的に収まる。

「皆無事か?」

息を切らせながらもそう言ったリュードに、エコーが目を丸くした。

「驚いた、他人を気遣えるくらいには余裕が出てきたのね」
「おいおい、この非常時になんだよ。そんな言い方ねぇだろ?」
「それはそうだけど」
「いいさ、俺はそれだけの事をして来たんだ」

ゼノがエコーを嗜めると、リュードが自嘲気味に笑った。
自覚は無いようだが、間違いなく自分達に打ち解けてきている。
まあ、そのきっかけを作ったのは間違いなく彼女だろうな。
ゼノがそんな事を思った時、チーム全体を「癒しの風」が取巻いた。

「うお?!」

ゼノが驚くのも無理は無い。
少なからず消耗していたゼノやリュードの体力が、一気に回復したのだ。
ふう、と肩を下ろし、エリが構えを解いた。

「大丈夫?みんな」
「すっげぇな、エコーなんかとは比較になんねぇ回復力だ」
「なんかとは何よ」

その場で口喧嘩を始めようとする二人に、エリは苦笑する。

「何を言ってるのよ、今ので私のフォトンは一時的にガス欠状態だわ」
「あれ、そうなの?」
「こういうところは、全然エコーには適わないの。もっと上手な立ち回りを覚えないと」

実際、エコーは常に力の配分を考えながら戦っている。
自分はまだ、テクニックを唱える事で精一杯。
まだまだ、覚える事が沢山ある。

その時不意に、エリは背後に気配を感じて振り返った。

何?
誰かが、自分を呼んでいる…?

彼女は「フォース」になって気付いた事があった。
ダーカーの接近は前以上に感知する事が多くなったが、それ以上に。
何となく「力の流れ」を感じるようになっていたのだ。

ふと、視界の隅を何かが横切った。

…?!

見覚えのある姿。
ヒト?
白と赤の服を着た少女。
銀髪をなびかせて、瓦礫の間を駆け抜けていく。

「え…?マトイちゃん?」
「エリアルド?」

エコーの声も上の空に、じっとその少女の姿が消えるまで目で追っていた。
以前、リュードとアフィンが助けたと言っていた少女。
まさか、こんな所に居るはずは。
エリは通信機に手をやり、チャンネルをセットした。

「アークスシップ7521メディカルセンター、聞こえる?」
『こちらAS7521メディカルセンター、フィリアです。…エリアルドさんですか?』

慌てた様子のフィリアの声が、通信機から伝わってきた。

「ねえ、そこにマトイちゃんは居る?」
『それが…コードDが発令されてから姿が見えないんです。今みんなで探してるんですが…何故それを?』

まさかとは思ったが。
あの姿を見間違える事は無い。
何故?

「マトイちゃんだわ」
「え?」
「誰だ?」

ゼノとエコーが訝しげに見ている後ろで、リュードが驚きの表情を見せていた。

「あの子が居るのか?」
「ええ、さっき見かけたの。まさかこんな所にいるはずないと思って確認したんだけど…」

彼女の消えた方角に、巨大なドーム型の施設があった。
スフィア・アリーナ。
本来は、スポーツ競技が行われる筈の場所。

その瞬間、エリは何か「得体の知れない恐怖」を感じた。
大きな、何か大きな「力」を持つものがそこに居る。
そしてその力は、遙か彼方からの「道」を通ってその場所にある。
それが何故か「自分を呼んでいる」気がする。
何故、そんな事を感じてしまうのか。

「行くのか?」

気付くと、リュードが隣に立っていた。
同じようにドームを見据えているその表情の厳しさは、今までとは遥かに違うものだった。
ドームへ視線を戻し、エリは呟いた。

「ええ、行くわ」
「なら俺も行こう。行かなきゃならない、そんな気がする」

彼の記憶に関わる「何か」も、そこにあるのか。
ならば尚更、行かなければ。
そう決めた途端に、アリーナ前の広場にダーカーが沸き始める。
ぎり、と手にしたローザクレインを握り締め、エリは呟いた。

「ゼノ、エコー、サポートをお願い。私達はあそこへ行くわ」
「いや…それはいいけど、二人ともどうしたんだ?」

余りの決意の表情に、ゼノとエコーは呆然と二人を見る。
エリは首を横に振って、エコーを見据えた。

「お願い、今は聞かないで」

微動だにしないエリの決意。
エコーはその気迫に押され、頷いた。

「わかったわ」
「しょーがねぇな」

徐に、ゼノは「クレイモア」を抜き。
それをリュードの目の前の地面に突き刺した。

「持ってけよ」
「…え?」

突然の行動に、リュードは驚愕する。
自分の武器を他者に譲るこの意味を、ゼノが知らない筈はない。

「こいつなら、並みのダーカーなら簡単に殲滅出来る。あんたなら使いこなせるだろう」
「いや、しかし」

言いかけて、リュードは押し黙った。

お前が、エリアルドを守れ。

ゼノの目がそう言っていた。
リュードは黙し、己のギガッシュをゼノに渡す。
地に立つクレイモアを抜き、それを己の背へ。

「よーっし!いっちょ暴れるぜ!!!」

言うや否や、ダーカーの群れの中に飛び込んだ。
エコーも、ふっと笑みを残してゼノに続く。

ありがとう、二人とも。

黙って私達の我侭を聞いてくれたゼノとエコーには感謝してもし切れない。
エリは心の中で呟いた。
これから先は、きっと今までとは比較にならない「死地」。
後戻りは出来ないかもしれない。
それでも、行くしかないのだとはっきり自覚している。
ローザクレインを構え、エリは叫んだ。

「行くわよ!」
「任せろ!」

弾かれたように、リュードが駆け出す。
目指すは、スフィアアリーナ。
全ては、そこにある。




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