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PSO2二次創作小説「時の輪」 プロローグ

この小説は、ファンタシースターオンライン2(PSO2)のストーリーを元にした二次創作小説です。
オリジナル要素も含まれますのでご注意ください。
ゲーム内「マターボード」をある程度進められている方でなければ、ネタバレ状態になりうることをご承知下さい。

初めての方はまず

PSO2二次創作小説「Black Dream」~黒い夢~

をお読みになる事をお勧めします。
一日の始まり。
勿論、人工的なものではある。
超巨大な移民船団であるオラクルの時間はアークスシップ毎に違い、それぞれ規定の法則に従って人工太陽が「街」を照らす。
例外なく彼女の住む部屋にもその光が届き、カーテンの隙間から彼女の頬を撫でる。
眩しさにようやく目が覚めたらしい。まだ夢うつつの表情のまま起き上がる。
長い銀髪を手で一度まとめ、ベッドに座ったまま伸びをした。

「ふーぁ...」

今日もまた、ダーカーを殲滅する一日が始まる。
最近はそれ以外の任務を受けることが殆ど無く、一日がある意味単調に過ぎていた。

いけないわね、慣れてしまうのは。

そうして暫く身体を慣らすように動かし、ふと枕元にある時計に目が行き。
その表情が一変した。

「...!!!!!」

今日は、何日?

何度も日付を確認する。
慌てて部屋に備え付けられたワークデスクの小型ビジフォンへと足早に歩み寄り、別の部屋の6桁の呼出番号を押す。
呼び出し音が続くが、なかなか相手が出ない。
ようやく、コールが止んで相手の声がした。

『...はい』

明らかに寝起きの男性の声。
彼女はため息をついて、苦笑した。

「おはよう。やっと起きたみたいね、リュード」
『エリか、おはよう...どうした?』
「お願い、日付を見て。それから『マターボード』を確認して」
『....日付...何を...』

切迫したエリの言葉に、通信機の向こう側に居るリュードが突然沈黙した。
暫くの「間」の後、その声は先程までとはまるで違うものになった。

『10分後にいつもの場所で』
「分かったわ」

事態の重大さに気づけば、彼は行動が早い。
ビジフォンのスイッチを切る。
エリアルド・ライラ、エリは手早く「ネイバークォーツ」と愛刀「クシャネビュラ」を身につけ、部屋を出た。
行き先はアークスシップ内ショップエリアの奥。
生活動線としては殆ど人が寄り付かないような、奥まった場所にある小さなグリーンスペース。




ここは「あの時」から二人の待ち合わせ場所になった。
植え込みの小さな植物へ歩み寄り、それを見つめる。

間違いなく、あの記憶はある。
ここで、彼の記憶が戻った事を喜んだ。
...なのに。

「すまん、待たせた」

その声に、エリは振り返った。
自分の背程もある大剣を背負った、リュード・アレルが立っていた。

「私も今来たのよ」
「...記憶は、あるんだな?」

無言で頷くエリを見るリュードの表情は堅い。
彼の右腕にある「マターボード」が異質な輝きを見せていた。

「回帰が起きたか...」
「そうね。しかも、びっくりするくらい遡っているわ。『今日』が何の日か知ってる?」
「いや、そこまでは確認しなかった」

エリは手元の端末から、自分自身のスケジューラを立ち上げた。

「アークス採用最終試験当日、よ」
「...何だって?」
「つまり貴方はまだ『アークス候補生』。これからアフィン君と一緒にナベリウスへ行って、試験を受けるの」

呆然と、エリの言葉を聞いているリュード。
それはつまり、彼らが経験してきたこと「全て」が「無かった事」「これから起こりうる未来の可能性の一つ」でしかなくなっているのだ。

「何て事だ...俺達のして来た事全部が、無駄になったのか?」

一時的とはいえ「闇の意思」を封印する事が出来たはずなのに。
その感情がひしひしと伝わって来る。

この二人は「時間の理(ことわり)」の中には生きていない。
「マターボード」と呼ばれる特殊な装置によって「理の外」を生きる事になってしまった。
いくつにも枝分かれした「可能性の未来」を辿り、時間をさかのぼり、別の「時間軸」へと誘うもの。
その装置の影響で、「時間を遡った」のだ。
彼らの「経験の記憶」はそのままに。

その日は、2月20日。

言い換えると、「全ての始まりの日」
そこまで遡るとは、マターボードを託された本人であるリュードですら思いもしなかった。
しかし。
エリはゆっくりと顔を横に振った。

「...いいえ、私は逆だと思うの」
「逆...?」
「あの記憶があるからこそ、私達はこれから起こりうる事を予測できる。そしてそれは、私達が知っている『事象』とは違うはず」

リュードはエリの目を見据え、その問いを口にした。

「異常発生したダーカーから、あの子(マトイ)を救うという事以外の『何か』が起きると...君は言うのか?」
「分からない...けど、そうとしか思えないのよ。私達の命をかけた『闇との戦闘』をしても変える事の出来なかった未来があったとしたら。その為に、わざわざ『今日』まで遡らせたとしたら...」

何故、マターボードが時を遡らせるのか。
エリはずっとその事を考えていた。
きっとそれは「間違い」を正したいが為。最悪の結末から逃れる為。
ずっと考えこむようなエリを見つめていたリュードだったが、ふと笑みが零れた。

「まあ、一番違うのは『君』だろうな」
「え?」
「俺はそういう事を考えるのは苦手だ。考えてしまうと動けなくなる」

自嘲するように笑ってから、リュードは己の背中にある巨大な剣の柄へと視線を投げた。

「それに、俺に出来るのは戦う事だけだ。頼りにしていると言っただろう?」
「酷いわね、全部私に考えさせるの?」
「あ、いやそういう意味じゃ...そうなるのか?」

意地悪く笑って詰め寄ると、リュードは慌てて否定しようとして、真面目に考え込んでしまう。
ここまで馬鹿正直な人はそうそう居ないわね。
ふふ、とエリは笑った。

たとえ時間が引き戻されようと、自分の中にある記憶と「想い」は確かだった。
そしてその記憶は他の誰でもない、目の前に居る一人の男性(ひと)とだけ共有している。
その事が、ともすれば否定的かつ悲観的に傾く彼女の心を引き止めていた。
今までそれをたった一人で乗り越えてきたリュードの事を考えれば、自分の悩みなどたかが知れている。
何より、頼られている事が嬉しい。

「いいわ、私がその辺は引き受ける。貴方は貴方の出来る事をして」
「...ありがとう、助かる」

その時だった。

「......?!」

突然、リュードが弾かれたように振り返った。
勿論誰も、何もその場にはない。
あたりを伺うように探すように見回す彼を、エリは訝しげに見た。

「どうしたの?」
「聞こえなかったのか?」
「え?」
「.....いや、いい」
「そう...?」

エリには、それ以上聞く事が出来なかった。
その表情が、彼女を黙らせる。
彼は今一歩の所で、他人を拒絶する。
例えそれが「同じ時を歩むと決めた相手」であっても。

しかしそれには、理由があった。

『何処だ...』

リュードに「だけ」聞こえたその声は「殺気の塊」だったからだ。

一体、何が起きようとしている?

言い知れぬ不穏な空気に、リュードはただ虚空を見上げていた。




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Comment

梅傾奇

宣言通り(?)読んだよー
黒い夢を乗り越えて、ひとまず安心と思ったら遂に!
旦那が感じた気配とは一体…

あと2人の集合場所ってエンゲキブの集合場所だよね?
ここでも出てきて思わずニヤッとしましたよっとw

相変わらず続きが楽しみ!
ぼつぼつとでいいのでまた書いてくださいな♪
  • URL
  • 2012/07/26 03:27

C-ma

はい、時間軸的に「黒い夢」が無かったことにされましたw
だってあの展開じゃそれ以外方法がなかったんだもんよー(汗)
かなり悩んだんですけど、やるならとすっぱり切りました。
マターボードがあるお陰で、それができたと言うかなんというか。

今回は、基本的に本編に沿って進んでいくので「聞こえた声」はお察し。
ネタバレ全開かつオリジナル要素も入っていきます。


・・・梅さんなら「あの場所」に気づくと思ってたwww
気長にやっていくので、またよろしくお願いします。
  • URL
  • 2012/07/26 09:08

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