PSO2二次創作小説「時の輪」(1)

この小説は、ファンタシースターオンライン2(PSO2)のストーリーを元にした二次創作小説です。
オリジナル要素も含まれますのでご注意ください。
ゲーム内「マターボード」をある程度進められている方でなければ、ネタバレ状態になりうることをご承知下さい。

初めての方はまず

PSO2二次創作小説「Black Dream」~黒い夢~

をお読みになる事をお勧めします。

PSO2二次創作小説「時の輪」

「プロローグ」


↓PSO2二次創作小説「時の輪」(1)
いつもこうだ。
幾度と無く繰り返される、同じ時。
もう、何度目かすらよく思い出せない。
回帰が起きた直後は実感が沸かないが、全く同じ状況でありながら「違う」と感じるのは何故か。
それは他でもなく、自分の中に蓄積される「記憶」があるからだ。

「...棒、相棒!」

我に返ると、アフィンが目の前で、その大きな目を何度も見開いている。

「あ、ああ」
「どうしたんだよ、ぼーっとして?」
「いや、何でもない」

「何も知らない」アフィンは、暫くリュードの行動を怪訝そうに見た後ににやりと笑みを浮かべた。

「ははぁ、解ったぜ?緊張してるんだろ?修了任務だもんなぁ。わかるぜ、すっげぇわかる!」

当の本人が一番緊張しているのだろう。
それを誤魔化すように、リュードへその矛先を向けているようだ。
慌てて、自分に言い聞かせるように頷くアフィンが居る。

「気楽に、てのは無理かもだけどさ、力を合わせて頑張ろうぜ?」
「...そうだな」

緊張した面持ちのアフィンに、リュードは思わず笑みが零れた。
そして、そんな自分自身に驚いた。

目の前に居る少年と、幾度同じ会話をしただろう。
初めは翻弄され、動揺し、ひた隠しにして歩んでいた。

誰も自分を知らない。
誰も分からない。
自分だけが、相手を知っている。

己を「利用」しているであろう「シオン」と、その「主達」以外、己が時を渡り歩いている事を知らない。
その「彼ら」ですら、当事者ではないのだ。
喩えようもない孤独が、支配する世界。
記憶を亡くしていた事がそれに拍車をかけ、心が崩れていく行く自分を自覚しながら。
奥底にある「罪の意識」が、贖罪としてそれを受け入れていた。
今までは。

「大丈夫よ、私もサポートで付いているから」

アフィンの後ろにあるテレパイプから、エリが現れた。
慌ててアフィンが振り返り、頭を下げる。

「エリ先輩、よろしくお願いしまっす!」
「よろしく頼む」
「こちらこそ、頼りないかもしれないけど頑張るわね」

穏やかな笑顔で、エリは頷いた。
至って自然に、エリは二人と接している。

本来ならば、サポートとして正規アークスが付く事はありえない。
しかしそれを可能にしたのは「総督」の力があったからこそ。

「回帰」が起こった後、以前の記憶の通りにリュードとエリは個別に総督室へと「呼び出され」た。
その場で、総督に事情を説明したのだ。
総督は数少ない「マターボード」の存在を知る「こちら側」の人物。
全てを打ち明ける訳には行かなかったが、彼らの言葉に驚き、それでもそれを受け入れてくれた。
これから起こるであろう「事象」の為の尽力を確約してくれたのだ。

だが、それは危険な事ではある。
彼らが「平行時間軸」を渡り歩いていることを「奴ら」に知られてはならない。
勿論、リュードとエリが「面識がある」事を、リュードの記憶が戻っている事を、アフィンにすら知られる訳にはいかないのだ。

『....助けて...』

唐突に、リュードの脳を突き抜けるように響く声。
それは深い森の奥から。
以前も聞いた、これは「マトイ」の声。

「おい、相棒?!ちょっと待てって!」

振り返りもせず歩き出した自分を、アフィンが追ってくるのも同じ。
しかし、同じようにエリが追おうとした時、それは起きた。
リュードの視界が、まるでジャミングされたように「乱れる」。

『.....何処だ..!!!』

...この声だ。

気づくと、エリが自分を見ていた。
また、聞こえたの?
彼女の目がそう言っていた。
男とも女とも取れない機械を通したような声でありながら、殺気立った響き。
アークスシップで聞いたものと同じ。
アフィンに気付かれないように僅かに頷いて彼は歩き出す。



「今までと同じように」ウーダンを倒し、森を進み。
そして。
オペレータの通信とともに、ダーカーが出現した。
ナベリウスには居なかったはずだと、アフィンが叫ぶ。

『助けて!!』

さっきよりも更に切迫したマトイの声。
そう、これも「記憶」にある。
しかし、目の前のダーカーを何とかしなければマトイすら助ける事は出来ない。
背中の大剣の柄を握り、リュードの視線がダーカーに固定された。

「片付けるぞ!」
「わ、わかったよ!やるしかねぇ!」
「フォローするわ、二人共気をつけて!」

フォトンの輝きが、ダーカーの残滓を尽く打ち消す。
アークスであり科学者である「アキ」の言葉が、脳裏をかすめた。

ダーカーを殲滅出来るのは、フォトンを操る事が出来るアークスだけ。

何度ここで、際限なく湧き続けるダーカーと戦ったのだろうか。
そう、何故。
いやむしろ「何故今までダーカーが居なかったのか?」
何故アークスだけが、ダーカーを駆逐出来るのか。
必要のない思考は判断を鈍らせる。
今は、そんな事を考えている場合ではない。

「....もう、出てこないよな?」

ぜえぜえと肩で息をして、アフィンが呟いた。
あたりに散らばったダガンの残骸が、空気中のフォトンによって徐々に浄化されていく。

「大丈夫みたいね。気配も消えたわ」
「...相棒、やたらあっちの方気にしてたけどどうしたんだよ?」

訝しげに自分を見て首を傾げるアフィンを尻目に、マトイの声のした方へ歩みだそうとして。

『何処に居る!!!!!』

さらにはっきりと、聞こえた。
反射的に、リュードは振り返る。
その行動に、アフィンやエリは同じようにリュードの視線の先を見。

「....何..これ」
「何だか、やばい感じがするぞ...???」

それは、声が聞こえなかった筈のアフィンやエリにすら感じ取れるほどの「殺意」。
マトイの居る筈である場所とは正反対の方向からそれは溢れ出ている。
彼女も救わなければならない。
だが、これは。
エリがじっと殺気の流れ出る方角を見据えたまま、頷いた。

「これは、確かめなきゃいけないわね」
「そうだな、行こう」
「え、え?...い、行くなら付いてくけどよ...?」

導かれるように、誘われるように。
その「方角」へ歩みを進め、一見袋小路になったような場所へ辿り着く。

それは、そこにいた。

「...おい...なんだよアイツ..気味悪ぃ...」

アフィンが思わず身構えながら呟く。
黒ずくめの服を身に纏った、大剣を背負った「人」。
アフィンが震えた声を上げるのも無理は無い。

これは、人なの?

エリの首筋にチリチリとした特有の「感覚」が走っている。
それは「ダーカー」を察知した時のものである筈なのに。
何故、目の前の「ヒト」からそれを感じるのか。
黒い仮面が、尚更不気味な気配を増長している。

『....貴様..は』

その言葉は、明確に「リュード」を指していた。
一斉に、リュードへ視線が注がれる。

「相棒..お前、知り合い..って感じじゃないよな」

リュードの眼は、あくまでもそれを「危険人物」として認識していた。
間違いない、この「仮面」が声の主。
誰だ?
なんだ?
何故「俺」に?

あまりの殺気に、自然に手が大剣の柄へと伸びる。
その動作に気づくや否や、その「仮面」の殺意が爆発した。

『....殺す!!!』

剣を抜き、一気に間合いを詰める「仮面」。
それはまるで、意志を持った刃そのもの。

...疾い!!

防御の体勢を取るのが精一杯だった。



鈍い金属音。
だがそれは、フォトンの刃がかち合う音ではなく。

「?!」

リュードの前に、仮面を遮るように大きな影があった。
仮面の剣を幾度もその「拳」で弾く。
巨大な「ナックル」を装備した、男。
黒いコートに、灰色の髪を逆立て。

「たまには任務に来てみるモンだなぁ?おっもしれぇ事になってるじゃねえか...うまそうな獲物がこんなに居やがる...」

くっくくく、と曇った笑い声。
挑発的に呟くその声には「狂喜」が混在する。

「おいシーナ!!こいつらは何モンだ?何処のどいつだ?...さっさと調べろ!」
「...はい」

幾度も「仮面」の刃をいなしながら叫ぶその先に、小柄な少女が居た。

いつの間に?

エリですら、その気配に気付かなかった。
手元の端末を開き、検索を開始するその少女に明確な「表情」は見られない。
しかし、僅かにその顔に「焦り」が浮かぶ。

「あ、あの...ゲッテムハルト様」
「あん?」
「そちらの方の情報...何処にもありません」
「...何?」

ゲッテムハルトと呼ばれた大柄な男が「仮面」から視線を離した隙に、仮面はその刃でナックルを弾き飛ばし。
姿を消した。
ゲッテムハルトは舌打ちをし、ナックルを格納する。

「ち、逃げやがった。楽しめそうだったってのによ」
「...何なのよ、貴方は?」
「あぁ?」

元来の性格と、その異常な状況の連続にエリが我慢し切れず、前に立つ。

「さっきの黒尽くめといい、貴方といい、何なの!」

思いがけない反抗に、一瞬ゲッテムハルトは目を丸くする。
が、すぐに眉間の傷を歪ませてエリを見据え、笑った。

「今はネェちゃんに用はねえんだよ....どけ!」
「冗談じゃないわ、馬鹿にしないで。私はこの二人のサポートを任されてるのよ?」
「...気の強いネェちゃんだなぁ?嫌いじゃないぜ?けどな、怪我する前にどけって言ってんだよ!!」
「いいえ、どかないわ」

リュードより遥かに身体の大きい相手に、怯む事すらしないエリだが。
そのエリをナックルをちらつかせて脅す。
決して言葉だけではないだろう。
エリは戦うことすら覚悟して、目の前の大柄な男を睨む。

「もういい、やめてくれ」

その一触即発の状況を遮ったのは。

「あ?」
「...相棒?」

エリを押しのけるように、リュードが立った。
アフィンが、ゲッテムハルトとリュードの顔を交互に見ている。

「お前...?」
「...変わってないな」

リュードの顔を見据えるゲッテムハルトの表情がつり上がった。

「おいおい、マジかよ?...シーナぁ!!」
「はい。...そちらの女性がエリアルド様、その隣がアフィン様、そして、リュード様です」

端末を操作したシーナという少女が、アークスの登録情報を読み上げた。
その報告に、ゲッテムハルトの顔が歪む。

「くくっ...くっはははははははは!!!」

その笑い方に、エリは思わず一歩後ずさった。
狂気の塊。
好戦的というにはあまりに狂っているとしか思えないような言動。
しかし、この反応は間違いない。
ゲッテムハルトと言うこの男は、リュードを知っている。
そして、他ならぬリュードも。

「...久しぶりだな、ゲッテムハルト」
「リュード...そうかよ、手前ェ生きてやがったのか!!!」
「...死んだ筈なんだがな。実際、死んでいたようなものだ」

厳しい表情のままではあったが、僅かにその中に「懐かしさ」が入り交じる。
ゲッテムハルトは大げさな身振り手振りでリュードにナックルを突きつける。

「で。今のやつはリュード、手前ェを狙ってたよなぁ?アイツはなんだ?何モンだ?」
「...知らん。だが、助かったのは事実だ。礼だけは言っておく」
「はぁ?....ありがとう、ってか?はっはははははは!!!」

常人では考えられない思考回路。
けたたましい笑い声を立てるゲッテムハルトに、アフィンはすっかり萎縮してしまっていた。
エリはそんなアフィンを気遣い、一緒に後ずさりながらその男を見据える。

「相っ変わらずめでてぇヤツだなテメェはよ!!そんな事よりヤツの情報だ!...知ってて黙ってるんだったらただじゃおかねぇぞ?」
「知らないと言っているんだ。いい加減にしろ」
「...その様子じゃ本当に知らねぇみてぇだな。ち、つまらん」

あくまでも冷静に振る舞うリュード。
冷ややかに見据える彼に、ゲッテムハルトは嘲笑を投げた。

「それにしても随分とまあ立派になったもんだな、リュードさんよ。...相変わらず弱いまんまだけどな」
「...何だと?」

一気に、リュードの表情が変化する。
一歩間違えれば、ゲッテムハルトと見紛うかとも取れる凶悪な表情。
それに気づいた狂気の男は鼻で笑う。

「そうそう、それでいい。『あの時』みてぇにやってみちゃどうだ?えぇ?」
「....」

ゲッテムハルトの言葉に、リュードは我に返った。
駄目だ。挑発に乗るな。
己の感情を隠すリュードに、ゲッテムハルトは肩をすくめる。

「...ち、途端につまんなくなっちまった。行くぞシーナ。とろとろすんじゃねえ」
「はい」

背を向け、ゲッテムハルトは森の奥へと歩き出す。
それは、「仮面」の消えた方向。
その場に残された「シーナ」が深々と頭を下げた。

「それではリュード様、失礼いたします」

そして、同じ方向へと姿を消す。
残された3人は暫く身動きが取れなかった。
エリがようやく、辺りの状況を把握してため息をつく。

「大丈夫?二人共...」
「次から次へと、なんだってんだよ...相棒、あんなやつと知り合いなのか?」

ようやく狂気から開放されたアフィンが、震える声で呟く。
リュードの顔から、表情が消えていた。
アークスシップに帰還するまで、ただの一言も語ることはしなかった。





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Comment

梅傾奇

マジか…まさかの知り合いだったとは…
今までの話とかから知り合った時期は大よそ察しがつくけど、簡単に過去編とかあったらおもしれーなーとか思ってしまったw

あと旦那とゲッテムさん、並んで戦うと超ハマるだろうなぁなどと思ったのでした、まる
  • URL
  • 2012/08/23 16:54

C-ma

最初にゲッテム見た瞬間から「こいつ絶対リュード知ってるよな、で、リュードも絶対ゲッテム知ってるよな」で妄想が暴走。
過去のお話は・・・ニヤリ。

早くゲッテムの服実装してくれよー!!(笑)
  • URL
  • 2012/08/23 17:51

月影ユオ

続きがたのしみです。わくわく。
過去編も楽しみです。わくわく。

わくわくわく。
  • URL
  • 2012/08/23 19:00
  • Edit

C-ma

なんかものすごいワクワクされてる・・・(笑)
  • URL
  • 2012/08/24 02:49

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