PSO2二次創作小説「時の輪」(10)

この小説は、ファンタシースターオンライン2(PSO2)のストーリーを元にした二次創作小説です。
オリジナル要素も含まれますのでご注意ください。
ゲーム内「マターボード」を進められている方(おおよそ5枚目クリアしたくらい)でなければ、ネタバレ状態になりうることをご承知下さい。

初めての方はまず

PSO2二次創作小説「Black Dream」~黒い夢~

をお読みになる事をお勧めします。

PSO2二次創作小説「時の輪」

「プロローグ」

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↓PSO2二次創作小説「時の輪」(10)
合流予定の時間から既に1時間を過ぎている。
やれやれ、と思わずリュードは不機嫌なため息をついてしまった。
申し訳なさそうに頭を下げるレイキャシールに、エリは苦笑いを浮かべて歩み寄った。

「同じアークスなんだから、人を待たせる事が良くない事は解ってるわよね」
「すみません、すみません!」
「私達だったから良かったものの、他の人なら放棄して帰ってしまったかもしれないわ」
「すみません・・・私てっきり、約束の時刻が午前11時だと思い込んでしまっていて・・・すみません!」

それを聞いて、リュードははたと我に返った。
その時刻は「以前」のもの。
現在の時刻は午前8時。
彼らには、この女キャストと広大な砂漠の惑星を探索した「記憶」があるのだ。
と、突然彼女は思い出したように両手を合わせた。

「・・・あぁっ!そういえばそういえば!私任務記録付けるの忘れてましたっ!!あわわ、ええと、これ書いてあれ書いて・・・」

素っ頓狂な声を上げて、慌てて手元の端末を操作する。
決して小さくはない黄色のボディが、申し訳なさそうに小さくなった。

彼女の名前はフーリエ。
キャストらしからぬ「不器用さ」はきっとフーリエの「性格」なのだろう。
「一度出会っている」とはいえ、この騒がしさには慣れない。
リュードは諦めたように苦笑した。

「慌てなくていい、まだ早いからな」
「すみません、本当にすみません!」

あたふたと暫く端末の操作を繰り返した後、大きく息をつく。
どうやら、ようやく準備が整ったようだ。
身を正して、大げさに頭を下げる。

「それではリュードさん、エリアルドさん、改めてよろしくお願いします」
「ああ」
「よろしくね」

自分に気合を入れるように両手に拳を作って力むフーリエ。

「ようし、ようっし!あの子達にお礼するまで、頑張らなくちゃ」
「あの子達・・・リリーパ族の事か?」

そういえば、聞いていなかった。
怪訝そうにリュードが問うと、フーリエは満面の笑みを浮かべた。

「そうなんですよ!でも、なかなか姿を見せてくれなくて・・・この辺りはまだ探索出来ていない上に範囲が広すぎて一人では探しきれなくて。あなた達が依頼を受けてくれて、本当に嬉しいんです!よろしくおねがいします!」
「探すあてや策はあるの?」
「そんなものありませんよ?当たって砕けろというやつです!」
「えー・・??」

あっけらかんと答えるフーリエに、エリは呆れたように声を上げてしまった。

「私、頭も良くないですし、考えていてもだめだと思うんですよね。とにかく、思うがままにやるだけやってみてから考える!」

リュードでさえ驚くような、真っ直ぐで馬鹿正直な性格。
決して安全ではないこの惑星を単独捜査出来る程には、腕は立つのだろうが。
それでも集団で襲ってくる「機甲種」相手。一度は危機に陥っているはずなのに、何故こうまで前向きで明るいのだろう。

「・・・君、本当にキャストか?」
「たはは・・・よく言われるんですけどね。これが私かなと」

頭をかいて、フーリエは苦笑する。
その純真さに、リュードは釣られるように笑った。
が、直後にあたりを見回して表情が一変する。
今までの探索で判明しているのは、この「リリーパ」という星がはるか昔には緑の多い惑星だったという事。
しかし、今はその欠片すら気配はない。
荒涼とした、果てのない砂漠の続く大地。
あちらこちらに、見覚えのない「文明」の構造物がある。
リュードは装備を確認し、二人に向き直った。

「・・さて、行くか」
「ステルスを使った方が良さそうね。可能な限り戦闘は避けたいし」
「そうだな。ただ流砂と、鉄分を多く含んだ砂塵の為に電波環境が良くない。機器の不調にはくれぐれも気をつけてくれ」
「了解しました!」

リリーパ族は戦っているアークスの前には一切出てこない。
出来る限りの戦闘を避けて、彼らは進んだ。
地表を砂塵が駆け抜けるのを利用して、荒れ狂う「機甲種」から身を隠す。
時折姿を見せるダーカーの気配は、エリのお影でその「場所」を避ける事が出来た。

「・・・あれ、何でしょう?」

一時間ほど探索を続けた時の事。
砂嵐が切れた時に見えたもの。
それは、人の数倍はあろうかという「機甲種」の「残骸」。
本来「行動不能」にさえすればいいはずの機械の体が、見るも無残に粉々に打ち砕かれている。

「これ・・・戦闘の痕跡ですか?目も当てられないくらいにボロボロ・・・こんな戦い方をする人がアークスに居るなんて、なんだか・・・怖いですね・・・」

呆然と破壊された機甲種を見つめ、フーリエは呟く。

「ここって、機甲種とダーカー以外ほとんどいないじゃないですか。だからきっと・・・あの子達にとって、周りは全部敵だったんだと思うんです。そしてそれは・・・・」
「俺達アークスも例外じゃない。そうだな」
「そうね、こんなに暴れられたら怖がるのは当たり前だわ・・・」

リュードが答えると。
エリが隣に並び、同じように機甲種の残骸を見つめる。
ふとリュードは鉄の塊に歩み寄って腰を落とし、その破断した箇所を調べるように覗き込んだ。

「どうしたんですか?」
「いや・・・気にしないでくれ。個人的な興味だ」

この早朝に時間指定したのには理由がある。
今回の「回帰」が起こる直前に、とある「噂」を聞いた。
朝早くに、この「惑星リリーパ」で探索活動と称した「破壊活動」を行なっているアークスが居ると。
初めは「仮面」の仕業かとも疑ったが、どうも違う。
彼らにはそのアークスに心当たりがあった。
そしてそれは「回帰」が起きる前の経験、そして目の前の「証拠」によってほぼ断定されている。

「そうですか?・・・まあ、どちらにしても、私たちは敵じゃないんだって事をあの子たちに理解(わか)って貰わないと、交流もなにもできませんよね」
「交流?」

立ち上がり、振り返ったリュードに。
フーリエは大げさに頷いた。

「そうです。せっかく会えたのに仲良く出来ないなんて悲しすぎると思いませんか?」
「そうね、そうよね」

不器用だけれど、とても「人」らしい。
通り一遍等な仕事で依頼が終わればそれまで、という人間関係が多いアークスの中では稀有な存在。
エリは思わず笑みを零した。



さらに一時間ほど探索を続け。
かなり日が高くなり、舞い上がる砂塵も激しくなって来ていた。
機甲種やダーカーと戦わずに進むという探索法は、普段の倍以上の時間がかかる。
それでも黙々と探査を続けるフーリエに、彼らは関心しながら協力を続けた。

幾度目かの砂塵が収まり、風鳴りが落ち着いた時。

「・・・?!」

リュードが進行方向に対して「左」を向いて立ち尽くした。
先行しようとしていたフーリエが、怪訝そうに戻ってくる。

「どうしたんです?」
「・・・聞こえないか?」
「え・・・?」

確かに、微かに聞こえる。
金属がぶつかり合う音。

「剣戟の音?」

いや、剣戟ではない。
しかし。

「戦闘音だわ!!!」

エリの答えを待たず、弾かれたようにリュードは走り出した。
慌てて、エリとフーリエが後を追う。
誰かが戦っている。
これは「殴打」の音だ。

砂煙の向こうに、人影。

「おらぁ、喰らえ!!!フラッシュサウザンド!!!」

狂気じみた叫び声と共に、激しい地響きが伝わってくる。
同時に、朦々と砂埃が巻き上がり、破片が四方に飛び散った。
その声に「やはり」とリュードは独りごちた。

「機械の体はもっと丈夫な筈だろうが!つまんねぇぞ、もっと気張れよ!!技の練習にもなりゃしねぇじゃねえか!!!」

既に動かない「機甲種」を八つ当たり同然に粉々に打ち砕き、叫んでいる男。

「酷い・・・!」

呆然とその暴力を見る事しか出来ないフーリエが、思わず声を上げる。
リュードは瞬時に間合いを詰め。
更に拳を打ち込もうとする男と機甲種との間に、力任せに「タルナーダ」を抜刀し、振り下ろした。
巨大な「鉄の壁」に、ナックルが火花を立てて当たる。
派手な金属音が響き渡った。

「あぁ?!」
「そこまでだ、ゲッテムハルト」

隣には、静かに佇むメルフォンシーナ。
主の暴挙をただ黙って見つめている。
攻撃を突然遮られ、ゲッテムハルトは激しく苛立ちながらリュードを見た。

「邪魔するんじゃねえよ手前ェ!ここは俺の遊び場だ。譲ってやる気はねェぞ!!」

だが、タルナーダを収めてから己を見据えるその姿に、ゲッテムハルトは「驚き」の表情を浮かべた。
血のような濃赤のコートに、彼は歪んだ笑みを投げつける。

「・・・ほーぉ?そいつを着たって事は、俺にぶっ殺される覚悟が出来たって事かよ?」
「貴様に倒されるつもりは毛頭ない。ただ、貴様の横暴を見過ごす訳には行かない」
「相変わらず甘っちょろいぜ。まだまだ食うには早いな」

挑発に乗ろうとしないリュードに舌打ちし、ふと思考を巡らせる。

「待てよ・・・?手前ェがここに居るって事は、あのふざけた仮面野郎も来てるのか?」

その「猟奇的」な視線は、エリに戦慄を覚えさせる。
その場に漂う狂気。
絶対に相容れない存在に、思わず身構えた。
だが、リュードとゲッテムハルトの間に割って入ったのはエリではなく、フーリエ。

「・・・何だよ女。手前ェに用はねェぞ?」
「何でこんな事をするんです!機甲種は動かなくなったらデータ収集と規則で決まってるじゃないですか!!」

隠し切れない恐怖が、フーリエの声を震わせる。
だが、それ以上に許せないのだろう。
毅然と叫ぶフーリエに、ゲッテムハルトは目を丸くする。

「は?何言ってやがる。これがアークスとしての本分だろ?惑星に降り立って敵を排除する、俺達がやってるのはそういう事だぞ?」
「違います!私達は・・・原生の住民と交流も含めて・・・!!!」
「だーかーらーよォ!!!」

うんざりだとばかりに、ゲッテムハルトはフーリエの言葉を大声で遮った。

「それが詭弁だっつってんだよ!!!言葉も通じない、ダーカーの影響を受けてるかもしんねぇ奴らと、本気で交流なんか出来るとでも思ってんのか?」
「そ、それはやってみなきゃ分からないじゃないですか・・・!」
「なあ!そこの姉ちゃんもそう思うだろ?!」

エリは自分に振られた突然の言葉に、一瞬詰まった。
だが、直ぐに首を振ってゲッテムハルトへ鋭い視線を送る。

「いいえ。貴方はすべてを極端に捉え過ぎるわ。貴方は原生生物を見下してるだけに過ぎない。彼らがダーカーの影響を受けていなかったら、どうするの?」
「・・・ちっ。いい子ちゃんが・・・」

エリの言葉を鼻で笑い、リュードに向き直る。

「まあいい。どれだけ隠そうとしてもお前から感じる臭いは隠せねェんだよ、リュード」
「・・・」

狂気の視線と、理性の視線がぶつかり合う。
一触即発の状況。
だが突然それは遮られた。

知らず、深い茂みの中に隠れて様子を見ていた「リリーパ族」の一匹が、その短い足で歩み寄ってきたのだ。
エリは勿論、初めて見るその姿にフーリエが思わず口を抑える。
何かを言いたそうにリュードとゲッテムハルトを交互に見ているのだ。
愛嬌すら感じるその姿に、リュードは思わず我に返った。
普通の人間なら「可愛い」とさえ思えるような「原生生物」。
しかしゲッテムハルトにはそうは見えなかったらしい。

「あ?なんだこのちっちぇのは。気味悪ィ。どうせダーカーに影響受けて俺たちを狙ってんだろ。なら、ここで始末しとかないと後から来るアークスに迷惑がかかっちまうな?」

問答無用とばかりに、ゲッテムハルトは拳を振り上げた。
あまりの突然の動作に、エリもリュードも動く事が出来なかった。



「だめっ!!!」

派手な金属音が響き渡る。
誰よりも早くその身を躍らせたのは、フーリエ。
ゲッテムハルトの拳を遮るように、リリーパ族を庇うように。
フーリエは、その衝撃に耐え切れずに思わず蹲る。

「なんだと?」

理解できない。
ゲッテムハルトは、振り下ろした拳を思わず止めた。
震えるリリーパ族を庇うように手を伸ばし、フーリエは振り返ることもせずに笑う。

「・・・今のうちに、早く逃げて」

言葉を理解したのか、それこそ砂塵のようにリリーパ族は姿を消した。
苛々が鬱積したその表情が激しく歪むゲッテムハルト。
蹲り、痛みに耐えるフーリエを侮蔑するように見下す。

「敵を身を挺して庇うとか、バカを通り越して言葉もねぇ・・・」
「敵じゃ・・ありません!あの子達は、私を助けてくれた・・だから今度は私が・・・!!」

拳を受けた胸を抑え、よろよろと立ち上がろうとしながらも、その目は己に暴力を振るった男を刺すように見ていた。
呆れたように見ていたゲッテムハルトだったが。
フーリエに鋭い視線を投げた後に、彼は次々にその場に居る者たちを見据えて、笑う。
その視線は「全てを敵と認識する」殺戮者の目。

「はぁ・・・わかっちゃいねぇ・・・お前ら何もわかっちゃいねぇ!!そんな奴らでも、いずれダーカーに侵食され狂う!なら、そうなる前に殺してやるってのが生殺与奪を握る側の『優しさ』ってもんだろうが!ああ?違うか!!」

何故だろう。
フーリエには、何故か目の前の男が「哀れ」に見えてしまった。
じっと、その目を見つめている。
己に向けられる悲哀の視線に気づいたゲッテムハルトの表情が、変わった。

「・・・キャストのくせに、そんな目で俺を見るな・・・!!」

吐き捨てるように言い、背を向けて歩き出す。
慌ててメルフォンシーナが頭を下げ、後を追った。
吹きすさぶ砂を含んだ風が、静寂を伝える。
力が抜けたのか、フーリエは思わず膝をついた。

「・・・大丈夫!?」

駆け寄るエリに、フーリエは苦笑いを浮かべる。

「傷は浅いです。私、頑丈なのが取り柄ですから」
「あんまり気にしない方がいいわ。極端なのよ、あの人」
「いいえ・・・分かってます。あの人の言う事が間違っていないことくらいは・・・」

項垂れ、自戒するようにフーリエは呟く。
エリの慰めも、この状況に至っては役に立たず。
リュードはあえて冷ややかに、言葉を作る。

「ダーカーの影響を受け、凶暴化したら倒す他はない。それは本当の事だ」
「・・・私のやっている事も、恩返しという言葉を借りたただの偽善・・問題の先送りにすぎない。わかってるんです」

飄々としていながら、本質は理解している。
それでも、と彼女は顔を上げた。

「それでも私は、信じたいんです。あの子達を始めとする、原生種といつか、いつか分かり合えるって」
「・・・そうね。そう思うわ」

ふと顔を上げたエリは笑みを浮かべ、草むらを指さした。

「あ・・・!」

そこに、逃げた筈のリリーパ族の一匹が顔を覗かせていたのだ。
紛れも無く先程フーリエが助けた個体。
訝しげに、恐る恐る、それでもフーリエに歩み寄り見上げる。
その瞳には、己を助けてくれた感謝と心配とが入り交じって浮かんでいた。

「ありがとう・・・心配してくれるの?大丈夫、私は大丈夫だから」

しゃがみ込み、うさぎのような耳を持つ頭を撫でる。
撫でられたリリーパ族は、嬉しそうに目を閉じた。
その姿は確かに「未来」を予見するもの。
ただ、他のリリーパ族は未だ遠巻きに彼らを見ている。
それに気付いたフーリエは、ようやく背筋を伸ばして立ち上がった。

「まだ、完全には無理みたいですね。でも私、諦めません」

その時だった。
不意に、そのリリーパ族はリュードへと近づいてその姿をまじまじと見つめ。

「・・・え?」
「りー、りー!」

コートの裾を掴み、引っ張った。
思いがけない行動に、リュードは戸惑う。
その反応に、エリは思わず吹き出してしまった。

「ふふ、貴方に一緒に来てくれって言ってるみたい」
「俺・・??」
「妬けちゃうなぁ、私じゃなくてリュードさん?」

フーリエはくすくすと笑いながら、その様子を見ている。
困惑したまま、リュードは頭を掻いた。

「来いというなら、付いて行くしか無いか」
「そうね。せっかくうち解けてくれたんだもの」
「ですね、行きましょう!」

歩き出したリリーパ族の後ろを、嬉しそうに付いて行くフーリエとエリ。
探索の糸口が見え始めた。
だが、それは同時に「問題」への入り口でもあった。
複雑な面持ちで、リュードは歩み出す。



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