PSO2二次創作小説「時の輪」(8)

この小説は、ファンタシースターオンライン2(PSO2)のストーリーを元にした二次創作小説です。
オリジナル要素も含まれますのでご注意ください。
ゲーム内「マターボード」をある程度進められている方(おおよそ4枚目くらい)でなければ、ネタバレ状態になりうることをご承知下さい。

初めての方はまず

PSO2二次創作小説「Black Dream」~黒い夢~

をお読みになる事をお勧めします。

PSO2二次創作小説「時の輪」

「プロローグ」

(1) (2) (3) (4) (5) (6) (7)


↓PSO2二次創作小説「時の輪」(8)
「仲良しごっこに性が出るなぁ?ゼノさんよ」

唐突に投げつけられた棘のある言葉に、二人は反射的に同じ方向へ向いた。
ゼノの表情が一変する。

「ゲッテムハルト?」
「おぉっと、何だ、手前ェだったのかよリュード」

今気付いたとばかりに大げさに驚いてみせるゲッテムハルトに、リュードは不快感を顕にした。

「何の用だ」
「あぁ?俺だってアークスだぜ?ここにいちゃ悪いかよ?」

悪意をむき出しにした声と顔。
ゼノは嫌悪感を隠そうともせず、ゲッテムハルトに向き直った。

「旦那とテメェが知り合いだってのにも驚いたけどな・・・いつも破壊活動しかしてないような奴がアークスを気取るなんて笑わせるぜ。一緒にするなよな」
「おこちゃまのおままごとじゃねぇんだ、ダーカーの相手はよ」

ただならぬ雰囲気に、エコーとエリが歩み寄って来た。
エコーがゼノを諌めるようにその顔を見る。

「この人通りが多い所で何してるのよ?」
「俺達は普通に話をしてただけだぜ、この戦闘狂が勝手につっかかってきたんだ」

戦闘狂、と言われて。
まるでそれが褒め言葉のように、ゲッテムハルトは歪んだ笑を浮かべる。

「随分な言い方だなァゼノ、十年前なんざまるっきり役に立たなかったガキ以下だったくせによ」
「・・・・ふざけるなよ、テメェ・・・!!!」

この二人にも少なからず因縁があるらしい。
十年前。
その言葉が、ゼノの怒りに火を付けた。
普段は飄々としているゼノからは想像もつかないような殺気立った視線で、真っ向からゲッテムハルトを睨み据えている。
怒りで、その手が震えている事にも気づいていないようだ。
今にも殴りかかりそうなゼノに、ゲッテムハルトはその手をひらひらと泳がせた。

「いいぜゼノ、来いよ。お前とならそれなりに楽しめそうだからなァ?」

一触即発の状況に、エコーが慌ててゼノの手を抑える。

「ゼノ、落ち着いてって!・・・ちょっと、メルフォンシーナ!貴女もそっちの凶暴バカを止めなさいよ!」
「・・誰の事を指しているのか、私にはわかりかねます」

いつの間にか、ゲッテムハルトの後ろにはメルフォンシーナが控えていた。
分かりかねる、と云いつつその隠された表情の端に、不愉快極まりない感情が現れている。

「・・・いい加減にしろ、この往来で」

冷水を浴びせるような言葉は、リュードから発せられた。
今にも切れそうだった緊張の糸を、容易く緩めてしまった。
喧嘩腰の二人を見据えるその眼は限りなく冷酷で威圧的で、非情なもの。
その視線に、ゼノはようやく我に返った。

「‥‥旦那、すまねぇ」
「チッ・・・。気勢が削がれちまったぜ。まあいい、機会はいつでもあるからな?」

冷ややかに見据えるリュードに一瞥をくれた後、ゲッテムハルトはゼノに向き直った。

「じゃあなゼノ、甘ちゃんは甘ちゃんらしく群れてピーピー慰め合ってな」
「・・・・・・っ」

ゼノとリュードの間を鼻で笑いつつ通りぬけ、ゲッテムハルトは姿を消した。
聞こえてくる程の歯ぎしりが、ゼノから発せられている。

「ゼノ・・・」
「・・・大丈夫、大丈夫だエコー。悪い、手間かけちまった」

それはまるで自分に言い聞かせるような物言い。
必死に、苛立つ自分を抑えこもうとしているのが見えた。

「旦那もすまねぇな・・・カッコ悪い所見せちまった」
「・・・冷静になったならそれでいい」
「詳細については勘弁な。・・ちょっとばかし、頭冷やしてくらぁ」

じゃあ、またな。
バツが悪そうにゼノは背を向けて、ゲッテムハルトとは逆の方向へと走りだした。

「ちょっと・・・!もう・・・。ごめんね、私はゼノを追いかけるから」

エコーが言葉もそぞろに、ゼノを追って駆けていく。
エリはリュードへと歩み寄った。

「大丈夫かしら、ゼノ・・・」
「十年前に辛い思いをしたのは俺達だけじゃない、そういう事だ」

二人はゼノとエコーが姿を消した方向を複雑な表情で見つめる。



「・・・リュード様」
「?」

不意に背後から声をかけられ、リュードは思わず振り返った。

「忘れるところでした。ゲッテムハルト様から、これを貴方様に渡すように言付かって居ます」
「・・・奴から・・・?」
「『忘れたなんて言わせねぇぞ、それを見て自分のした事を思い出せ』と・・・」

メルフォンシーナが、包を持ってリュードを見ている。
表情は窺い知れないが、その雰囲気には何故か「懇願」を感じる。
少なくとも、エリにはそう思えた。

自分のした事。
リュードは一瞬、表情を曇らせた。
だが、無言のままその包を受け取る。

「では、失礼致します」

深々と頭を下げた後。
小さな体で、ゲッテムハルトを追う為に小走りに駆けていく。
何故彼女はあの狂乱極まりない男に黙って付き従うのだろう?
エリにはそれが不思議で仕方なかった。

「これは・・・!!」

その声に、エリが振り返ると。
包を開いて、リュードは愕然となっていた。
エリがその手の中にあるものを覗きこんで、思わず呟いた。

「これ・・・あの人のと同じ・・・?」

それはどうみても、あの「ゲッテムハルト」が着ていたものと同じデザイン。
濃い灰色の、重量感のあるコート。

「どういう事・・?」

話してくれるだろうか。
思わず、エリはリュードの顔を見た。
暫く黙ったまま、そのコートを見ていたリュードだったが。

「・・・俺が、あいつと同じチームに居た時のものだ」
「え?!」

以前出会った時のお互いの反応で、知り合いだろうとは感じていた。
だが、同じチームだったとは。
以前なら、きっと黙して語らなかったであろう過去。
片隅のベンチに、リュードは腰を下ろす。
その隣へ、エリはそっと座った。

「・・・話すの、辛い?」
「いや、大丈夫だ」

懐かしいような、辛いような。
リュードの、そのコートを見る眼は複雑な色が浮かんでいる。

「俺とゲッテムハルトは、同期だ。同じチームで、同じ目的の為に一緒に戦っていた」
「同じ目的?」
「単純な事だ。強くなる為。俺もあの頃は純粋にただ強さを追い求めていた」

忘れさせられていた過去。
次第に、鮮明に思い出されてくる。

「昔から、ゲッテムハルトは俺以上に強さに拘っていてな。よくフォトンアーツの使い方や戦闘時の行動パターンなんかを、俺を含めたチームの連中と飽きること無く話し合っていた」

雑踏が、揺らぐ感情を消す。
誰にも話した事のない、昔話。

「だが、ある時俺は付いて行けなくなった」
「どうして?」
「目の前で、原生生物を意味もなくなぶり殺しにして、自分の技を確かめるのを見たからだよ」

強さを追い求めるあまりに、常軌を逸した行動に出始めたゲッテムハルト。
必要のない戦いを望まない彼にとっては、それは到底受け入れられなかった。

「俺はチームを抜けた。それが『裏切り』に思えたんだろうな。幾度と無く奴に罵倒されたよ」
「意見が合わなくなったのでしょう?仕方のない事じゃないのかしら」
「その時は俺もそう思ったよ。だけど事はそれだけで終わらなかった。そのすぐ後に『あの日』が来た」
「・・・!!!」

あの日。
エリを助けた、あの日。
オラクルに住まう殆どの人を変えてしまった、十年前の事件。

「君を助けた後、ダーク・ラグネ討伐の任務が降りてきた。単独行動をしていた俺に、近くのチームと合流するようにと指令が来た」
「ひょっとして・・・」
「そう。それが『元いたチーム』だった。連中は快く俺を受け入れてくれたよ。ただ一人を除いてね」
「それが・・・ゲッテムハルト?」
「奴は俺がいるなら一緒には行かないと、離脱した。・・・今思えば、それが正解だったのかもしれん。その後に何が起きたかは前に話したとおりだ。・・・奴にとって、俺は『仲間を皆殺しにした男』。奴があそこまで『狂った』のは、俺の責任でもある」

祈るように両手を合わせ、目を閉じた。
脳裏に浮かぶ、己自身が犯した罪。
口を閉ざすリュードの手に、エリはそっと手を重ねた。
緊張したその手は冷たかった。

「・・・ありがとう、話してくれて」

長い沈黙の後。
ただ一言、エリはそう言っただけだったのだが。
その言葉は、限りなく暖かかった。
心の奥底に沈めてきた罪の意識が、少しだけ和らいだ。
そんな気がする。
ふ、とリュードは自嘲するような笑みを浮かべて、もう一度自分の膝の上にあるコートを見た。

「・・・そうだ、エリに頼みがある」
「え?」

コートを見たまま、リュードは一つの決意をしていた。
過去から逃げたままでは、何一つ先へは進めない。
ならば、すべてを受け入れて先へ進もう。
それしか、道はない。



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