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PSO2二次創作小説「時の輪」(15)

この小説は、ファンタシースターオンライン2(PSO2)のストーリーを元にした二次創作小説です。
オリジナル要素も含まれますのでご注意ください。
ゲーム内「マターボード」を進められている方(おおよそ6枚目クリアしたくらい)でなければ、ネタバレ状態になりうることをご承知下さい。

初めての方はまず

PSO2二次創作小説「Black Dream」~黒い夢~

をお読みになる事をお勧めします。

PSO2二次創作小説「時の輪」

「プロローグ」

(1) (2) (3) (4) (5) (6) (7) (8) (9) (10)

(11) (12) (13) (14)


↓PSO2二次創作小説「時の輪」(15)
父さん。

母さん。

何処へ行くの?

 「私達は、罪を償わなきゃならないの」

罪?

何の罪?

 「私達は、手を出してはいけない『神の領域』へ踏み込んでしまったのだ」

よくわからない。

 「ごめんね。エリ。私達は・・・」

 「お前を、愛しているよ」

 「貴女は生きて。貴女自身の道を生きて」

何処へ行くの?

待って。

待ってよ、置いて行かないで。

私を一人にしないで。

お願い。

お願い!!

置いて行かないで!!!




ワークデスクから跳ね起きると、全身から汗が吹き出していた。
自室で、ネットワークから隔離した端末を利用して「解析」をしている最中に居眠りをしていたらしい。
しばらく、ぼうっとした後。
デスクに備え付けられた時計を見てから、窓の外に視線を送る。
既に、アークスタイムは「夜」だった。

「・・・もう、こんな時間」

ホログラムモニターへ、向き直る。
まる二日。
こうして、リュードから奪い取るようにして手に入れた「L計画」を読んでいる。
報告書に書かれた表題は。

『D因子とフォトン・責任者:エドワード・ライラ』

「・・・・・・」

論文形式に書かれたその文章は、半分以上が専門用語だった。
その用語を検索しつつ、彼女はずっとそれを「読み解いて」いる。

彼女は、両親のしていた仕事をほとんど知らない。
近隣の人たちからは、優秀なアークスとだけ聞いていた。

「父さんたちの仕事って結局何なの?」
「私達は、人の命を助けてるの。実際に助けてるのはお医者様だけど、私たちはそのお手伝いをしているのよ」

優しい母親は、そう笑って答えてくれた。
厳格ではあったが、エリにはとても頼もしい父親だった。

今、モニターに表示されている文章。

 ▽『マテリアル』の『対存在』の作成

 遺伝子操作による、フォトン内包係数の高い「ヒト」を形成する実験
 フォトン内包係数の高い被験体同士の精子と卵子を交配
 被験体の母体による自然分娩
 出生した乳児には「アルド」のコードを付与

「・・・・エリ『アルド』。そういう事・・・」

自分しか知らないはずの「人生」が、その後に事細かく列記されている。
「あの日」の事まで。

信じて疑わなかった「両親」が自分を裏切っていた。
その両親を「抹殺」する為に、住んでいたシップを「ダーカー」に襲わせた事も。
更に、その両親が死んだ後「マテリアル」と出会うように「仕向けられていた」事もそこには書かれていた。
自分自身で選んだはずの「道」が「レールの上」をなぞっていただけ。
その「証明」だった。

そこまで読んで、「心」が拒否反応を起こしてしまった。
寝ることすら惜しんで解析していた彼女は、ワークデスクでそのまま気絶するように寝ていたのだ。

「私は・・・何なの?」

エリは両の掌で、顔を覆った。
指の隙間から涙が落ちる。
止まらなかった。
今まで貫いて来た「自分」が、全て壊れてしまったように感じる。
エリは静かに、ずっと、泣き続けた。



「総督は、知ってたんじゃないんですか?」

リュードは総督室に押しかけるやいなや。
ヒース・グラハートの座っているワークデスクに詰め寄ってその両手を叩き付けた。
その剣幕に、ヒースは呆然となる。

「・・・ちょっと待ってくれ、いきなり何だ」

部屋に居た管理官を外へ払うのが精一杯なほど、リュードは切迫して彼を問い詰めた。

「俺とエリを引き逢わせたのは総督です。総督はエリすら実験体だった事を知ってたんじゃないんですか?!」

言われて、総督は我に返る。
その後、疑心の眼差しでリュードを見返した。

「・・・君か?ラボのメインフレームに侵入してデータを奪ったのは」
「俺じゃありません。入手経路は話す事は出来ません。が、そのデータは今俺とエリの所にあるんです」
「・・・・」
「彼女はこの事実にショックを受けてる。自分で調べると言ったきり、二日も自分の部屋に閉じ篭って出て来ていないくらいです」

その二日間、彼もまともに睡眠が取れていないように見受けられた。
エリを気にしながらも、リュード自身もデータの解析に時間を費やしていたのだろう。
充血したその目で、リュードはヒースを見据える。
その「裏側にある真意」を少しでも知りたかった。
ヒースは、大きく溜息をつく。

「とにかく、落ち着いてくれ。話を聞こう」

部屋の入口に鍵をかけて。
更に、「パーソナル端末」の「ネットワーク」を遮断。

「さて・・・何処まで知ったのかね?」

その顔は、今までの「温和なアークスシップ総督」ではなかった。

信じて、いいものだろうか。
下手をすれば、再びあの「ラボ」へ囚われる可能性もあった。
だが、もう後には引けない。

自分が入手した情報をかいつまんで話す。
リュードに背を向けてそれを聞いていたヒースが、僅かにこちらを向く。

「・・・君自身の事は、君の中で既に整理が付いているように見えるが」
「その通りです。でもエリは違う。何も知らなかった」

長い沈黙が、時間すら凍りつかせる。
窓の外の、「市街地」。
総督はもう一度、視線をそこに戻した。

「・・・『研究部』が私のやっている事を知っているのかどうかは分からないが、君たちを私の船に寄越した時点で『疑われている』事をまず考えた」

唐突に切りだされた「話」に、リュードは首を傾げる。

「何の話です・・・?」
「私が『彼ら』に協力している事を『研究部』に悟られたくはなかったんだよ」
「彼ら・・・?」
「君のその手にある『マターボード』を生み出した者達の事だ」

リュードは自分の手元を見た。
己の腕に収まっている、他の誰にも見えない「事象の羅針盤」。
これを生み出した「組織」に、総督が加担しているのは知っている。
だが、これのために「自分たちを受け入れた」とは。

「研究部から君たちの『実験』を行うと通達された時、私は脅された」
「脅された・・?」
「従わない場合は『戦闘実験』をこのシップで行う、とね」
「!」

戦闘実験。
鮮明に覚えているのは、ダーク・ラグネ率いるダーカーの群れが「アークスシップ4073」の市街地を襲ったあの事件。
今となれば、あれが「実験」であった事は明白。
つまり、自分とエリを引き合わせるという「実験」を拒否していたら、同じ事がここで行われていた?

「私は100万以上の命を預っている身だ。それをそのまま「人質」として扱われてしまってはどうする事も出来ん」

目を伏せ、懺悔をするように総督は項垂れる。
リュードは深い溜息をついた。

「やはり、俺とエリを引きあわせたのはラボの指示だったのは間違いないんですね」
「そうだ」

危うい立場にいるのは理解している。
だが。
納得出来ない、と言った表情のリュードに。
ヒースは苦笑した。

「私はそれでも、君達を逢わせたのは間違いではないと思っているのだよ」
「・・・え?」
「君が初めて私の下へやってきた時『ヒトではない』と思った。ただの、人の姿をした抜け殻にしか見えなかった」

記憶を奪われ、感情すら抑制されていた頃の己。
機械のように戦闘を繰り返すだけの。
思い出すだけで、怖気が走る。

「だが今はどうだ?エリアルド君の為に怒り、こうして私の所へ押しかける普通の男にしか見えん。それは彼女と一緒に居たから、じゃないのかね?」

「人」として「自分」を取り戻せたのは「エリ」が隣に居たから。
それは間違いない。
戸惑いつつも、リュードはその「事実」に頷く。
ヒースは彼に歩み寄った。

「今の私に出来るのは、君やエリアルド君の戦略OSの改造やデータログの改竄くらいだ。ただ・・・」

その肩に手をやり、頷く。

「たとえ引き合わせたのが奴らの指示だったとしても、その後の選択は『君達自身』が行ったものだ。それは間違いない。私は、それを私なりに支えていこうと思う」
「信じて、いいんですね?」
「私の息子にかけて、誓おう」

ヒースは、十年前の事件の時に「一人息子」を失っている。
リュードを見るその目は、己の子を思う親のそれだった。



インターホンが鳴る。
また、寝てしまっていたようだ。
今、何時だろう?

「・・・エリ、居るんだろう?」

扉の外で、声がする。
何度めだろうか。
もう、立ち上がる力も、返事をする気力もない。
顔を見せたくないし、見たくない。

「・・・開けてくれないなら、ぶっ壊してでも入るぞ」
「!?」

今までにない、強い口調。
放っておけば本気で「扉を壊しかねない」気迫が、言葉に込められていた。
エリは慌てて立ち上がった。

「・・・・ちょっと待ってて・・・」

乱れたままになってしまっている髪を束ね。
エリはフラフラと、扉へ歩いた。

開いた扉の内側に居たエリを見て、リュードは驚いた。
部屋の明かりも付けず、ただ立ち尽くしている。
普段の彼女からは想像もつかない、窶れて憔悴したその姿。

思った通り。

「・・・何も食べてないんだな?」
「大丈夫よ」

言葉とは裏腹に、おぼつかない足取り。
リュードはそれを支えようと手を伸ばして。
その手を、払われた。
あまりの「拒絶」に、リュードはそのまま立ち止まってしまった。

「・・・エリ」

まるで人が変わったよう。
決して目を合わせようとしない。
尚更、放っておく訳にはいかない。
リュードは断りもせず、「明かり」を付けた。

初めて見た彼女の部屋の中は整然としていたものの。
ここ数日、ベッドを使った気配がない。
ワークデスクには、つけっぱなしの端末。
久々に付けられた明かりに、眩しそうに目を細めてから。
デスク前の椅子に座り、エリは力なく笑った。
その頬に、幾度と無く流れた「涙の跡」がある。

「ごめんなさい、何もする気が起きないの」
「・・・・・・」

リュードは黙ったまま、持ってきていた液体タイプのレーションを渡した。
味はともかく、これならばエネルギーの枯渇している身体にいち早く浸透する。

「ありがとう・・・」

それを口にしてから、エリはふぅ、と息をついた。
近くにあった丸椅子に、リュードは黙って腰を下ろす。
しばらくエリの行動を見ていたが。
ぼうっと、モニターを見ている。
それだけしかしていない。
リュードはじっと、彼女から切り出すのを待っていた。

その「沈黙」が耐えられなくなったのか。
エリが、ふと口を開く。

「・・・パートナー、解消したほうがいいかもしれないわね」

凍土での遭難事故の時。
あれほど、「そばを離れない」と啖呵を切ったのに。

「君は、自分の言葉を否定するのか?」
「あの時とは、事情が違うわ」

目を伏せ、両肘をデスクに置く。
懺悔するように、両手を合わせて。

「私の親が貴方を苦しめてた。それだけなら、その罪を私が背負えばいい。でも『私そのもの』が貴方を苦しめてるなんて、耐えられない」
「俺に対する『存在』としてか?」
「そうでしょ?私は貴方を『コントロール』する為に生み出されたのよ?」

口から出てくるのは、今までの「自分」を全て否定する言葉。

「何よりね・・父さんや母さん達に『裏切られた』のが悔しいの。悔しくて仕方ないの」

まるで抑揚のない、機械のような物言い。
それは何かを「思い出させた」。
そう、思考を停止していた「かつての自分」。

「あんなに、優しかったのに。私に、色々教えてくれたのに。それが全部『実験体の観察』だったのよ?」
「・・・・それは、俺も同じだ」

唐突な「同意」。
エリはリュードに、初めて視線を合わせた。

「どういう事?」
「俺だってこの二日何もしてなかったわけじゃない。あのデータと、君から貰った『名簿』を片っ端から調べた。その中に、とある名前を見つけたんだ」
「・・・?」

一瞬、迷ったように目を泳がせるが。
リュードは意を決したように、もう一度エリを見る。

「ロイド・アレル、それからカレン・アレル」
「・・・アレル・・・って」
「そう。俺の親だよ。正確には『俺を育てた科学者夫婦』だ」

「貴方も、知らなかった、の?」
「ああ。俺には遺伝子上、『両親』は居ない。俺はとある人物の『クローン』だ。何となく、そんな気はしていたけどな」

エリは、呆然とリュードを見る。
ショックを受けているわけでもない。
その「事実」を受け入れている、悟りの目。
足を組み、一つ一つ言葉を選ぶように語る。

「でもな。俺の記憶にあるあの二人は、紛れもなく俺の『親』だったんだよ。あの日まで」
「あの日・・・」
「データが、全てを語っていたよ」

リュードの顔には、辛さに混じって懐かしさが。
心の傷に他ならないその「思い出」を、口にする。

「俺の『実験』はもとより、君の両親と俺の両親を『抹消』する為に、あの『事件』は引き起こされたんだ」

自分の住んでいたシップが、ダーカーの大群に襲われたあの事件。
データによれば「オラクル全体」に対する「ダーカーの強襲事件」と位置付けられていた。
その中でも、シップそのものを「遺棄」しなければならないほどの被害が出たのは数十隻に上る。
そのうちの「一つ」が、自分たちの住んでいたシップだった。

それが「意図的」に行われた?
ただ4人の「人間」を消すために?
しかし、リュードは小さく首を振った。

「違う。あのシップには当時、L計画の初期に携わった科学者達が多数住んでいた。それを『消去』するのが目的だったんだ」
「なんて・・・事・・・」
「しかも、その科学者たちは全て『計画の反対者』もしくは『強制的に計画に参加させられていた』人達だった」
「え?」

名簿に並んだ「口封じ」の意味を成す文字の羅列。
リュードはそれをもう一度手元の端末で確認して、頷く。

「君の両親も、紛れもなく『実験に参加させられていた』側の人たちだ。この『消去』は、その後『記憶を奪った俺』の『実験』を使って幾度と無く行われている。研究の邪魔になる者達が増える度にね」

淡々と語る彼の表情に、迷いはなかった。
自分の両親の事を調べるのに手一杯だったエリに対して、リュードはここまでデータを解析していた。
己の罪を全て受け入れているのだろう。
紡がれていく事実を、エリはただ黙って聞いているしか出来ずに居た。
そこまで言って。
ふと、思い出すようにリュードは笑った。

「俺の記憶。俺が子供の頃から、24才になるまでの記憶には・・・俺の為に奔走している「二人」しかない。俺の為に、泣いて笑って叱って激怒している親の姿しかないんだ。あの二人は間違いなく、俺の『両親』だったよ」
「・・・リュード・・・」
「君は、どうなんだ?」

不意に、自分に向けられた問い。
戸惑うように、視線を揺らす。

「・・私の・・・」

思い出にある、両親。
自分が何かできるようになる度、喜んでくれた。
何か悪さをすると、とことんまで叱られた。
大学に合格した時は、まるで自分の事のように喜んでくれた。
それは、確かだった。

「父さんと母さんは、私を裏切ったんじゃ、無いのね?」
「でなければ、君は今ここには居ない。そうじゃないかな」

それは、それでいい。
とても嬉しい。
でも。
そう言って、エリは目を伏せた。

「私が貴方のそばに居ることは『奴ら』の計画の内だったのよ。離れなきゃ・・・」

その言葉を聞いた瞬間。
リュードは、己の内に舞い上がった「怒り」を抑えられなくなった。

「離れて、何が変わる!!」
「・・・!!」

ここまで激高するリュードなど、見た事が無い。
それが余計に恐怖を煽る。
エリはびくりと身を竦めた。

「奴らの思惑通り、俺達は一緒に行動してる。だがそれは『俺が自分で』決めたことだ!君はそうじゃないのか?!そう指図されたからなのか?違うだろう!!」
「でも!」
「でもじゃない!!」

怒りは、全てを否定しようとするエリに向けられたものでもあり。
己の不甲斐なさにも向けられたもの。

「『お前』は俺の側を離れないと言った!だから、俺も覚悟を決めたんだ!!『お前』と共に生きると!今更偽るな!言葉を変えるな!!」
「!!」

張り詰めた空気が、突然変わった。
呆然と、エリはリュードを見る。

ようやく伝えられた。
怒りを納め、深呼吸をした後で。
リュードは笑った。

「お前は、俺の時間軸に巻き込まれた。否が応でも、俺と一緒にいて貰わないと困るんだよ」

身体が、震える。
声が、揺れる。

「・・・側に、いていいの?」
「他に誰が居る?俺を『止められる』のはお前だけだ」

ふと気付いた。
自分を呼ぶ言葉が変わっている事に。
それは、本当の意味で「ようやく」エリを受け入れた証。
気付いたら、枯れたと思っていた涙が流れた。
次から次へと、頬を伝って止まらない。

それを見て、リュードはようやく我に返ったように頭を掻いた。

「あー・・・また泣かせちまった・・・すまん」
「・・・馬鹿ね。もう、本当に、馬鹿!!」

無意識に、手が伸びた。
縋るように。
自分の弱さを見せるのが、怖かった。
その反動で、今は。
何もかもかなぐり捨てて、リュードの腕の中で泣きじゃくった。




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