PSO2二次創作小説「時の輪」(2)

この小説は、ファンタシースターオンライン2(PSO2)のストーリーを元にした二次創作小説です。
オリジナル要素も含まれますのでご注意ください。
ゲーム内「マターボード」をある程度進められている方でなければ、ネタバレ状態になりうることをご承知下さい。

初めての方はまず

PSO2二次創作小説「Black Dream」~黒い夢~

をお読みになる事をお勧めします。

PSO2二次創作小説「時の輪」

「プロローグ」

(1)


↓PSO2二次創作小説「時の輪」(2)
分からないことが沢山ある。
そして、それは次々に蓄積されていく。
目の前の状況も、正にそうだった。

「リュード」

少女。
殆ど白に近い長い銀髪に、赤い瞳が印象的な女の子。
エリと、リュードの前に。

「マトイちゃん・・・」
「エリアルド」

二人の顔を交互に見つめ、立ち尽くすマトイが居た。

助けられなかった筈。
あの後、マトイの声の方向へ急いで駆けつけたが、そこには既にマトイの姿は無かった。
間に合わなかったと、リュードは肩を落とした。
「仮面」の襲撃と相まって、全員が疲労と共にアークスシップに帰還した。

なのに。

誰かに助けられたのだろうか?
しかしメディカルセンターのフィリアは、リュードとアフィンが救助したと言っている。
エリが膝を落とした。

「マトイちゃん、リュードに助けられたって本当?」
「・・・うん」
「そう、なのね」
「何も覚えて・・・ないけど、リュードとエリアルドの事は・・・何でなのかな」

「以前」にリュードとアフィンが救出した時と、状況は同じだった。
ナベリウスの森の中、ただ一人倒れていた彼女には過去の記憶が無い。
何か意図的に「記憶が奪われた」可能性も捨て切れないと、リュードは思っている。
同じように記憶を消され、操作されていた自分自身の事があるからだ。

何より「あの時」に、自分を諭したのは「マトイ自身」。
あの時の少女はまるで「全てを知っている」ようだった。
いや、あれはマトイの「深層意識」のみが彼の前に現れていたのかもしれない。

「気をつけて、ね」

けれど今、怯える少女はエリの手を掴んでいる。
自分という存在が「わからない」事の恐怖を、リュードはよく理解していた。
エリの隣に膝を落とし、彼は僅かに笑みを浮かべる。

「焦らなくていい。今は休め」
「・・・あの、あの・・・ありがとう。助けてくれて。それを先に言わなきゃいけないのに」

怯えながらも、マトイは気丈に笑みを浮かべた。
とりあえず、命に別条はないという。
まずはメディカルセンターに任せるべきだろう。
マトイをフィリアに任せ、二人は人の少ないロビーの片隅に移動する。

「・・・どういう事だ・・」
「分からないわ、私にも」

マターボードは、ただ単純に「時を遡らせ、別の『選択』をさせるもの」ではないと言うこと?
そうでなければマトイの存在は説明出来ない。
しかし「シオン」ですら、

『万事において、全てを選ぶ事は不可能』

そう言っていた。
何か、違う力が作用しているのか。
それとも、シオン「達」の考えも及ばない副次的な事なのか。
時の理の外側に居るとはいえ、そのさらに自分たちの意思の外側にある事をいくら悩んでも仕方がないのは確かなのだが。

「とにかく、マトイちゃんが無事なのが解った事だけでも良しと思わないと」
「そうだな」
「それより・・・ゲッテムハルト・・・だったかしら、あの人。貴方を知ってるみたいだったけど」

どうしても、触れなければならない事。
しかし、その名前が出た途端にリュードの表情に影が落ちる。

エリ自身、両親を失ってからの十年は苦難の道ではあった。
彼らだけではない。
「十年前の事件」は、オラクルに存在している人々の多数の心に傷を残した。
しかし、少ないながらも志を同じくする友人は居た。
自分が行き詰まった時は手を差し伸べてくれる師匠が居た。
何より、いつか彼に会いたいという一心が、彼女を支えていた。

だが彼は、過去の話をしようはしない。
特に、記憶を失う「前」の事は一言も口にしたことはない。
少しでも過去に関わるような会話になると、再会したばかりの頃の「感情を失った顔」に戻ってしまうのだ。

「・・・今はまだ、話せない。すまん」

いつもそう言って、背を向ける。
他者を拒絶し、それでいて、全てを背負ってしまう。
何が起きたのか推測は出来ても「真実」はわからない。
彼女に解っていることは、目の前の男性が今も「過去」に囚われ、苦しみ続けている事だけ。
それを少しでも理解したいと思うのは間違いなのだろうか。

小さく頭を振り、エリは自戒する。
無理に聞き出すことは出来ない。
十年前の事件の直後に「ラボ」と呼ばれる場所で「記憶を消され、ねじ曲げられた」と彼自身が溢した。
きっとそれすら、本来は語りたくはなかった筈。
抉られた心の傷をこれ以上広げる事は、絶対に許されない。

エリは一度大きく息をした。

「じゃあ、あの『仮面』に心当たりは無いの?」
「無い。ただ、何かを探していたようだった」
「それは『貴方』ではなくて?」
「本当に分からないんだ。会った事も、見た事すらない。ただ・・・声が」

そう言って、考えこんでしまう。
辺りの雑踏が、その場の重い空気を誤魔化す。
思えば、朝会話をした時に「何かが聞こえた」と言っていた。
同じ場所に居たエリには聞こえなかった「声」?

マターボードの「所有者」だから?

どうにかして答えを出そうとする自分に、エリはもう一度首を振る。
憶測で結論を導き出す事程愚かな行為はない。

確かなことは、あの「仮面」が明確な敵意を持って「リュード」に殺意を向けた事。

それなら私のすべき事は決まっているわ。
エリはその言葉を、心へ刻む。



どれだけの日数が経っただろうか。
単独での活動を許可されてからしばらくして、リュードはナベリウス奥地の調査を依頼された。
目的は「ナベリウスの土壌調査」。
データ収集の為だと依頼主は言っていた。報酬が一人分しか用意出来ない事で他の誰も引き受けてくれないとも。
エリは「仮面」の事を気にして一人で行くのはまだ危険だと諭したが、リュードはその依頼を引き受けた。

一人の方がいいと、今までは思っていた。

誰にも気兼ねなく、自分の間合いで戦う事が出来る。
自分を取り巻く「敵」と対峙している時は少なくとも雑念は消える。
勿論「暴走のトリガー」は除かれたとはいえ、自分自身が「実験体」である事を忘れた事は無い。
油断をすれば再び「道」が開かれる可能性が残されている。
だからこそ、他者を巻き込みたくはない。
何か起きても、それはあくまで「己」の責任。

だが今は「孤独」ではない。

必ず生きて帰らなければならないという、悪い言い方をすれば「枷(かせ)」のようなものを感じる。
そしてそれを受け入れている自分。
その方が遥かに「難しい事」だと気付いたのだ。
「誰か」が居る事がここまで自分を変化させる事になるとは、思いもしなかった。
万が一、今「仮面」に強襲されたとしても、負ける気はしない。
ふと、そんな事を考える。

何度目か、巨大なトゲのような赤い鬣を持つ「フォンガルフ」を昏倒させた時だった。
ヘッドセットに、着信を知らせるアラートが届く。

『リュード、聞こえるか。ヒルダだ』
「通信状態良好だ」

今の彼のオペレータは、彼の「アークス認可最終試験」を担当したヒルダ。
冷たい物言いだが、その指示は的確。

『多数のフォトン係数の異常が検出され始めた、奴らが現れる前兆だ。気をつけろ』
「了解した」

通信が終わらない内に、辺りに無数の「黒いフォトンの渦」が起こり始める。

「来たな」

次々と現れるダーカー。
大型ダーカーの姿も見えた。
大剣に備え付けられた「フォトンブースター」を「最大」に切り替える。
それは「ダーカー殲滅モード」。
一気にリュードの眼が鋭く尖った。

大型ダーカーは攻撃が届かない上空で、丸い何かを幾つも吐き出した。
それが地面に落ちると、そこから通常のダーカーより遥かに大きなダガンが這い出てくる。
この「ブリアーダ」の危険度は、その「子供」を生み出す事にある。
エリほどではないが、ダーカーの持つフォトンの「気持ち悪さ」は彼にも感知する事が出来た。
この気配が消えるまでは、何も考えずに剣を振るおう。

辺りに響き渡るダーカーの悲鳴、奇声。
地面から這い出てくるダガンを、動き出す前に殲滅する。
剣を降る音と、飛び散る黒いフォトン。
取り囲まれないようにと「立ち位置」を変えようとしたその時。

「よう!一人で大変そうだな、手を貸すぜ!」

この声は。
何処からともなく駆け寄ってきたハンター。

ゼノ!?

危うく、声に出すところだった。
今は「初対面」である筈だ。
赤い髪と、その顔の傷が特徴の若いヒューマー。

「っていうか本当はな、俺の方が手を貸して欲しいんだけど」

見るとその背後に、有象無象のダーカーを引き連れている。
やれやれ、と思わずリュードは苦笑した。

程なく、その場に居たダーカーは殲滅された。
辺りのエネミーが居なくなった事を確認して、ゼノはリュードに「トリメイト」を投げてよこした。

「いやまあ『沢山すぎて面倒になった』ってのが本音なんだけどな。助かったぜ。そんなもんで悪いが受け取ってくれ」
「助かったのはこっちもだ、ありがとう」
「俺はゼノ。お前さんは?」
「リュード。アークスになったばかりだ」

そこまで言って、ゼノはふとリュードを見据える。

「リュード、か・・・?お前さんどっかで・・・???」
「いや、会ったことはないが」

いつも、この瞬間はひやりとする。
「以前」も、同じ事を言われた。
特にゼノはエコーと同じく浅からぬ縁がある。
きっぱりと「否定」しておかなければ、あらぬ疑いをかけられる可能性がある。
しかし。
ゼノは首を傾げて、まじまじとリュードを見る。

「そういうんじゃないんだ、なんて言うのかな。『雰囲気』というか・・・何というか。うーん」
「雰囲気?」
「そもそも、アークスになったばかりというけど、お前さん『ルーキー』じゃないだろ」
「・・・・・」
「あ、詮索とかそういうつもりじゃないんだ。すまねぇ」

押し黙るリュードに、ゼノは大げさに手を振って苦笑する。
リュードより一回り若いが、伊達に修羅場をくぐり抜けてはいない。
否定したところで、きっとゼノには通用しないだろう。
リュードは向き直り、頷いた。

「分かるものなんだな」

やっぱり、とゼノは頷く。

「それが何というか・・・お前さんの戦い方とか見ててな、何かこう雰囲気が・・・?」
「・・・?」
「俺の師匠に似てる気が・・・年上にお前さんてのも失礼だな。旦那とでも呼ばせてもらっていいか」
「それは構わんが・・・」

首を傾げ、何かを思い出そうとするようにゼノは地面を見る。
師匠?
聞き返そうとして、ゼノは慌てて両手で否定した。

「あーうん、俺の記憶力が悪いのが問題だと思うなこれは。初対面の相手に何言ってんだろうな俺」
「???」

何故だろう。
ふと、その反応にリュードは「違和感」を感じた。
「以前」、つまり「別の時間軸」に出会っているから、ではない?
怪訝そうに自分を見るリュードに、ゼノは苦笑した。

「煙に巻くようで悪いが気にすんな。俺もそのうち忘れるから」

そういって立ち去ろうとして一度は背を向けるが。
ふと、もう一度振り返る。

「旦那さ、お人好し、って言われないか?」
「・・・何故そう思う」
「こんな、誰もが断る無茶な『個人的依頼(クライアントオーダー)』をやってる時点でそうさ。まぁ俺も人のことは言えないんだけどな」

手元の端末を操作するゼノ。
直ぐに、リュードの端末に「何かのデータ」が届いた。
その内容を見て、リュードは驚愕する。
本来自分が収集しなければならない、ナベリウスの地質データがそこにあったからだ。

「これは・・・?!」
「そのデータだろ?旦那のクライアントが欲しがってたのは。この先に採掘装置が転送されて来てたから、一足先に拝借してきた。手助けの礼とでも思ってくれ」

リュードははたと気付いた。
何故、これが「個人依頼」だと知っているのか。その依頼内容を知っているのは何故か。
というよりも、「単独探査」である事を知っていながら手を貸してくれたのか。

・・・初めから、「俺」を知っていて?

僅かに疑いの目を向けるリュードに、ゼノは肩をすくめる。

「あーいや、物凄い腕の立つルーキーの噂は聞いてたんだ。その役に立てればと思ってさ。まさか俺より年上とは思わなかったけど」
「・・・しかしこれは、俺が引き受けた事・・」
「そういう所が似てるんだ。あの人も無茶な依頼を聞きまくって、あっちこっちに出向いてた」
「・・・」
「旦那も他人の為に頑張りすぎて、貧乏くじ引きまくるのだけはやめとけよ?」

そういうつもりはなかった。
生きる為の資金稼ぎと、自分の腕を磨く為と。
何より、少なからず困っている人を放っては置けない。
傍から見たら、そう見えるのだろうか。
そしてそれが「ゼノの師匠」に、似ている?

「それじゃ、またな」
「ああ」

森林の出口の方へと歩き始めるゼノに、リュードはしばらく視線を投げる事しか出来ずに居た。

何か、違う。
あの違和感。
自分の知らない「自分」を知っているような、そんな物言いが気になった。




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Comment

梅傾奇

まずはマトイさん。
確かに2章の流れでどうして助けられたのかってのはゲーム内でもイマイチわかってないところなんだよね。
これをどう解釈するのか、今後の展開で一説が聞けるのかなぁなんて思ったり

そしてゼノが旦那を知ってる雰囲気だけど、これはマターじゃない雰囲気・・・
これは旦那の過去が絡んできてるのか、非常に気になるトコロ・・・

今の事象に対応しつつも、やっぱりその辺りが鍵になってくるのかなぁ。続きも楽しみだぞ!
  • URL
  • 2012/09/20 17:42

C-ma

いつもありがとうね。
マターボードが現状だと、本当にどう書いていいかわからない状態で困ってます。
そんな中でも「問題提起」はしておかないと、と思いまして。

ゼノの態度は、クローズドβの時と現在とじゃ明らかに違います。最初の反応は「マターで繰り返し会ってるから」と思ってたんですけどね・・どうも違う・・・。やたら「主人公(プレイヤー)」にゼノがこだわって、それをエコーが嫉妬する始末w

色々考えてるんだけどもなかなかまとまりません(笑)
  • URL
  • 2012/09/20 17:56

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