PSO2二次創作小説「時の輪」(9)

この小説は、ファンタシースターオンライン2(PSO2)のストーリーを元にした二次創作小説です。
オリジナル要素も含まれますのでご注意ください。
ゲーム内「マターボード」を進められている方(おおよそ5枚目クリアしたくらい)でなければ、ネタバレ状態になりうることをご承知下さい。

初めての方はまず

PSO2二次創作小説「Black Dream」~黒い夢~

をお読みになる事をお勧めします。

PSO2二次創作小説「時の輪」

「プロローグ」

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↓PSO2二次創作小説「時の輪」(9)
その扉をノックしたが、返事は無かった。
開閉スイッチに手を伸ばしてみるものの、開く事はなく。

・・また、後で訪ねてみるか。

諦めて、立ち去ろうとした。

「何だ、お主は」

キャスト特有の、人口声帯から発せられる声がする。
振り返ると、つや消しのような色あせた黒い身体に、赤いラインの走る無骨なキャストが佇んでいる。
表情というものが無い、かなり古いタイプのボディ。

「・・・貴方がジグ?」
「いかにも・・そうだが、お主は?」
「俺・・・いや、自分はリュードと申します。ゼノから貴方が刀匠だと聞きまして、伺った次第です」

リュードは向き直り、深々と頭を下げた。
驚いたように、ジグは僅かに首を傾げた。

「ああ、ゼノが言っていた?」

どうやら、ゼノが先に話を通してくれていたらしい。
しかし、明らかにその声に不機嫌さが入り混じる。

「・・・あ奴も面倒事をわしに押し付けおって・・・」
「申し訳ありません、しかしどうしても伺いたい事が」

頭を下げたままのリュードに。
ふと、頷く。

「・・・今時の若い者にしては礼儀を知っておるな。いいだろう、話くらいは聞いてやろう。入るがいい」
「ありがとうございます」

ロックを解除し、通されたジグの部屋。
そこかしこに武器のパーツや、作りかけの武器のようなものが山のように転がっている。
壁には試作品の数々がかけられ、さながら工房のような様相。
しかし、そこにあったものは久しく使われていない状態であった。
整理され並べられた工具にはうっすらと埃が被っている。
興味深そうにリュードがその工具を次々に眺めるのを見て、ジグが先に口火を切った。

「・・・お主はわしを笑いに来たのでは無いようだが、初めに言っておく」
「はい」
「わしはもう、武器は作らん。今の状態では、武器など量産されたもので十分だろう?」

己が生み出したであろう武器の数々を見て、ジグは諦めたように呟いた。

「七十を超えて生きているが、わしも年を取ったものだ。かつては泉のように湧いていた創造心が奮い立たん。四十年前の決戦時には心が震えたもんじゃ」
「四十年前・・・?」
「お主は知らんだろうがな。勿論、十年前の死闘もそうだ。大規模な戦いは情熱をかき立てる。だが戦線の沈静化を受けて、わしの情熱も冷めていったよ」

四十年前の決戦。
何かと戦い、それを撃破したという記録だけが残っている。
このキャストの老人は、その経験者らしい。
気持ちは分からなくもない。
戦いの是非はともかく、「創造」に意欲を燃やしていた頃の己と、今とを比較してしまえば。
現代のこの状態に嘆きを吐くのも無理からぬ事。

「武器を手掛けたい気持ちはあるが、中途半端なものは作りたくない。これは職人としての矜持、プライドじゃ」
「・・・わかります」
「すまんな・・・話を聞くどころか、わしの愚痴になってしまった」

初めはあれほど拒絶的だったのに、黙って話を聞き続けるリュードにバツが悪そうに言葉を濁した。
作業をする為の机の脇にある椅子に、ゆっくりと腰を下ろす。

「何故だろうな、お主には何故か話してもいい気がしてな。だが武器は作らんよ。そこにある武器も、試作品ばかりで通常のアークスには手に余る。事故か何かで武器を失ったとは聞いているが・・・他を当たってくれんか?・・・わしの創造力を滾らせるような何かがあれば・・・話は別なのだがな」

何か。
ゼノから聞いていた。
この「刀匠」が本当は「飢えている」事を。
リュードは黙って、脇に抱えていた包を作業机の上に置いた。

「これを、見ろということか?」

包を開きながらの諦めのため息を、ジグはその直後に飲み込んだ。

「これは!?」

白い杖のような「壊れた武器」。
表情の分からないジグの「声」が、上ずった。

「何だこれは・・・?!!!この形状・・どうやって作って・・・いや、これだけのものをどうやって錬成したと・・・!!!??」

予想以上だった。
リュード自身も、「ヒトの創りだしたものとは思えない形状」だと感じていた。
名工と言われる刀匠であればこれを見て黙っているはずがないと、ゼノが笑っていたのを思い出す。

「・・・お主、これをどこで?!」
「凍土、としか言えません。が、貴方ならこれを扱える、何か分かるだろうとゼノから伺っています。いや、貴方以外にこれをどうにか出来る人を知らないと彼は言っていました」
「あ奴・・・!!く、若造の癖にやりよる!しかしこれはまだ一部のようじゃ・・・ええい、悩むより行動じゃな」

もはや、リュードの言葉など上の空。
しきりに「壊れた武器」を眺めるその「目」は明らかに今までとは違うもの。

「お主、この壊れた武器をわしに預けるつもりはないか?修理出来るやもしれん」
「・・・元より、そのつもりです。だからこそこうして持ってきたんです」
「期待に添えるようにしよう。だがまだ他にもパーツがあると思われるんじゃ。それもわしに届けてくれ。・・そうだ、さっき言っていた武器の話も考えよう。お主の為に武器も作ろう!」
「ありがとう、助かります」

しかし、とリュードは視線を泳がせて考えこむ。
他にもパーツがある?
それは一体何処にあるのだろうか。
だだでさえ、常軌を逸した状態で手に入れた「武器」。
そのあたりは、帰ってエリやあのロジオという科学者にでも相談してみるしかないか。

ふと視線を周りの「壁にかけてある試作品の武器」へ投げて。
その目が、止まった。

「・・・どうしたんじゃ?」

その様子に、はたとジグが我に返る。
リュードは黙って、一つの武器へと歩み寄る。
それはそこに静かに眠っていた、巨大な、驚くほど巨大で無骨な「大剣」。

「これは、使えるんですか?」
「それが欲しいのか?構わんぞ。だが覚悟しろ、フォトンの刃に頼らずに所有者の能力を引き出そうとしたあまり、巨大で過大出力になってしまったのだ。折畳式にしたものの、それを持った連中が軒並み負傷しておる。・・・お主にそれが扱えるかな?」
「はい」

迷わず答えが出た。
自分にとっての最良の武器が、ここで自分を待っていた。
あの遭難で武器を失ったのはこの「出会い」の為なのかもしれないとさえ思える。
じっとその武器を見据えるリュードに、ジグは思わず笑う。

「はっはっは!今時の若者にしちゃキモが座っとる。気に入った。すぐに手入れしてお主の倉庫へ送っておこう」
「ありがとうございます」

ようやく自分に向き直り再び深々と頭を下げるリュードに、ジグはすっかり気を良くしたようだ。

「お主のような若者に出会うのは久しぶりじゃ。この壊れた武器といい、お主といい・・楽しみだ、楽しみだぞ!」

笑い声が、部屋に響く。
驚くべきは、ゼノの洞察力。この老人の性格を知り尽くしている。
この刀匠が間違いなく行動を開始すると判って自分をここへよこしたのだ。
リュードは思わずジグの言動の激変に苦笑した。



自室に戻ろうとショップエリアを歩いていると。

「リュード!」

雑踏の中、階段の上から声が振ってきた。
エリが、ショップエリアの2階から手を降っている。
軽く手を上げると、回りこむように階段を駆け下りてきた。

「・・・良かった、今連絡しようと思ってたの」
「どうした?」
「これ、言われてたコート」

エリが目の前で息を整えながら、紙袋を差し出した。
驚いて、それを受け取る。

「早かったな?」
「ええ、知り合いにこの手の事が得意な人が居たから、やって貰ったわ」
「無理言って悪かった」
「ちゃんとお礼はしてあるから、大丈夫よ」
「ありがとう」
「早く着てみて?見たいわ」
「そう急かすな、一度部屋に戻らないと」

悪戯っぽく笑みを浮かべるエリに、リュードは苦笑した。
この手の事は女性に任せた方が良い事くらいは、彼にも分かっていた。
早足で自室の扉の前に立つと、エリが後ろで手を降っている。

「そこの広場のベンチで待ってるから」
「分かった」

自室の扉を閉め。
リュードは一つ、大きく息をした。

これを着るという事は、全てを背負うという事。
戦略OSをコートへ差し替え、読み込ませる。
十年ぶりに羽織るそれは、意外にもしっくりと馴染む。
そういえば、と倉庫を確認すると、確かに「武器」が届いていた。

仕事が早いな、じいさん。

そう独りごちて、その武器を背負う。
ずっしりと、肩に重さがかかる。
それがまた心地良い。
ゲッテムハルトの事を言えないな、これじゃ。

部屋の外へ出ると、エリが複雑な表情を浮かべた。

「・・・似合ってる・・けど、その色で良かったの?」
「ああ、これじゃなきゃ駄目なんだ」

ゲッテムハルトがよこしたそのコートは、濃赤に染められていた。
まるで、血の色のように。
今まで目を逸らしてきた、自分が奪った命を真っ向から受け入れ、先に進むという意志の表れ。

「それにその武器・・・凄いわね。例の刀匠のおじいさんから?・・・大丈夫なの?」
「ああ、譲ってもらった。例の武器は預けたよ。喜んでくれていた」
「そうなのね、良かった」

巨大な、鉄塊のような大剣。
アークスの紋章の隣に「タルナーダ」と刻まれていた。
折りたたまれた状態ですらリュードの背中を覆い尽くし、地に付きそうな程の巨大さだった。
展開されたら、どれ程の大きさになるのだろう。
背中側に回るようにしてタルナーダを見ていたエリが頷いた。

「私も、ゼノが使わないって言うワイヤードランスを譲ってもらうことになったわ、ゼノやエコーには頭が上がらないわね」
「そうだな。今のところ、一番信用できる連中だからな」

ふと、思い出す。
壊れた武器について、ジグが気になる事を言っていた。

「そういえば、じいさんが言っていた。あの武器には他にもパーツがあると」
「・・・そうなの?」
「さて、何処を探せばいいやら・・・」
「心当たりが無いわけじゃないぜ?」

エリの背後から、声がする。
彼女が振り返るとそこに、ゼノが立っていた。

「よう旦那、エリアルド。この間は悪かったな」
「ゼノか」
「そのコート・・・アイツのと同じ奴だよな?」
「・・・まあな」
「旦那にもアイツと何か因縁がありそうだな。まあ、聞かない事にしておく。っと、エリアルド、約束の」

人懐こい笑みの中に複雑な色を浮かべた後で、黄色いフォトンの刃の付いた大型のワイヤードランスをエリに差し出した。

「これ・・・??」
「確かクシャネビュラ使ってたろ?その上位の『ラムダクシャネビュラ』だよ。使い勝手は変わらない筈だし、前の奴より絶対に強いはずだ」
「ありがとう、ゼノ!」
「気にすんなって」

上気したエリの表情に、ゼノは満足気に笑うが。
リュードの背中の武器に気付き、目を丸くする。

「うっわ、旦那それ貰ったのかよ?すっげぇなぁ、俺じゃ扱えないってじーさんに軽くあしらわれたのに」
「はは、ゼノのお陰だ。ありがとうな」
「いやいや、俺じゃないって。旦那の人徳だよ。どうやらその様子じゃ例の武器の話はうまく行ったみたいだな」
「ああ、嬉々として眺めていたよ」
「良かった、気にしてたんだ。あのじーさんの事だからやる気になってくれるとは思ってたけどさ」

笑いながらそう答えるゼノが、不意に真顔になった。

「で、さっきの話だが」
「武器のパーツの事?」
「知ってるのか?パーツが何処にあるのか」

リュードの問いに、ゼノの顔が険しくなる。

「そういう訳じゃないけどな・・・惑星リリーパで『奴』がうろついてるのが目撃されてるんだよ」
「奴って・・・・まさか」
「そう、仮面野郎だ」

仮面。
執拗に、破損した武器を持ったリュードを狙い、命ごと奪おうとした者。
まだ何者かすら判明していない、不気味な存在。

「惑星リリーパ・・・あの砂漠の星の?」
「奴がもしあの『武器』を探してるとしたら、訳もなくあんな辺鄙な惑星に降りるとは思えないんだよ」
「・・・確かにな」
「しかも、最近の調査じゃ『地下』に巨大な空間があると判明してる。あの武器のパーツがあるとしたら、調査し尽くされた地上じゃなくて絶対そっちだと思うんだ」

惑星リリーパ。
他文明が資源を採り尽くし、砂漠化の局地にある惑星。
そこに取り残された他文明の機械生物、便宜上「機甲種」と呼んでいる種族が「暴走」している。
侵入してくるものに対して、人間、生物問わずに攻撃を仕掛けてくるのだ。

「ダーカーもかなりの数目撃されてるって話だ、機甲種にすら『侵食』が認められて、かなりの数のアークスが負傷してる。尋常じゃない場所だよ」
「・・・だが、行かなきゃならない」
「そうね、仮面に先にパーツを手に入れられたら大変だわ」
「ただなぁ・・・」

そう言って、顔をしかめてゼノは頭を掻いた。

「あそこには原生種が居るんだよ、ウサギみたいなクマみたいなとか色々言われてるけど」
「リリーパ族って言われてる種族ね?」
「そうそう。そいつらはどうも『地下』から出てきてるらしいんだけど、何しろ臆病でさ。地上でドタバタやってる俺達の前にはちっとも姿を見せやがらねぇ。地下へ潜るなら、連中の協力が必要だって調査隊が散々言ってたが、どうにもならんらしい」
「ふむ・・・」

調査もろくに進んでいない場所へ足を踏み入れるのは、自殺行為。
とはいえ、「仮面」に先を越されたら、元も子もない。
顎に手をやって考え込むリュードに、ゼノがふと笑った。

「まあ、手がかりが無いわけじゃないって言ったろ」
「どういう意味だ?」
「えーとな・・・」

ゼノは、手元の端末で「個人的依頼(クライアントオーダー)」の一覧を表示させた。

「っと、あったあった、これだ」

データを、リュードとエリの端末双方へ送る。
惑星リリーパを主体とした、調査同行依頼。

「・・・同行?」
「そう。依頼主のキャストのお嬢ちゃんがね、見たらしいんだよ。リリーパ族」
「そうなの?」
「機甲種にやられて動けなくなってた所を助けてもらったんだとさ。例によって依頼料が少なすぎて、他の連中は見向きもしない。しかも依頼理由が『お礼がしたい』じゃ、あんな危険な場所に降りるなんて出来ないだろ」

成る程、確かに。
惑星リリーパで見かけた小さな生き物を発見し、礼が言いたいと依頼書には書かれている。

「ただまあ、きっかけにはなるかもしれないよな?」

悪童のような笑みを浮かべ、ゼノは言った。
リュードはふと向き直って、柄にもなく意地の悪い笑みを浮かべた。

「ゼノ、お前さんも随分とお人好しだな」

その反応に、ゼノは不意打ちを食らったように驚きの表情を見せる。

「・・・旦那に言われるとは思ってなかったぜ」
「俺が言ってるのは、何故そこまで俺達に力を貸してくれるのか、って事だよ。正直ゼノには関係のない事だろう?」
「あー、まあな。師匠の教えだよ。困ってる人は放って置くなってさ。俺もあんまり深入りはしたくないんだけど、気になっちまうものは仕方ない。エコーにも言われるんだよなぁそれ・・・」

頭をかいて、苦笑する。
その一言に尽きるのだろう。

「まあ人出が欲しいならいつでも呼んでくれよな。俺の手が空いてる限り手伝うぜ」
「ああ、頼むよ」
「んじゃな?」

手を振って、足早に駆けていくゼノ。

「ほんと、お人好しよね」
「全くだ」
「・・・私は、貴方の事を言ってるんだけど?」
「え?」

知らず、ゼノを必要以上に巻き込むまいとするリュード。
そんなパートナーに、エリはただ苦笑いしか出来ずにいた。



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