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PSO2二次創作小説「時の輪」(6)

この小説は、ファンタシースターオンライン2(PSO2)のストーリーを元にした二次創作小説です。
オリジナル要素も含まれますのでご注意ください。
ゲーム内「マターボード」をある程度進められている方(おおよそ3枚目をクリアした後くらい)でなければ、ネタバレ状態になりうることをご承知下さい。

初めての方はまず

PSO2二次創作小説「Black Dream」~黒い夢~

をお読みになる事をお勧めします。

PSO2二次創作小説「時の輪」

「プロローグ」

(1) (2) (3) (4) (5)


↓PSO2二次創作小説「時の輪」(6)

かけられた毛布を跳ねのけるように、飛び起きた。
全身から汗が吹き出す。

「・・・リュード・・・」

不安げに自分を見ていたエリに、ようやく気付いた。

「大丈夫?」
「・・・」

ようやく、自分の状況を把握し始めた。
治療用の着衣の消毒の匂いが、鼻を突く。

「メディカル・・・センター?」
「うん。何とか助かったのよ。私達。ゼノ達が見つけてくれたの」
「・・・そう、なのか」
「丸一日意識が無かったからどうなるかと思ったけど、良かった」

あの後、程なくして嵐は止み。
何とか巨大な獣から逃れたゼノとエコーが、エリのGPSを辿って駆けつけて来た。
ぎりぎりの所で、リュードの命は繋がれた。

「君は大丈夫なのか」
「私は平気よ。何とも無いわ」
「・・・あの『武器』は?」
「ここにあるわ。心配しないで」

ベッドの片隅に、見えないようにタオルにくるまれて置かれている「もの」。
リュードがそれを確認するように視線を送ると、エリは苦笑した。

「ロジオ君が凄く落ち込んでいたわ。彼の静止を聞かなかったのは私達なのにね」
「そうだな・・まあ、皆が無事で何よりだ」

言葉とは裏腹に、心ここにあらず。
リュードの表情が、ふとした拍子に「戻る」のだ。
感情を失っていた「記憶喪失」の頃に。

「とにかく、今日明日は休んでね。私は大丈夫だから」

努めて、明るく振る舞う。
エリには、それしか出来なかった。
くるりと背を向けるエリに、リュードが呟く。

「・・・エリ」
「何?」
「俺とのパートナーを解除してくれ。頼む」
「・・・」

背を向けたまま、エリは立ち尽くす。
言われると、思っていた。
こんな事があれば、彼の性格ならば必ず言い出すと。
そう思っていた。
だが到底、承諾出来ない。

「どうして、そんな事を言うの?」
「やはり無理だ。俺と居るだけで君は危険に晒される」

その瞬間に吹き出した感情が、エリには抑えられなかった。
き、とエリは振り返り、怒りの眼差しでリュードを見る。

「それで?一人で死ぬつもり?」
「?!」
「冗談じゃないわ。貴方の言い方をすれば私は貴方の時間軸に『巻き込まれた』のよ?それなのに勝手に死ぬって言うの?私は絶対に許さない!」

あまりの激情に、リュードは驚きを隠せなかった。
こんな風に、彼女が感情を剥き出しにした事など、一度も無かったからだ。
怒りと、悲しみと哀しみと、無力さ。
エリは怒り、そして。

「何故・・・貴方は全部一人で背負おうとするの。何故私にそれを背負わせてくれないの?私を頼るって言ったのは嘘だったの?」
「・・・」
「私の能力じゃ、貴方の足手まといになるのは分かってる。けど、私は・・・」

涙が、止まらなかった。

「貴方が今もまだ過去に囚われているのが我慢出来ない。貴方が傷つき続ける事が我慢出来ない。貴方を傷つける『もの』は許さない。それが貴方自身の過去だとしても」

立ち尽くしたまま涙を拭こうともしないエリに、リュードはふと一つの言葉を吐いた。

「・・俺の過去・・・?」
「私には知る権利がある筈よ」

正直に、エリは答えた。
強引だとは、思っている。
そうでもしなければ、二度と彼に近付く事が出来ない。
一緒に笑う事など出来ない。
そんな気がした。
ようやく涙を拭き、真っ直ぐに目の前の男を見据えた。

もう、沈黙で誤魔化す事は出来ない、か。

長い静寂の後。
リュードは徐に、語り始める。

「俺は十年前、人を殺した」
「!」
「チームに居た全ての仲間を、この手で皆殺しにした。『器の実験』で操られていた筈、意識はなかった筈なんだがな。今も離れない。仲間の悲鳴が、命が尽きる瞬間に俺を見た目が、手に残った人を斬る感触が」

何か「罪」を背負っているとは思っていた。
だが、そこまで重いものとは。
初めは、声が僅かに震えていた。
話す事を、知られる事を恐れているようにも見える。

「俺は自分のした事に耐え切れずに、俺はその場で自害した筈だった。けど『奴ら』は俺に死ぬ事すら許さなかった。俺の記憶を操作して、もう一度俺に『同じ事』をさせようとした事は、君も知っている筈だ」

あの胸の大きな傷は、己を刺し貫いた跡。
体中の傷は、死にかけた彼の状態を利用して切り刻まれた「実験の跡」。
淡々と言葉を紡ぐ彼の顔から、次第に表情が消えていく。

「俺は自分が『信じられない』。俺は何度も、君を殺す夢を見る。まるで壊れたビデオレターのように、繰り返し、繰り返し君を殺してしまう夢を。夢か、現実か、わからなくなる程に」

消えた感情。
涙すら、無い。
思考を止め、心を閉ざす。

それで、私を遠ざけようと。

エリは、笑った。
子供のように。

「いいえ。私は生きている。今回だってそう。貴方に助けられたわ。貴方が本当に私を殺そうとしてるなら、いくらでも出来た筈でしょ?」

リュードは一瞬、我に返る。

「貴方のその『夢』。本当に『貴方の夢』なの?」
「・・どういう意味だ?」
「貴方を精神的に追い詰めるための『奴ら』のプログラムだとしたら?」
「?!?!」

言葉の意味に、リュードは呆然とエリを見つめる。

勿論、何の確証も証拠も無い。
要するに、ハッタリ。
けれど強ち、嘘でもないと思っている。
そしてそうでも言わなければ、自ら命を絶ちかねない。

自分を遠ざけようとしながら、自分を殺してしまうと言っておきながら。
何故、助けたのか。
滑落する自分を掴んだその手に迷いは無かった。
マターボードに干渉までして、命を救った。

矛盾。
そう、矛盾。
言っている事と、行動とが余りにも剥離している。
あまりにそれが不自然なのだ。
そしてもう一つ、それを裏付ける「事実」を、エリは知っていた。

「・・・実はね、ここに入る前に貴方を『ラボ』へ運ぶようにフィリアさんが指示を受けたらしいの。私は絶対に嫌だと言って拒否して、ここに収容して貰ったんだけど」
「それは・・・」
「間違いなく、貴方への監視は続いてる。貴方に単独行動をさせる為に、そう仕向ける為に『操作』しているとしか思えないの。だから、フィリアさんに『完全に隔離した部屋』を用意してもらったわ。戦略OSも、監視カメラも、盗聴器も無いこの部屋をね」

強迫観念としか言い様がない、罪の意識。
エリは不自然なまでの「孤独への執着」を感じていた。
これは、賭け。
不敵に笑って、言い放つ。

「私は傍を離れない。私を殺すというならやってみなさい。出来るものならね」

ようやく気づいた。
エリは「リュード」へ言っているのではない。
自分の中にある「闇の因子」へ、敵意を剥き出しにしているのだ。

しばらくの沈黙の後、リュードは息を大きく吐いてから。
大げさに、両腕を広げてベッドに仰向けに倒れてみる。
何故かは分からないが、どうしてもやりたくなった。
あまりに突然な動作だったので、エリは一瞬呆然となった。

「リュード?!」
「・・・何だか、疲れたな」
「え?」
「色々『言い訳をする』事に疲れた。君を見ていたら、馬鹿馬鹿しくなってきたよ」
「どういう意味よ」

くっくっくと、笑う。
何を悟ったのだろう。
見た事の無い表情。
自嘲の笑いではあったが、それは奇妙な明るさがあった。
真っ直ぐ天井を見たまま、呟く。

「そうだよな。君は強い。俺が心配するまでもない事なんだ。それを忘れていた。そんな風に俺にぶつかって来てくれた人は、他に居ない」

それからもう一度、ゆっくりと起き上がり。
真っ直ぐ、エリを見た。

「一つだけでいい、約束してくれるか」
「・・・何?」
「自分から死に向かうような真似は二度とするな」
「!」

言われて、エリは我に返った。
それが、彼女の「欠点」。
ダークラグネに向かった時も、今回の「巨大な獣」へ立ち向かった時も。
何も考えられなくなると、自分の身を捨てて行動してしまう。
その為に、彼が自分を「信頼出来ずにいる」のだと気付いたのだ。
大きな口を叩いておいて、逆に諭された。
傍らの椅子にすとんと座り込み、項垂れる。

「・・・ごめんなさい。それから、助けてくれてありがとう」
「いいんだ、お互い様だよ。俺も人の事は言えない。俺も、二度とこんな無茶はしないと約束する」

その言葉が余りにも思いがけなかった為に、エリは思わずベッドに手をついてリュードを見た。

「本当?」

返事の代わりに、リュードはエリの腕を掴んで引き寄せ。
そのまま、彼女を抱き締めた。
今出来る精一杯の、意思表示。

「今まで・・すまなかった」
「謝るのは、もう終わり。・・・ありがとう、にしましょ?」
「そうだな・・・ありがとう」

広い胸に顔を埋め、エリは涙を隠した。

温かい。
待っていたの。
ずっとこの日を、待っていた。




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