PSO2二次創作小説「時の輪」(14)

この小説は、ファンタシースターオンライン2(PSO2)のストーリーを元にした二次創作小説です。
オリジナル要素も含まれますのでご注意ください。
ゲーム内「マターボード」を進められている方(おおよそ6枚目クリアしたくらい)でなければ、ネタバレ状態になりうることをご承知下さい。

初めての方はまず

PSO2二次創作小説「Black Dream」~黒い夢~

をお読みになる事をお勧めします。

PSO2二次創作小説「時の輪」

「プロローグ」

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↓PSO2二次創作小説「時の輪」(14)
数日後。
ほとんど人が寄り付かない、ショップエリアの展望台のすぐ下にあるグリーンスペース。
雑踏が足下から聞こえてくるその場所に、リュードとエリ、ロジオとフーリエが居た。

「そんな事があったんですか!」

ロジオが身を乗り出してリュードの話に食いついている。
全く、科学者という人種は。
その剣幕に思わず苦笑しつつ。

「無事に帰って来られたのは幸いだったよ。例の武器のパーツも既にジグの所へ届けてある」
「いいなぁ、私も行ってみたかったですよ」
「無茶言わないで、あんなところアークスでもない人が行ったらただじゃ済まないわ」

エリが慌てて否定すると、ロジオは首をすくめた。

「分かっていますよ、ただ、見てみたかったのは確かです。あの荒廃した砂漠の下がそんな事になっていたなんて。地質学的にも興味があります」
「ともあれ、目的は果たせた。フーリエ君にも感謝している」

フーリエに向き直り、リュードは頭を下げる。
その姿に、フーリエは慌てて頭を振った。

「いえいえ、私こそあの子達と仲良くなれた事がとっても嬉しいんです。お二人とも本当にありがとうございます」

でも、とエリは少し目尻を上げてつぶやく。

「あの場所での出来事は・・・」
「分かってます、誰にも言いません。私にとっても、あの子たちの生活を乱されるのは好ましくありませんから」
「私も、誰にも話していませんから、ご安心ください」

怪訝そうなエリに対して、フーリエは表情を変えた。
ロジオも同調するように頷いている。
それから、手元の端末でもう一度データを引っ張りだし、眺めていた。

「でも、不思議ですよね。地表はあんなに荒廃しているのに、坑道の最下層部には『水』があったなんて」
「・・・え?」

言われて初めて気がついた。
最下層に、水なんてあったか?
問いかけるように視線をエリに投げると、呆れたように彼女は笑った。

「戦闘が激しかったと言っても、周りを見なさすぎよ。ほら、これ」

エリは手元の端末で、最下層にたどり着いた時の映像を表示させる。
足場の通路の外側を映し出していたそれは、紛れもなく「一面に広がる水面」を見せていた。
しかも、「底」が見えない程の深さ。

「これ・・・水だったのか?」
「データ上でも確認しています。成分的にも、我々が使っている『水』と変わりないものが見受けられます。映像から確認しただけでも数万トンは確実に水がありますね」
「自然に集まったものじゃなさそうなの。最下層の通路の下が全部こういう状態だったわ」
「機械が水を飲む訳は無し・・・」

ただの「床」だと思っていた部分が、水面。
ふと、リュードは口を開いた。

「まさか、リリーパの砂漠化は・・・水を地下に備蓄した為か・・・?」

リュードは考え込むように少し歩いて、振り返る。
近くにあったテーブルのような台によりかかって、エリから送られた映像を手元の端末で今一度確認する。
エリが彼に視線を送った。

「・・・何の為に?」
「機甲種の素材は『鉄』だ。製鉄や鉄の加工には膨大な水が必要になる。先見文明の大きな造船所があったくらいだ、『機甲種』を生み出している『工場』がある筈。・・・しかも一つや二つじゃない」
「それにしては量が桁違いすぎない?」
「通常ならばな」

リュードの言葉に、フーリエがはたと気付く。

「そうですよ、機甲種は『暴走』してるんです」
「・・・そうだ。それが『給水機構』にまで及んでいるとしたら?」

ロジオがようやく、気付いたように大きく頷いた。

「そうか!本来なら必要分だけ水を取り入れればいいのに、それが暴走して・・・!」
「ずっと以前から放置されていたのなら、その間ずっと惑星上の水を地下に蓄え続けていた、って言いたいの?」
「あくまで推論だぞ?ちゃんと調べないと分からない」
「それでも、砂漠化の一端が『機甲種』にある可能性は否定出来ません。ナベリウスの調査が終わったら是非こちらも研究してみたいです!」

その為に引き起こされる現象など考えもせず。
目を輝かせて映像に見入っているロジオ。
リュードは思わず溜息をついた。

「・・・おいおい、頼むから勝手に地上に降りたりするなよ?」
「その時はまた、あなた方にお願いするつもりです。お願いします」

けろりと言って頭を下げるロジオに。
エリとリュードは顔を見合わせ、苦笑した。



フーリエやロジオと別れ、一旦居住区へと移動しようとした矢先。

「なーにを隠れてコソコソしてやがるんだろうなぁ?」

聞き覚えのある棘のある声が背後から飛んできた。
一番聞きたくない声でもあった。

「・・・目立つのが嫌いなんでね」

あからさまに不機嫌な表情を浮かべ、リュードは振り返り。
横柄に脚を組み、ふんぞり返ってベンチに座っているゲッテムハルトを見据える。
隣には、いつものようにメルフォンシーナが静かに佇んでいた。
大袈裟に両手を広げて、ゲッテムハルトは笑う。

「その割には噂が立ってるぜェ?『皆の要望』を親切に聞いてくれる、腕の立つルーキーが居るってなぁ。ったく、くだらねェ」

皮肉たっぷりの口調。
それが、エリの癪に障った。
リュードとゲッテムハルトの間に割り込み、ゲッテムハルトを睨み据える。

「・・・任務と称して憂さ晴らししてるような貴方にはわからないわよ」
「あい変わらず気の強いねーちゃんだなぁ、エリアルドとか言ったか」
「あら、覚えててくれたなんて光栄ね」

強さを追い求め、人としての「理性の一部」を捨てた男。
下衆な笑みを浮かべ、ゲッテムハルトはエリを見る。

「お前も実に『美味そう』なんでな。もっと強くなったら俺が『食って』やるぜ」

自分すら、標的にされている?
エリは不敵な笑みを浮かべた。

「・・・そう簡単に行くかしら?試してみたらどう?」
「はっは!面白ェ・・・!!」

ゆらり、とゲッテムハルトが立ち上がる。
エリが一歩前に出ようとした途端、その腕をリュードが掴んだ。

「よせ、挑発に乗るんじゃない」
「・・貴方を馬鹿にされて黙っていられるほど、私は大人しい女じゃないわ」
「いいから、やめろ」

今にも戦い始めそうなエリを、リュードはあくまで静かに諌める。
エリはゲッテムハルトを一瞥し。
ふん、と鼻を鳴らした。

「・・・貴方が言うなら、そうするわ」
「なんだ、つまらねぇな。少しは楽しめるかと思ったのによ」
「暇じゃないんでな。そういうのは別の奴とやってくれ」

一瞬、ゲッテムハルトを刺すように見た後。
リュードはくるりと背を向けて歩きはじめた。
後を追って歩き始めたエリを見て。
ゲッテムハルトは、乾いた笑いを上げる。

「・・・ったく、つれねぇな、せっかくいい事を教えてやろうと思ったのに。なあ?『マテリアルL2199』」

その瞬間。
リュードの身体が硬直した。
目の前が、一瞬真っ暗になる。

・・・身体が、動かない。

「・・・・リュード?」

その様子に、エリが思わずリュードの顔を見て、呆然となった。
焦点の定まらない目。
真っ青な顔。
吹き出す冷や汗を拭おうと顔にやった手が、震えている。

「貴様・・何故・・・その『コード』を・・・」

何とか、動悸を抑え。
どうにかして平静を保とうとしているのだが。
青ざめた顔は隠すことが出来ない。
振り返ったリュードのその顔は、どうしようもないほどの焦りを表していた。

「んー、いい反応だ。やっぱり『テメェ』の事かよ」

ゲッテムハルトは、楽しくて仕方がないといった表情を浮かべる。

「十年前のあの事件の後、俺なりに調べたんだけどなぁ?『リュード』に関わる一切の情報が消えちまってた。何をどう探しても見つからなかった。その時の俺には『それ以外』の手段が無かったからな、諦めるしかなかったけどよ。この間テメェに再会して、もう一度調べてみたのさ。今の俺には『ツテ』があるからなァ?」
「・・・何が言いたい」

ようやく、何とか我を取り戻し。
リュードはゲッテムハルトを見る。
それを確認したように、手元の端末に何かを表示させるゲッテムハルト。

「『L計画』なんてものが、研究部(ラボ)のメインフレームから引き出せたのさ」
「・・・L計画???」
「知りてぇか?」

自分のパートナーの反応も気になるが、それ以上に。
エリは訝しげにゲッテムハルトを見る。

「そこの男は『研究部の実験体』なんだ。実験と称してものすごい数の人間を殺してんだぜェ?俺ですら人殺しはした事がねェってのによ」
「・・・・」

まさか、そこまで。
リュードは必死に、動揺を押さえつける。
ニヤニヤとリュードを見てから、ゲッテムハルトはエリに視線を移した。
その「反応」を見るためだ。
しかし。

「その事なら、知ってるわよ?」

エリは、努めて冷静に答えた。
何となく、ゲッテムハルトの『意図』が見えたからだ。
リュードや自分を動揺させ、「情報」を引き出すつもりなのだ。
拍子抜けしたように、ゲッテムハルトはエリを見る。

「はぁ?マジか?・・・つまらネェ・・」

彼自身から、聞いていた事。
血を吐く思いで教えてくれたであろう『真実』。
そんな彼の心情を思うと、目の前の男がしている事が我慢ならなかった。
背中の武器に右手を掛けて、エリはゲッテムハルトへあからさまな「敵意」をぶつけた。

「その事でリュードを脅そうとか言うの?冗談じゃないわ。そんな事を考えてるならただじゃ済まさないわよ・・・!」
「おっとっと・・・怖ェ怖ェ」

おどけて、肩をすくめる。
だが、その顔はまだ「諦めていない」。

「・・・もっとも、ねーちゃんも『無関係』じゃないんだがなぁ?」
「どういう意味よ?」

リュードの背中に、冷たいものが走った。
嫌な予感がする。
こういう顔をしている奴は、他に何か「人を逆なでする情報」を持っている。
ゲッテムハルトは下卑た笑みを浮かべ。
メルフォンシーナを見てから、顎で使うように指図をした。

「・・・お前らに、くれてやるよ」

言葉と同時に、リュードとエリ双方の端末に「何か」が届いた。
訝しげに、二人は端末を操作する。
メルフォンシーナが淡々と呟いた。

「リュード様には『L計画』の詳細なデータを、エリアルド様には『関係者の資料』を送らせて頂きました」
「な・・・に・・・?!」

満足に言葉にする事が出来ないリュードを一瞥してから。
立ち上がり、ゲッテムハルトは笑った。
この上なく満足気に。
そして、エリへと向き直る。

「なぁねーちゃん、自分の親が非人道的な『実験』を繰り返していたとしたら、どうするよ?」
「・・・・え?」
「それを見てもまだ『仲良しごっこ』が出来るってんなら、少しは認めてやるさぁ」

狂気的な笑みを残し、ゲッテムハルトはメルフォンシーナを従えて姿を消した。



我慢が、出来なかった。
リュードは、即座にその「情報」を展開する。

「『L計画』・・・マテリアル『L』に関する資料・・・」

無理矢理引きずり起こされた「トラウマ」。
ぐらり、とリュードの身体が揺れた。

「リュード!!!」

慌ててエリが支え、ベンチへと誘う。

「しっかりして・・!」

消されていた筈の記憶が、次々に脳裏に「呼び出され」ているのだ。
そこに記された「人道」からかけ離れた実験の数々。
吐き気すら感じ、口を抑える。
それでもそのデータから目を離す事が出来ない。

「・・・・はは、参ったな。本物だよ、このデータは」

見ていられなかった。
憔悴しきった笑いに、エリが思わず首を振る。

「お願い、もうやめて」
「・・・すまない・・」

分かってはいた。
わかっていた筈なのに。
己の罪をこうして「データ」として突きつけられると、逃れられない「事実」として自分にのしかかってくるのを感じる。
まだ、己の罪と向かい合う覚悟が出来ていなかったということか。

ようやく、データを閉じ。
座ったベンチの背もたれによりかかり、大きく息をする。
エリは寄り添うように座り、首を振った。

「責められるべきは貴方じゃない、むしろ貴方は『被害者』だわ。何度もそう言ったでしょ?」
「・・・君がそう言ってくれるだけで、俺は救われてるよ」

過去は変わらない。
どうする事も出来ない。
だとしたら、どうすればいい?

「・・・」

このデータの与えた「ショック」は計り知れない。
それでも何とか、立ち直ろうとする。
傷を負った獣が、その傷を癒す為にただじっとうずくまっているように、見えた。
エリはただ、黙って座っていた。


長い、長い時間。



どの位たっただろう。

「・・事実は事実、そこから何かを得なければ何の意味もない、か」

ここが、今まで出会ったどんな男とも違う。
自身に降りかかった事象を受け入れ、その上でその「先」を見ようとする目。
この「強さ」を、エリは羨ましくさえ思った。

気付くと、リュードはもう一度「データ」を見ていた。
その目は「何か」を見つけ出そうとする「第三者」の目になっていた。
しばらく羅列された文章を追っていた彼が、ふと思い出す。

「・・・エリ」
「何?」
「何故、奴は『君』にもデータを送った・・・?」

あ、とエリは声を上げた。
慌てて、自分の端末に送られた「情報」を開く。

「・・・『L計画関係者名簿一覧』・・・??」

そこには、彼自身を「生み出した」計画に携わった人間の名前が羅列されていた。

「百人・・いいえもっと居るかしら」
「それでもまだ『研究部』としては一部だ」
「研究部・・・ラボの事?」

一般的に知られている「アークス研究部(ラボ)」は、医療や兵器開発などを一手に引き受ける巨大な部門。
アークスの活動で得られた情報を一元管理している部署でもある。
ただ、その「裏側」にある「黒い噂」が常に絶えない。
情報を開示する事もまれなほど、得体のしれない「組織」であるのだ。

「計画に携わった人間が・・・」
「尽く、死んでいる、のか」
「口封じ・・・?」

名簿の欄の隅に、「死亡」「削除」「排除」「抹消」の文字が並ぶ。
これは恐らく「消された」証。

だが。
一人ひとりの名前を目で追っていたエリの表情が、突然豹変した。

「・・・・え・・・?」
「どうした?」

ぶるぶると、身体が震えている。
リュードは只ならぬ様子に、眉を顰めた。

「エリ?」
「・・・エドワード・ライラ・・・・オリヴィエ・ライラ・・・・」

こんな、馬鹿な。

「父さんと・・・母さんの・・・名前・・・!!」
「?!?!」

エリの親だと!?
彼女の口からこぼれた言葉に、リュードは驚愕した。

どうして。
縋るように、エリはリュードを見る。
今までの冷静な彼女からは想像もつかない、取り乱した姿。

「どうして・・・この名前が、ここにあるの?!?!・・・ねえどうして?!」
「・・・落ち着け、エリ」
「何で?!父さんと母さんがどうして!!!!」
「エリ!!!」

エリの両腕を掴んで半ば怒鳴るように、リュードはエリを抑えた。
L計画-「力」を手に入れるためにリュードを「創った」この恐るべき計画に、自分の親が加担していた?
何かが自分の中で、音を立てて崩れていく。

これが言いたかったの?

 ――――――自分の親が非人道的な『実験』を繰り返していたとしたら、どうするよ?

彼女の脳裏に、ゲッテムハルトの言葉が木霊した。



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